歌番組が年々減少していく昨今、日本テレビが去年から歌番組をスタートさせている。それが有働由美子と松下洸平が司会を務める『with MUSIC』だ。
放送時間は毎週土曜22時。とても楽しそうにゲストアーティストと話している有働由美子を初回から見ていて、何か既視感があった。なんだろう? 海馬を必死に働かせるとかつて同じく歌番組『ザ・ベストテン』(T B S系・1978年)で司会を務めていた黒柳徹子が浮かんできた。単に私の見立てではあるが、この二人、似ている。

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有働さん、と言えばNHK局アナ時代から、現在に至るまで、朗らかで奔放そうなイメージが強い。酒豪ゆえの列伝をよく読むせいだろうか。

井ノ原快彦と司会を務めていた『あさイチ』(N H K総合)の最終出演回は、前夜スタッフと飲みすぎたと声が出ていなかった有働さん。昨年までキャスターを務めていた『news zero』(日本テレビ系)の最終出演日は、2023年末に酔って転んで歯が欠けた事件をカミングアウト。思い返すと突然、有働さんが休んでいた日があったっけ。いずれも有終の美を飾っていたと、讃えたい。

現在も冠番組『おしゃべり小料理ゆみこ』(M B S)ではゲストと酒を酌み交わしながらトークを繰り広げ、自身のラジオ番組『うどうのらじお』(ニッポン放送)には『スナック由美子』のコーナーがある。有働さんが番組の演出上、ママになるわけだ。
ちなみに『with MUSIC』で自宅に“スナックゆみこ”とプリントされた看板があると話していた。彼女と酒は蜜月の関係であることは間違いない。

酒飲みとはどこまでもあけすけで、正直な人であると私は思う。この調子を裏切らず『with MUSIC』で、有働さんはゲストに直球の質問をしている。問題が起きそうなのであえてアーティスト名は伏せるが、ゲストが登場するだけで「カッコいい~!」と嬌声を挙げて、「今日は何を食べたんですか?」と脈絡なく質問。戸惑うゲスト。ただファンにとってはありがたいシーンである。

続けて、5月17日(土)の放送では出演者とあまり関係性を持たないと言われる香取慎吾に「なんでそんな(連絡先を)教えないんですか?(中略)望めば全部と繋がれるのに!」と、質問。敬語が救いだったけれど、テレビの前の視聴者のような雰囲気を漂わせる。そう、有働さんはファンや視聴者を代表しているようなトークが多い。

黒柳徹子も『ザ・ベストテン』は台本にはない質問が多かったと聞く。登場のミラーゲートをくぐる初出演アーティストに向かって、「ミラーの後ろで待ってらっしゃるのって、どんなお気持ちでした?」。
また自分の意見も隠さない。某ゲストがナチス風の衣装を着ているのを見て、戦争を思わせる服はどうかと思う、とチクリ。昭和と令和では風習の違いはあるけれど、どこまでも視聴者代表を感じさせる二人のマインドは変わらない。

『ザ・ベストテン』と言えば、黒柳さんのド派手ドレスは番組の名物だった。同じ……とまではいかないけれど、有働さんの『with MUSIC』での衣装も、品良く大胆。細身の体に衣装を気持ちよく、纏っている。NHK局アナ時代にも、紅白歌合戦の司会として出演した際に、ワンショルダーでゴールドのボディコンシャスな衣装を堂々と着ていた。局アナの衣装はやや控えめに、という風潮は全く気にしていない様子が、逆に好感を覚えた。この様子を大久保佳代子さんに「有働さん、なんですか!」と突っ込まれていたシーンも……。

現状、他の歌番組を見渡すと女性司会者は、華やかさを消したソツのないコーディネート。ゲストよりも目立ってはいけない精神が作動するのかもしれないが、目に飛び込んでは来ない。有働さんや黒柳さんを見ているほうが、エネルギーが湧いてくるのは私だけだろうか。


そんな司会者の女性二人にそこはかとない既視感を感じるのなら、傍にいる男性司会者も同じだ。『with MUSIC』番組スタート当初は、有働さんのペースについていくだけで必死そうに見えた、松下洸平。今では、完全にパートナーの手綱を握って番組を進行している。同じように『ザ・ベストテン』ではただでさえ緊張感のある生放送なのに、スタジオに野放された黒柳さんを久米宏が懸命にサポートしていた。放送当時、子どもながらに久米さんが終始、大変そうに見えていた。

『ザ・ベストテン』の放送が終了してずいぶん時間が経つが、独特なフリーダム空間を醸し出し、ゲストもそれに興じる歌番組はもう観られないかと思っていた。約36年間が経過して、またお目にかかれるとは、長く地上波を愛していて良かったと思う。有働さん、このまま目が離せそうにありません。

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