近年は若手俳優のなかにも、役ごとにまったく異なる顔を見せ、強烈な存在感を放つ者も少なくない。そのひとりに名を連ねるのが、俳優の南沙良だ。
これまでも確かな演技力で爪痕を残してきた彼女だが、映画『禍禍女』で見せる姿はひときわ鮮烈。ネット上でも大きな注目を集めている。

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2月6日より公開中の本作は、お笑い芸人・ゆりやんレトリィバァの映画初監督作品。自身の恋愛体験をホラーへと昇華させた一作となっており、「禍禍女(まがまがおんな)」とよばれる不穏な存在を軸に物語が展開していく。

禍禍女とは、愛した男に執拗に付きまとう正体不明の怪異。彼女の好意を受け止めなければ、眼球を吸い出されて命を奪われるという戦慄の存在だ。しかし本作で恐ろしいのは禍禍女だけではない。作中では数々の男たちが禍禍女によって恐怖のどん底に突き落とされていくが、彼らを取り巻く女たちもまたどこか常軌を逸している。

髙石あかり演じる「寺本唯」、田中麗奈演じる「渡瀬玲子」……。そして彼女たちを遙かに凌ぐ‟ヤバさ”を放っていたのが、南沙良演じる美大生「上原早苗」だ。

その衝撃の内容はあえて割愛するが、おそらく多くの観客が「南沙良にここまでやらせるのか」と息をのんだはず。清楚な佇まいから受ける印象を容易く裏切る狂気の数々。
もはや怪異である禍禍女よりも、早苗のほうが恐ろしく思えてしょうがない。それはひとえに、南の演技力が「早苗」という強烈なキャラクターに説得力を与えているからだろう。

南の名が世間に広く認知された作品のひとつに、2021年放送のドラマ『ドラゴン桜』(TBS系)が挙げられる。元暴走族の弁護士・桜木建二(演:阿部寛)が落ちこぼれの生徒たちを東大合格へと導く学園ドラマで、2005年放送版の続編にあたる。南にとっては民放連続ドラマ初出演作であり、何かに本気で打ち込んだ経験のないイマドキ女子・早瀬菜緒役を等身大の魅力で演じていた。

そうした『ドラゴン桜』のイメージを引きずっている人ほど、『禍禍女』での振り切った演技に驚かされるかもしれない。だが実のところ彼女は、俳優デビュー間もない頃から一筋縄ではいかない役どころに挑み、俳優としての力量を着実に磨いてきた。

その代表例が、2018年公開の映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』だ。彼女が演じたのは吃音を抱え、自分の名前すら思うように口にできない女子高生・大島志乃。俳優デビューからまだ1年足らずというタイミングだったが、言葉に詰まりながらも必死に思いを伝えようとする姿や、心の機微を見事に体現した演技力は新人離れした完成度といえる。各方面からも高く評価され、報知映画賞やブルーリボン賞など数々の映画賞へとつながった。

一方で、2022年公開の映画『女子高生に殺されたい』では、主人公が企てた前代未聞の計画に巻き込まれる女子高生・佐々木真帆を熱演。
真帆は一見すると心優しく儚げな存在だが、ある秘密を抱えた複雑な人物でもある。その振り幅のある演じ分けは、南の実力を改めて印象づけた。

さらに最近では、今年1月に公開された『万事快調〈オール・グリーンズ〉』での姿も印象的だ。本作は第28回松本清張賞を満場一致で受賞した作家・波木銅のデビュー作を映画化したもので、ど田舎で暮らす高校生3人による‟不適切な青春”を描く。南はそのひとり、朴秀美を演じ、『禍禍女』とはまた異なるベクトルで存在感を発揮していた。

こうした難役を恐れず挑み続けてきた軌跡こそが、‟南沙良”という俳優の現在地を物語っている。『禍禍女』はその到達点であると同時に、さらなる飛躍の序章なのかもしれない。

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