「家が燃えている!」2023年12月30日、冬のコミケ前夜にコスプレイヤーのミンミコさんに実家の母親からかかってきた電話は現実とは思えないものだった。結果、家族が住んでいた家を含めて、近隣17軒が全焼。
だが、彼女の不幸はその時始まったことではない。父親が働かなくなったことで高校時代からの極貧生活。入った歌い手グループは社長がセクハラ上等の“ヤバすぎる”やつ。一人暮らしを始めた家はなぜか事故物件。現在も家をなくした家族を支えるために精力的に活動をを続けている、ミンミコさんに濃すぎる半生を聞いた。(前中後編の中編)>>前編は下の関連記事からご覧ください。

【写真】コスプレイヤー・ミンミコさんの撮り下ろしカット【7点】

――それから大学に進学されます。

ミンミコさん 自分で稼がなきゃダメだったので、バイト漬けでした。学校行って、バイトして、寝るためだけに帰ってまた大学行ってという生活でした。せっかく大学に通ってるのに、なかなか勉強時間も取れなくて。

――どんなバイトをされていたんですか?

ミンミコさん 居酒屋や家庭教師など2つ3つを掛け持ちしていました。過労で倒れても働いていた気がします。
そんな中で有り難かったのが、バイト先で余ったおでんがもらえたこと。「1日経ったら味が染みすぎるから全部持って帰っていいよ」って言ってもらって。家に帰ってもご飯がないから、毎日、おでんを持って帰って家族で食べていました。

――お店の方の優しさだったかもしれませんね。

ミンミコさん ただ、おでんってちくわぶばかりが余るんですけど、ある日、お父さんが「ちくわぶばっかりやな」ってボソッて言ったんです。さすにがそれにはめちゃくちゃ怒りました(笑)。

――当時はどんなメンタルなんですか?

ミンミコさん 人生、完全に詰んだなと思っていました。お父さんには外に働きに行ってほしかったんですが、家でずっとエッチなビデオを観ていましたから。私はそれが嫌で、ずっと母に「別れてほしい」と思っていました。家が本当に嫌いになって、大学まで片道2時間かかったのもあって、友達の家を転々とするようになったんです。家に帰るのは週に1回ぐらいで。その当時、おばあちゃんの介護もあって、お母さんも精神的にまいってて、久しぶりに家に帰ったら「お母さんのことを見捨てた!」と言われて、びっくりしました。
見捨てられたのは私の方だと思っていましたから。

今考えたらわかるんです。本当にそう思ってたわけじゃないことくらい。親も同じ人間で、同じように傷つく。年齢を取っても精神がそこまで強くなるわけでもないんです。でも、その時の私には理解ができませんでした。誰かが悪いという話でもなく、ただ、それくらい狂った環境だったということです。冷静な人間なんて誰もいなかった。

――それはキツいですね……。

ミンミコさん でも、まだ終わりじゃなく(笑)。大学2年生か3年生のときにコロナになってバイトも全部なくなっちゃったんです。

――とことんまでツイてないですね。


ミンミコさん それが、そんなこともなくて。生活ができなくなって始めたのが配信やら、今に繋がる活動だったんですが、逆に収入がバイト時代よりも上がりました。東京での仕事も始めたので、安定して20万円以上は稼げるようになりました。

――そこからコスプレイヤーになったのは?

ミンミコさん 歌い手もやっていたんです。その流れで関連作品の格好をして売り子をやるようになったりして、ちょうど大学を出るときですかね、コスプレイヤーになりました。「配信者」と名乗っても職業として通じないじゃないですか。コスプレイヤーなら分かってもらえるかなというのもありました。アニメやゲームも大好きだし、実際やってみたら楽しくて続けられています。

――上京したのはいつですか?

ミンミコさん 大学卒業後ですね。大学4年生の時に生家が差し押さえになったんです。それで、お母さんは自分の実家に戻りました。当時、私はもう東京での活動も始めていて、夜行バスでの往復も大変だし上京することにしたんです。
ただ、当時は保証人も立てられなくて、家を探すのも一苦労でした。

――どうされたんですか?

ミンミコさん 住む場所がないと困るので、一応無理に探して入居しました。でも、その家は事故物件で(笑)。入居時、住所が登録できなくて。宅地登録されてない状態だったんです。あとからわかったんですが、建物名を変えて再登録したらしくて、以前の名前を調べたら、検索でヒットするくらいちゃんとした事故物件でした。

――なにか変わった体験をしたりは?

ミンミコさん 私は普通に暮らしていました。ただ、友達が遊びに来た時、「夏なのにクーラーつけなくてこんなに涼しいのおかしくない?」って不安がって帰っていったりはありましたね(笑)。あと、配信中に隣の部屋の人が壁を叩いてくることもありました。私も負けじと壁を叩き返していたんです。でも、すぐ気が付きました。そのアパート、私以外誰も住んでなかったんです。


――え~~!

ミンミコさん そんなわけないと思って管理会社に聞いたら、「2年以上清掃もしていない。ウチで管理しているから絶対に間違いない」って言われました。大家さんも「(その物件には)絶対に行きたくない」って言っているらしくて。退去時、同席した管理会社の方から「住んでいて変なことはなかったですか?」って聞かれましたし、なんかあったんだろうなと察しました。

――強烈な体験ですね。ちなみに、離婚後、お父さんとは完全に縁が切れたんですか?

ミンミコさん そうですね。もう、どこにいるかも分からないです。前に見つかったという話もあったんですが、髪の毛もボーボーになって、しゃべれなくなっていた、という話は聞きました。

――こうなると、ポジティブなお話もお聞きしたのですが。幸せを感じる瞬間はいつですか?

ミンミコさん それはいっぱいありますよ。まず食事があることで幸せです。たまに外食だってできますしね。
いまだにシャワーを水で浴びてしまっていることがあって、「あ、もうガスが使えるんだ」と思って幸せを感じます。

――どんなものを食べると幸せを感じます?

ミンミコさん ラーメンとかカレーとか、普通のものですね。あの頃食べたくても食べれなかったので。

――お寿司とか、すき焼きとか、いわゆる“晴れの日メニュー”ではないんですね。

ミンミコさん 1,000円を超えると高いなと思っちゃうんです。感覚が当時のままなので、お金があっても高いものは食べられないですね。家系ラーメンでほうれん草を乗せるのが好きなんですが、それも贅沢したなぁと思っちゃいます。焼肉は会食だったら行くんですが、その時は「焼き」に徹しちゃいますね。あんまりお肉を焼いたことがないので、キレイな色だなと思って焼くのが好きなんです。(後編に続く)

▽ミンミコ
10月23日生まれ、身長154cm。父親が働かない極貧家庭に育ち、高校時代から家計を支えつつ、大学進学後は複数のバイトを掛け持ち。コロナ禍を機に活動を始める。大学卒業後、生家が差し押さえられたタイミングで上京。現在は一人暮らしをしながらコスプレイヤー、配信者として活動。2023年12月冬コミ時に投稿した「速報! 実家が全焼したのにコミケに来た勇者(ドラクエ4)」がバズ。各誌でグラビアも披露。特技は殺陣、テコンドー、格闘技。

▽公式X:https://x.com/minmikoooooooo
▽公式Instagram:https://instagram.com/mikomiko967/reels/
▽公式TikTok:https://tiktok.com/@minmiko

【後編】壮絶な過去、人気レイヤが『ドラクエ』から学んだ生きる力「『誰かのせい』じゃなくて『誰かの為』がいい」
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