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物語は、現代の日本で最後の忍者一家とされる俵家を中心に描かれる。忍びとしての生活を捨て、普通の家族として生きることを目指して数年。しかし国家を揺るがすような事件が起き、BNM(忍者管理局)の指示によって再び忍びとして任務を遂行することになる。
日本のみならず、海外からの評価が高いのはなぜか。それは原案・プロデューサーを務めた賀来があらゆるインタビューで「海外では忍者の知名度や、忍者文化に対して興味関心が高いのに対し、日本では風化しつつある。しかし忍者を扱った作品を日本から発信したらどうなるのか興味があった」と話している通り、やはり「NINJA」を題材にした物語であることが一番大きな理由だと考えられる。
筆者は現在オーストラリアに滞在中だが、外国人の「NINJA」の認知度には驚かされる。子どもから大人まで、私が日本出身だと知ると「NINJA」「SUSHI」「ANIME」から話が広がることがほとんどだ。しかし一方で海外で生活していると、あくまで輸入された異文化の一つという枠を超えないのも事実だと実感する。つまり忍者に限らず、あくまで「日本らしい文化」として現地で新たに浸透したものであって、日本と異なる文化圏で生活をする中では、それが本物かどうかを知るのは難しい。
『忍びの家』はこうしたギャップを巧妙に埋め、あらゆる国や文化圏で生活する視聴者にもわかりやすいように、「日本の文化」と「日本らしい文化」を織り交ぜて描いた。
まず本作では「忍び」と「忍者」の使い分けについて言及されている。実際に歴史的には「忍び」と呼ばれていた背景があり、地方や時代によっても呼び名が変化したようだ。本作の英題は『House of Ninjas』で「NINJA」が用いられているが、日本人を含め新たな「日本の文化」を知った人は少なくないだろう。
さらに俵家は手裏剣を使わない。忍者に付随するイメージの代表格といえるが、手裏剣を排除したことで新たな忍者像を浮かび上がらせた。他方、黒い布で目元以外の全身を覆う忍者装束は「日本らしい文化」を採用している。俵家は現代に残る最後の忍びであるため普段は生活に馴染むような一般的な服装をしており、敵対する風魔一族のなかにはモダンなヘアメイクを採用している忍びもいたが、多くの人がイメージする「NINJA」の装いだったことは間違いない。
忍びは生活のなかで肉や酒の飲食は禁止されており、恋愛も禁止、主(あるじ)の”影”として必ず命令には従わなければならない。こうした史実に基づく設定は忍者に対する「日本らしい文化」という曖昧なイメージに具体性をもたせ、「日本の文化」としての忍びを知るきかっけになっただろう。
そして忍びがそれぞれの大義をもって暗躍し戦う場面も忘れてはならない。そもそもアクション作品である以上アクションシーンは欠かせないが、忍びを描くうえで忍術をどのように扱うかは重要だ。黒装束を身にまとい、忍びだからこそ薄暗い場所で繰り出されるアクションは光と影の対比が美しく、映像としても精巧に作られている。
そして日本の作品に親しんできた人にとっては、俳優陣のアクションシーンや演技力はもちろんのこと、山田孝之が新興宗教・元天会の教祖を演じていることや、江口洋介の空回りも多いが憎めない父親像、筒井真理子が演じる政調会長としての演説ぶりなど、キャストに対しての認識も相まってさらに作品の面白さが倍増しているだろう。
海外の視聴者を意識したテーマや構成、展開だけでなく、日本の視聴者に対しても独自の楽しみを提供している点でエンタメとしての完成度が高いといえる。
今回の『忍びの家』は全8話だが物語は完全に終結したわけではなく、この先を見てみたくなる含みをもたせた終わり方だった。シーズン2を視野にいれていることが伺える。本作は原案から完成まで3年半を要したというが、近い将来に新たな「日本の文化」を知らせる作品として続編が見られるかもしれない。
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