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しかし、一方で不安の声も聞かれる。
「最近の邦画はメガヒットとそれ以外の“二極化”が顕著となっています。『鬼滅の刃』を筆頭にアニメは興収100億円超えが連発される一方で、実写映画はヒットの目安とされる10億円超えを果たすのも一苦労。一般の観客は口コミを見て、その時いちばん好評を博している映画を観ようとする。そのため、中小規模の作品は苦戦する傾向にあります。また、制作費を集めやすい人気俳優ありきで企画が進められがちで、必然的に同じ役者が主演やヒロインを務めることが増えている印象です」(映画ライター)
広瀬は今年主演2作目で、19日には制作費25億円をかけた大作映画『宝島』の公開が控える。山田も今年主演する映画3作のうちの2作目、阿部に至っては今年は3年ぶりの映画主演ながら、これが3作目。過剰露出が映画の鮮度を落とす可能性は否定できず、作品の評価にも影響を及ぼしかねない。
一方で作品ごとに個別の不安材料も指摘されている。
「最近の広瀬は文学的な格調の高い作品が増えており、今作も戦後の長崎を舞台に戦争の記憶と向き合う女性が描かれています。ヒットよりも女優としての“格”を重視している印象で、一部からは“誰が広瀬すずをきれいに撮れるか選手権”と揶揄する声も…。
山田主演の『ベートーベン捏造』はバカリズム脚本のコメディ映画で、19世紀ウィーンで起きた音楽史最大級のスキャンダルを題材にしている。
「主人公シンドラーが、死後のベートーベン像を作り上げたという史実を下敷きに、アメリカ人ジャーナリストが真相に迫る物語で、題材自体は非常に面白い。とはいえ、バカリズム脚本作品はテレビドラマでこそ生きるという声もあり、映画としての完成度が試されるところです。外国人の物語を日本人俳優が演じる点についても、舞台的表現として受け入れられるのか、それとも違和感として残るのかが評価の分かれ目になりそう」(前出・映画ライター)
阿部主演の『俺ではない炎上』は、SNSで身に覚えのない殺人犯として晒された営業部長が無実を証明するために奔走する社会派サスペンス。原作は『六人の嘘つきな大学生』で知られる浅倉秋成で、映像化しやすいストーリーと言われている。
「テレビでは視聴率男となっている阿部ですが、実は映画ではここ十数年は『テルマエ・ロマエⅡ』や『祈りの幕が下りる時』など、興収10億円を超えた主演作はごくわずかです。今年の『ショウタイムセブン』『キャンドルスティック』も期待通りとはいかず、今作は“三度目の正直”。阿部映画としては正念場です」(映画関係者)
こうした状況を見ると、今年9月公開の3作はいずれも主演俳優のキャリアにとって試金石となる可能性が高い。露出過多による飽和感が観客動員に影響するかどうかは、実際にフタを開けてみないと分からないが、いずれも題材としては魅力的で意欲作であることは間違いない。
人気俳優3人の熱演により、邦画界にさらなる旋風を起こすことができるだろうか。
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