2024年度後期の連続テレビ小説『おむすび』(総合・月曜~土曜8時ほか)の最終週『おむすび、みんなを結ぶ』が3月24日(月)~28日(金)に放送され、約半年間の放送が終了。最終回には橋本環奈演じるヒロイン・結の原点ともなる人物が登場し、『おむすび』らしい温かな締めくくりとなった。


【写真】繰り返される日常とささやかな変化、朝ドラ『おむすび』【5点】

半年間じっくり今作を見守ってきた視聴者なら既にお気づきかもしれないが、『おむすび』には“似たようなシーン”が度々描かれていた。例えば、結が高校時代に翔也(佐野勇斗)にお弁当を作ったシーンを繰り返すように、栄養学校時代にも結が翔也のために献立を考えるというシーンが登場。どちらも“翔也が本音を言えずにすれ違う”という結末を迎えてしまっていた。

また、歩(仲里依紗)が自分の決断に迷うシーンも複数回登場。ナベさん(緒形直人)との向き合い方に悩み、東日本大震災で被災した友人・アキピー(渡辺直美)への支援に悩み、最終週では詩(大島美優)を引き取るかどうかギリギリまで悩み……“ギャル魂”を持つ歩が、自身の繊細な感情に何度も向き合う姿が印象的だった。

他にも、聖人が永吉(松平健)に最後の散髪をする姿と、翔也が糸島に移住する聖人の髪をカットする姿、結が病院内で姿を消した花(新津ちせ)を探すシーンと、幼少期に迷子になった結を歩(仲里依紗)と真紀(大島美優)が必死に探していたシーンなど、細かい部分は異なるものの似たような場面が繰り返し描かれていたように思う。

そして今作最大の“繰り返し”シーンが、最終回で結がとある女性と一緒におむすびを食べる場面だ。この女性とは、阪神・淡路大震災発生後、避難所にいた6歳の結におむすびを差し出してくれた雅美さん(安藤千代子)。当時、結はおむすびを口にしたあと「これ冷たい」「ねえチンして」と言ってしまった。結はこの出来事を度々思い出し、後悔の念を募らせていたのだ。

ラストシーンで結が雅美さんにおむすびを差し出すと、雅美さんは「まだあったかいね」と笑顔に。おむすびを食べると噛みしめるように「おいしい」とほころんだ。
あの日冷たかったおむすびが最終回で温もりを取り戻したのは、どんな状況でも着実に日常を過ごせば、小さな変化が起こるというメッセージだったのかもしれない。

『おむすび』で描かれた結たちの生活は、私たちの日常とよく似ていた。勉強、家事、育児、仕事……代わり映えしない日々を過ごし、“棚からぼたもち”的な展開で人生が好転することはほとんどない。それに、例え心動かされる出来事や人生のターニングポイントが訪れたとしても、人間の根本は簡単には変わらない。同じ過ちを起こしてしまったり、同じ場所でつまづいてしまったりするものだ。ヒロインの成長物語でありながら、絶妙な塩梅で成長しきれない部分が残されていたのも、リアルな人間ドラマを得意とする根本ノンジ氏らしい描き方と言える。

「どうせ全部消えてしまうから」と、何かに一生懸命になれずにいたかつての結は、ハギャレンに出会い、J班で切磋琢磨し、翔也と花と家族になり、管理栄養士として仕事に熱中するまでになった。だが何か一つが人生の起爆剤になったのではなく、一歩一歩毎日を積み重ねたからこそ今がある。地道に人生という坂を上り続けることに意味があるのだと、今作は何度も私たちに伝えてくれていた。

皆さんにとって『おむすび』はどんな味だっただろうか。もっと濃い方が、薄い方が、とさまざまな意見があるかもしれないが、私は半年間毎日『おむすび』のおかげで心が満たされていたように感じている。来週からの『あんぱん』を楽しみにしつつ、今はまだ『おむすび』の後味に浸っていたい。


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