昨年12月20日(土)放送のTBSの『情熱大陸』で特集され話題を呼んだ、日本一のコスプレイヤーえなこ。彼女が所属する事務所PPエンタープライズ(以下PPE)を社長として率いるのは、かつてアイドルグループ「腐男塾(現:風男塾)」のメンバーとして活躍していたよきゅーんさんだ。


PPEはコスプレ業界にプロを確立したとも言われるが、社長のよきゅーんさんは、所属するタレント達はあくまでも “家族”だという。「(PPEがやっているのは)私たちとファンによる農民一揆なんです」。笑顔でそう語るよきゅーんさんに、えなことの出会いから、コスプレイヤーへの愛情、これから目指す先を聞いた。(3回連載の2回目)

※インタビュー<1>所属事務所社長が語る、えなことの出会い「契約書を確認せずに判子を押そうとして…」はこちらから。

【写真】自身もアイドル、タレントとしても活躍、よきゅーんの撮り下ろしカット【10点】

     *     *     *

――えなこさんと長年共にしてきて、あらためて感じたことは?

よきゅーん 全然我欲がない子ですね。出会ったときからずっと変わっていないのですが、グラビアで撮られた写真に関しても「これは……」というもの以外、写真選びなどは全てお任せしますという姿勢なんですよ。コスプレイヤーって、自分の得意な角度を持っていてその角度じゃないとダメという子も少なくない中、「男性が主な読者の雑誌は、男性目線の選択の方がきっといい」という考えを持っていて、プロの方がやることは正解というスタンスなんです。それがスゴイなぁと。これだけ有名な子だと、何かしらワガママなことを言うイメージがあるんですけど、それが全然なくて。そして出会った当時、売れているレイヤーさんにしては珍しく、カメラマンさんと同人誌の売り上げを折半していたぐらい、お金や物欲もあまりなくて。

――それは、我欲がないとかのレベルではないような気もします(笑)。えなこさんの人気を考えると、今後、PPEに所属したいと門戸を叩く人が増えそうです。


よきゅーん 確かに今年は「募集していますか?」というお問い合わせがものすごく増えました。ありがたいことですが、今のところ社員は私一人なので、スタッフが増えない限りこれ以上を抱える気はありません。私の目が行き届かなくなれば、女の子たちがションボリしてしまうと思うんです。そういう事務所にはしたくなくて。出来る限り一人ひとりの子をケアできて、ちゃんとまっすぐ対話ができるぐらいの子たちを売ってからではないと、他の子を受け入れる責任は果たせないなと。

――ご自身がタレントだったよきゅーんさんならではの考え方かもしれません。

よきゅーん ちゃんとした生活が送れる保証がないと、女の子は病んでしまいパフォーマンスが落ちてしまうので、生活・資金面でのケアは第一に考えています。例えば昨年はコロナで仕事がなくなってしまったりと、少し不安な時期がありましたよね? なので、その際には、売上を通常通り折半してしまうと生活が厳しいかな?と思った子には、売上全額あげたりと、事務所として配慮をしてみました。ただそれも、えなこ、似鳥(沙也加)という稼ぎ頭がちゃんといるから可能なんです。入ったばかりの子たちには仲間たちにリスペクトを捧げてほしくて「稼ぎ頭がいてくれるから、事務所としてこういう配慮ができるんだよ」と、うるさいぐらいに言っています。実際に「うるさい」と思われているでしょうし(笑)。

――いやいや、親の小言は後々成長した時に響きますから。


よきゅーん ですよね(笑)。口うるさいと思っても、大人の言うことって経験からでてくるもので、間違ったことがあまりないんですよね。私も間違ったことを言っているとは思っていなくて。たとえ少しだけ有名になり稼ぎが上がったとしても驕ってはいけないんです。PPEは企業、というよりもサークル、なんなら家族という認識ですからね(笑)。

――よきゅーんさんがここまで所属コスプレイヤーさんを大切にする気持ちの根源は?

よきゅーん 私はタレントとしてこれまで色々と荒波にもまれてきましたし、他のタレントさんの辛い部分なども色々と見聞きしてきましたから、うちの子たちにはそういう経験をさせたくないんです。私、「芸能界って、ヒドイ目に遭わなくても頑張れば売れるんだよ」ということを教えたくて。最近はネットが発達して、YouTuberさんが憶を稼ぐ時代になり、芸能の形も変化してきました。その時代の中に、風習というつまらないもので彼女たちが傷を負わず幸せに活動できるような道筋を、これからも作っていきたいんです。

※インタビュー<3>えなこ所属事務所社長・よきゅーんに聞くコスプレ界「大切なのは人と熱、オタク文化への理解がないと成功しない」はこちらから。
編集部おすすめ