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野口氏は2005年7月、アメリカ航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗し、宇宙空間に15日間滞在。2009年12月にはロシアのソユーズ宇宙船に搭乗、ISS(国際宇宙ステーション)や日本実験棟「きぼう」でおよそ半年間に渡って活動した。さらに2020年11月、民間企業・スペースX社が開発した宇宙船「クルードラゴン」で3度目の宇宙へ。再びISSで約半年間の活動を行った。
通算344日を宇宙で過ごしたレジェンドが3種類の宇宙船の中でお勧めするのは「クルードラゴン」。その理由は、座席がイイからなのだとか。
「スペースシャトルって、言っちゃ悪いけどパイプ椅子みたいな感じの簡易の椅子なんですよ。宇宙に行くまでの8分間だけ使って、あとは座席取っ払って、実験や食事の空間にしちゃう」
一方の「クルードラゴン」は飛行機のビジネスクラスみたいな椅子で、「なおかつ宇宙服と椅子とカプセルは全部スペースX社が作ってるので相性がいい。ピッタリ合っている」と、快適さの理由を明かした。
そんな野口氏が「すごく高くて美味しい一品」と紹介した献立は、世界初の宇宙食ラーメン。開発費がかかっているため「番組史上一番高いと思う」と語る。
野口氏が宇宙飛行士になった頃は、宇宙ではラーメン禁止だったそうだ。
それでも「普段食べている物を宇宙に持っていきたい」と臨んだ野口氏は、日清食品と共同で宇宙船で食べられるカップヌードルの開発に取り組んだ。あんかけ風のスープと具材が球状のヌードルを包んでいるような見た目の一品は、野口氏も「感動しますよ」という出来で、カレー味やシーフード味、チキンラーメンや焼そばUFOなど味のバリエーションも豊富だ。
現在、宇宙食は300種類ほどあり、ほとんどは各国のクルー共通のメニューだが、一部はスペシャルメニューとして自分の好きなメニューを持ち込めるという。通常はクルー全員同じメニューを食べる中で、野口氏がカップヌードルを食べたくなるのは「週末」なのだとか。
その理由として野口氏は「これ大事なんですよ」と前置きし、「宇宙って単調、景色も変わらない。一緒にいるメンバーも同じ。ずっと同じような日が続くのは危険なんですよ、鬱になってきちゃう」と宇宙の事情を説明。そのため、金曜の夜ぐらい賑やかにやろうと、皆で映画鑑賞を楽しんだりして過ごすのだという。宇宙で『スター・ウォーズ』を見るのが楽しいといい、宇宙空間では地球上と同じタイミングでインターネット配信も視聴できる。Amazonも利用できるので、宇宙から母の日のカーネーションを贈ったことも明かした。
実は野口氏が初めてのスペースシャトル搭乗を控えていた2003年2月1日、スペースシャトル「コロンビア号」が大気圏に再突入する際に空中分解し、乗っていた宇宙飛行士7名全員がが犠牲となる事故が発生。
「宇宙に行く覚悟があるのか、意味があるのか。あるいは家族が認めてくれるのか」…2年間はそんな思いで揺れ動き、クルー仲間とも「家族にちゃんと説明できて、納得してくれるまでは宇宙に行かない」と話し合ったという。
その後は訓練を家族に実際に見に来てもらう機会が増え、子どもたちも宇宙に行くための準備や意義を理解し、最終的には野口氏の夢を応援してくれるようになったというのだ。
家族の理解で叶った野口氏の宇宙への旅は3度にも及ぶことになり、JAXAを退職した今も講演活動や大学での教育や研究などを精力的に行っている。野口氏の宇宙への旅の夢は、まだ終わっていない。
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