俳優でアーティストの「のん」が、話題作への立て続けの出演で脚光を浴びている。長らく「締め出し」を受けていた地上波ドラマへの復帰も果たしたことで、エンターテインメントのメジャーシーンに返り咲こうとしているようだ。
のんの完全復活が「忖度文化の終焉」を象徴するとの見方もあり、彼女の今後に注目が集まっている。

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のんといえば、本名でもある「能年玲奈」として活動していた2013年にNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』のヒロイン役で大ブレイク。圧倒的な透明感と瞳の輝き、誰からも愛される清潔感、コメディからシリアスまでこなす演技の非凡な才能を持ち合わせ、そのまま国民的ヒロインへの道を突き進んでいくのではと期待された。

実際、翌2014年には往年の人気少女コミックを実写化した映画『ホットロード』に主演し、同じく人気コミック原作で趣味のみに没頭するオタク女子を演じた映画『海月姫』でも主演を飾り、順調にスターへの階段を上っていった。

ところが、当時の所属事務所との間で独立トラブルが発生したことで一時活動を休止。独立後の2016年に「のん」に改名して再スタートを切り、CMや映画などには出演するようになったが、トラブルの影響で地上波ドラマからは完全に消えてしまった。

それでも声優として主演した2016年のアニメ映画『この世界の片隅に』で高い評価を獲得し、2022年の主演映画『Ribbon』では脚本・監督も手がけるなど多才ぶりを発揮。さかなクンの自叙伝を実写化した同年の主演映画『さかなのこ』では、性別の壁を超えてさかなクンの半生を演じ切るという離れ業を見せた。

しかし、どれほど評価を得ても民放ドラマへの出演はゼロのまま。のんのマネジメントを手がける「スピーディ」の福田淳社長はインタビューなどで、テレビ局の若手スタッフからオファーがきても「上司や担当役員によって突然潰されてしまうことが繰り返されてきました」と語り、地上波復帰を妨害しようとする「圧力」や「忖度」があったことを示唆している。

エンタメのメインストリームから追い出されてしまったかのような状況が続いていたが、近年の旧ジャニーズ問題やフジテレビ問題などが契機となり、業界の忖度体質を払拭すべきだとの声が大きくなったことで、風向きが変わっていった。

風向きの変化が具体的な形になったのが、4月27日に放送されたTBS系日曜劇場『キャスター』第3話へのゲスト出演だ。
のんにとって実に11年ぶりの民放ドラマ復帰となり、「万能細胞」をめぐる実験データ改ざんの疑いをかけられた女性研究者という、どこかで聞いたことがある役柄を好演した。

あまりにモデルがはっきりしている役を演じるのは逆に難しそうだが、SNS上の視聴者からは「のんの演技に引き込まれた」「昔と変わらず透明感がスゴい」「ゲスト出演だけじゃもったいない存在感だった」などと絶賛の声が続出し、改めて彼女の評価が高まっている。

また、のんは先日公開されたNetflixのオリジナル映画『新幹線大爆破』にも出演。速度が100㎞を下回ると爆発する爆弾が仕掛けられた新幹線「はやぶさ60号」の女性運転士を演じ、突然の爆弾騒ぎに動揺しながらも「死んでも止めませんから」と決意を固める迫真の演技などで、作品の緊迫感を盛り上げる重要な役目を担った。

同作は配信初週にNetflix週間グローバルTOP10(映画/非英語)で2位となる快挙を達成し、日本 (映画)では1位を記録する大ヒットとなっている。『キャスター』も含め、話題作に立て続けに出演したことで「俳優・のん」の存在を改めて世間に強く印象付けた。

長らくエンタメのメジャーシーンから離れていたのに、返り咲いた途端にこれだけの強烈な印象を残すことができたのは、彼女が10年以上にわたって真摯に芝居を続け、経験を積み重ねて演技力を磨いてきたからだろう。ある意味、独立騒動以降の期間は「俳優・のん」の熟成のために活かされた時間だったのかもしれない。

実力、人気、スター性のどれもがそろっていると十分に証明されたとなれば、TBS以外の民放各局からもオファーが相次ぐのは必至。逆に他局がそれでも起用に及び腰になるようなら、忖度文化が根強くはびこっていることの証拠になってしまう。

のんがこのまま、民放各局で当たり前にドラマ出演ができるようになれば、業界の「忖度文化」に大きな改善があったという証明になるだろう。のんの独立後のマネジメントを手がけてきた「スピーディ」の福田社長が、旧ジャニーズタレントのマネジメントを引き継いだ「STARTO ENTERTAINMENT」の代表となったことも運命的なものを感じる。


のんのメジャーシーンへの返り咲きは、圧力や忖度が横行していたエンタメ業界の変革の象徴となるのか。彼女の今後の動向は、業界の改革に少なくない影響を及ぼすことになりそうだ。

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