2025年、春ドラマが順次スタートしている。今回は、4月15日執筆時点までに初回が放送された民放春ドラマから、おススメ3選を紹介したい(以下、ネタバレを含む)。


【画像】まだ間に合う春ドラマおススメ3選

初回平均世帯視聴率と、配信サービス・TVerのお気に入り登録数のトップ3は、同じ3作品だ。ただし、それぞれ順位が異なる。初回の最高視聴率を記録したのは、阿部寛主演の日曜劇場『キャスター』(TBS系)で、14・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下/同)だった。次いで、小泉今日子と中井貴一がW主演を務める『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)の9%台、多部未華子が主演を務める『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(TBS系)の6%台が、初回視聴率トップ3となっている。

伝統の日曜劇場の中でも、『キャスター』は前クールの『御上先生』、大ヒット作『VIVANT』の初回を超えた。阿部演じる型破りな主人公・進藤壮一が、闇に葬られた真実を追求し、悪を裁いていく社会派エンターテインメントだ。

進藤は、民放テレビ局『JBN』の報道番組『ニュースゲート』のメインキャスターに就任。だが、同番組出演を急遽キャンセルした内閣官房長官が、目の前で突如倒れ、主治医がいないはずの病院に搬送される。

内閣官房長官を巡っては、進藤が贈収賄疑惑とそれに関連した第二秘書の自殺について迫ろうとしてきた。だが、不可解な搬送先から、違法手術、法外な医療費・寄付金を受け取った院長の悪事などを突き止める。

さらに、病院側が官房長官と少年の命を天秤にかけ、官房長官の命を選択した疑惑についても解明していく。
正義と真実のために奔走していると思われた進藤だが、ラストには官房長官から札束を受け取り、癒着とも見えるシーンもあった。

すべての出来事が緊迫感を持ってテンポよく展開していくため、息つく暇がない。事態が二転、三転し、謎が謎を呼び、主人公の真の目的すら掴めない。阿部の日曜劇場主演回数は6回目で、歴代3位。『下町ロケット』、『ドラゴン桜』など外れが無い。阿部の圧倒的迫力と貫禄で、『キャスター』はどこまで視聴率を伸ばすのだろうか。

一方、TVerのお気に入り登録数では、『対岸の家事』が90.2万で1位。次いで『続・続・最後から二番目の恋』が80.1万、『キャスター』が58.3万で登録数トップ3となっている。

『対岸の家事』は、多部演じる主人公・村上詩穂が、専業主婦として2歳の娘の育児と家事に奮闘する物語だ。詩穂を「専業主婦は絶滅危惧種」として敵視し、仕事と育児の両立に悪戦苦闘するワーママや、「専業主婦なんて贅沢」と見下してくる育休中のエリート官僚パパなど、“対岸”にいる人々との交流から、仕事や育児について考えさせられる作品だ。

この三者のリアルな苦悩には説得力があり、思わず感情移入してしまう。専業主婦の詩穂にとって、言葉が通じない娘と2人きりの時間はとても長く感じられる。
やっと仕事から帰ってきた夫からは、疲れ切っていて相手にされない。他者から専業主婦であることをバカにされ、世間から断絶されたような劣等感を抱く。育休中のエリート官僚パパも立場は違えど、孤独という意味では共通点がある。

最も過酷に見えたのは、2児の育児と仕事を完璧に両立させようとするワーママだ。夫が非協力的で、全てがワンオペ。仕事後、帰宅すると家事は山積み。子どもを寝かしつけるまで分刻みで余裕が無く、つい怒鳴ってしまうなど、心がプツンと決壊するまでに追い込まれる。だが、詩穂との対話と協力により救われる。

“対岸”の人々との対比を経て、それぞの立場に寄り添い、リアルな切実さとコミカルさのバランスが良い作品だ。

『続・続・最後から二番目の恋』は、2012年と2014年に好評を博した『最後から二番目の恋』の続編だ。ドラマプロデューサーで定年目前の小泉演じる・吉野千明と、定年後も鎌倉市観光推進課で働く中井演じる長倉和平が、友人、隣人、時に家族として深く関わり懸命に生きる、大人の青春物語だ。

大所帯で豪華な長倉家の面々も、一時芸能活動を休止していた坂口憲二含め健在だ。
だが前作から11年の時を経て、千明も和平もアラ還となり、仕事での立場も変わった。事なかれ主義でその場を収めていたはずの和平は、自分に嘘はつきたくないと考えが変わり、何でも思うことを主張してきた千明は、物事を達観し言葉を飲み込むようになった。それでもお互いの人生を分かち合い、自虐を交えつつ笑って前を向ける。

前作、前々作から変わらないナチュラルな会話劇に感服しつつ、2人それぞれに新たな恋の予感も感じさせる今作。あの懐かしい空気感と、令和のアラ還のリアルが同時に楽しめる作品だ。

春ドラマはまだまだ序盤だが、まずは上記3作をおススメ3選としたい。

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