深夜ドラマ『略奪奪婚』(テレビ東京)は、ドロドロ系作品が乱立する中でも一線を画す大胆さを見せている。その要因のひとつが、桐嶋えみる役・中村ゆりかの圧倒的な存在感だ。
依存、執着、歪んだ愛情――彼女が画面に現れた瞬間、視聴者の感情は否応なくかき乱される。なぜ中村ゆりかは“依存性の高い女”をここまでリアルに演じられるのか。コラムニストの小林久乃氏が分析する。

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◆『略奪奪婚』の最大の盛り上げ役ではないか

深夜ドラマ『略奪奪婚』(テレビ東京)が、ちょっとぶっ飛んでいて面白い。育った家庭に恵まれなかった佐久間千春(内田理央)が、幼なじみの相葉司(伊藤健太郎)と結婚。ただ妊娠ができず、司は桐嶋えみる(中村ゆりか)と浮気をして妊娠。司に捨てられた千春はどん底の生活を強いられる。客観すると千春だけが不幸を背負わされたように見えるけれど、主要人物がそれぞれにコンプレックスや心の病を抱えており、その様子を描いているのが本作だ。

ドロドロとした人間関係が主流になりつつある、深夜ドラマ。多くの作品が発表されている中でも『略奪奪婚』は初回から、内田理央のベッドシーンや、揺さぶられた感情のダイレクトな表現など、他作品と比べると大胆さが抜きん出ている。さらに昨年も話題になった松本まりか主演『夫の家庭を壊すまで』(テレビ東京)の上田迅氏が監督を務めているのも、話題性の影響が大きい……とは思うけれど、私が思う影響は前述のえみる役の中村ゆりか。

えみるはいわゆる“魔性の女”としてカテゴライズされる。
手首にはリストカットの跡があり、精神を病んで通院していたのが、司の勤務していた病院。出会った司へみるみるうちに依存していき、不倫でありながら妊娠。資産家の令嬢である立場を利用して、司の独立開院資金援助もしている。ところが幸せな日々も一転、えみるは流産をしてしまう。千春からの怨嗟を背負いながら、ここからえみるはどんな牙を剥くのかが見ものだ。

第一話のえみる登場シーンでは「うわ、出た!」の驚きと同時に、既視感を覚えた。理由は、中村ゆりかはえみるのような依存性の高い役がやけに目立つから。しかも役の雰囲気の醸し出し方が、とてつもなくうまい。彼女が画面に登場するだけで(実際には流れていないけれど)『feels like"HEAVEN"』が聞こえてくる。なんという迫力。

◆依存性の高い女役といえば、中村ゆりか

そんな中村ゆりかの演技を意識したのは、2020年の『ギルティ~この恋は罪ですか?~』(読売テレビ)。主人公の荻野爽(新川優愛)と親しいふりをしながら、実は爽の夫と不倫関係にあった及川瑠衣役。
ドラマではよくあるシチュエーションかもしれないけれど、中村の怪演があまりにもリアリティーがあったのか、気味の悪さがよく現れていた。実在するのなら近くには寄りたくない。

その後も演じる役は可愛らしい見た目とは裏腹に依存性がある、強い恨みを持つ……といった役柄が続いていた。怪演俳優と呼ばれる人物はたくさんいるけれど、中途半端ではすぐに視聴者から飽きられてしまう。ただ彼女は飽きられるどころか、順調に役を増やしていく。2025年には縦型ショートドラマ『#裏アカ教師』では、憧れの女性教師に近づくため、S N Sの裏アカを使って、依存していく主役に抜擢。同年放送の『ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~』(テレビ東京)では、主人公の人気俳優に迫り、恋愛関係に持ち込む女優役。異常なまでに束縛をする俳優の女性マネジャーから、どうにかして奪おうとする様子には危機迫るものがあった。

そして冒頭の『略奪奪婚』の桐嶋えみる役に続いている。たったの6年間でサイコパス役を定着させたのは、見事としか言いようがない。

文中でも伝えたが、怪演がトレードマークになっている俳優とは日本に何人かいる。私の脳裏にパッと浮かんでくるとすれば、水野美紀
彼女の長いキャリア、振り切った演技があって、定番になっている。あれだけ美しいのにそれだけを売りにするのではなく、怪演も辞さない姿が格好いい。同列で言うのなら、木村多江も若い頃は“薄幸女優”と呼ばれていたけれど、今ではそんな様子を微塵も見せない。時折、役によっては隠しきれない薄幸さが見え隠れしているときはあるけれど。

28歳、中村ゆりかはどの道へ進むのか? 新しい道を開拓していくのか?

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