【写真】映画『事故物件 恐い間取り』
——松原さんが事故物件に住むことになった経緯を教えてください。
松原 きっかけは、『北野誠のおまえら行くな。』(エンタメ~テレ)という番組でした。若手芸人を事故物件に住ませて定点カメラで部屋を撮影し、幽霊が映っていたらギャラがもらえるという企画に抜擢されたんです。
——「恐い」という気持ちはありませんでしたか?
松原 もちろんありましたよ。でも、「このままでも何も変わらないだろう」という気持ちもあって、やることに決めました。それに、住んでみると面白いんです。何しろ、オーブが映ったりラップ音が鳴ったりということが現実に起きますからね。
——結果、著書『恐い間取り』(二見書房)を出すことにもなりました。
松原 ありがたい話です。でも、僕自身は何が受けたのかあまり分かっていないところもあるんです。間取りが付いていることで「現実味が増している」とか「純粋なホラーファン以外も食い付いた」と指摘されると「そうかも」と思う一方で、僕自身はただ起きたことを書いただけですからね。
——揚げ句、その著書が映画化もされましたが……。
松原 ますます分からないですね。実感がないというのが本音です(笑)。
——映画の制作現場で印象に残っていることはありますか?
松原 僕がモデルの主人公を演じる亀梨和也さんが、とにかく熱心に話を聞いてくれました。さすがに、「事故物件に住むことになった売れない芸人」の心境はなかなか想像できなかったのかもしれませんね(笑)。
——今、松原さんは怪談シーンを引っ張っている1人でもあります。
松原 でも、僕自身は怪談をしているつもりはないんですよ。僕の本が受けた理由が分からないことにも通じますが、ただ身に起こったことを話しているだけですから。だからこそ、変に聞き手を怖がらせようとして話を盛ると自分に嘘をつくことになる。それはやりたくないんですよね。
——事実ならではの恐さということですよね。
松原 もちろん、創作を否定するわけではありません。
——というと?
松原 怪談を含むホラーシーンは時代につれて変遷してきました。今は誰もがスマホを手にしてネットに触れる中で、いわゆるヤラセだとかフェイクというものを否定する風潮が強まっています。何をやってもバレる時代といっていいでしょう。でも、そんな中でも解明できない、理解できないという不可解な現象も現実として確かにある。そこに怪談を含むホラーシーンの希望があるように思います。
——事故物件はそれこそリアリティーの塊です。
松原 怪談には、幽霊が出る家があって、後々調べてみたらそこで人が死んでいたらしいといった定番のパターンがありますよね。でも、事故物件の場合は、「死んでいたらしい」などではなく、「そこで確実に人が死んだ」という事実があります。いわば、不動産屋さんのお墨付きをもらっているようなもの。
(取材・文/清家茂樹)
▽まつばら・たにし 1982年4月28日生まれ。兵庫県神戸市出身。松竹芸能所属のピン芸人。現在は「事故物件住みます芸人」として活動。2012年よりテレビ番組「北野誠のおまえら行くな。」(エンタメ~テレ)の企画により大阪で事故物件に住みはじめ、これまでに大阪、千葉、東京、沖縄など10軒の事故物件に住む。また500以上の日本各地の心霊スポットを巡り、日々怪談や不思議な話を収集している。著書に『事故物件怪談 恐い間取り』『事故物件怪談 恐い間取り2』『異界探訪記 恐い旅』(二見書房刊)がある。ネット番組『おちゅーんLIVE!』、ラジオ関西『松原タニシの生きる』などに出演中。
▽『事故物件 恐い間取り』
売れない芸人・ヤマメ(亀梨和也)が先輩から「テレビに出してやるから事故物件に住んでみろ」と言われ、殺人事件が起きた事故物件に住み始めたことを機に、様々な怪奇現象に遭遇し……。事故物件住みます芸人・松原タニシの実体験をベースに書かれたノンフィクションとして異例の10万部ベストセラーの大ヒット本『事故物件怪談 恐い間取り』(二見書房刊)を原作とするホラーエンターテインメント。
8月28日(金)全国公開
出演:亀梨和也、奈緒/瀬戸康史、江口のりこ/木下ほうかMEGUMI 有野晋哉/濱口優(友情出演)
©2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会