岸 私は両親とともに東京で暮らしていたので、いとことしてお互いの家に行ったり来たりしていたんです。ただ、安倍家と岸家のつながりは密なので、一般的ないとこ同士よりは会う回数は多く、私からすると高校生になっても、仲の良い親戚のお兄さんでした。それが急に兄弟だと分かって、混乱はありましたよ。だって、叔母さんがじつはお母さんで、お父さんが伯父さんだったわけですしね。自分の中で気持ちの整理が付くまでしばらくかかりました。
井上 接し方も難しそうだなと想像しちゃいます。
岸 そうですね。だから、兄弟ではあるんですけど、どちらかというと、今もいとこ同士みたいな接し方になっているかもしれないです。というのも、私自身は岸家の人間だし、兄は安倍家の人間ですからね。
井上 息子さんはテレビ局で記者をされていると聞きました。政治家になって欲しいなと思うことはありますか?
岸 それは本人の気持ちですから。親がどうこう言うことではありません。僕自身も政治一家に育って、40代になるまで一度も「政治家になりたい」と思わなかったですからね。
井上 間近にいる家族から見ると、政治の世界はやはり大変そうだからですか?
岸 うちの場合、祖父が政治家(第56・57代内閣総理大臣の岸信介氏)で、岸家の両親は政治家ではありませんでした。それでも私が小さい頃は祖父と同じ家で暮らしていましたから、一般的な家庭とは違う雰囲気がありました。