●『ONE PIECE』旋風で変わった人生「多くのチャンスの扉が開いた」
全世界待望のNetflix実写版『ONE PIECE』で、主人公モンキー・D・ルフィという大役を見事に体現したイニャキ・ゴドイ。2026年のシーズン2配信を前に来日したイニャキが、原作への海より深い愛とリスペクト、「神」と崇める原作者・尾田栄一郎氏への思い、そしてこの壮大な物語を守り抜くという固い覚悟を語った。


8月10日に都内で行われた「ONE PIECE DAY’25」のイベントステージに立ったイニャキは、流暢とは言えなくとも、心のこもった日本語でファンとの交流を楽しんでいた。この日のために練習を重ねたであろうその姿からは、日本という国、そして『ONE PIECE』という作品への真摯な愛情がひしひしと伝わってくる。

「まだ知らない日本語の単語が本当にたくさんあります。同じ意味なのに、言葉がたくさんあることにいつも驚きます。まだまだ道のりは長いです。でも大丈夫。友達と話したり、『ONE PIECE』について語ったりするには十分な日本語を知っているので、幸せです。日本語を学ぶのが大好きなんです」。

少年のような笑顔でそう語るイニャキだが、ひとたび作品の話になると、その表情は真剣な俳優のそれに変わる。シーズン1が世界中で巻き起こした旋風は、彼の人生を大きく変えた。

「俳優として、シーズン1が配信された後、多くのチャンスの扉が開きました。『ONE PIECE』以前にはなかったような機会をいただけるようになりました。
キャリアの面で非常に助けになっています。この作品のおかげでいろいろな場所に旅をすることができましたし、日本との繋がりもすごく深まりました。実際に船旅にも出たんですよ。『ONE PIECE』にインスパイアされて」。

まさにルフィのように、作品をきっかけに新たな旅へと乗り出したイニャキ。その冒険は、待望のシーズン2へと続く。新たな仲間や強敵の登場がファンを沸かせているが、彼自身もまた、撮影現場で心を躍らせていた一人だ。

「(シーズン2で興奮したキャラクターは)巨人族ですね。彼らが大好きです。彼らを演じている俳優さんたちが本当に素敵でした。それから、もちろんラブーンも。撮影の時に彼が実際にいたわけではないんですけど、頭の中で彼を思い描きながら演じていました。
彼との仕事は最高でしたよ。とてもプロフェッショナルで。チョッパーも同じです。彼らは2人とも、とてもプロフェッショナルでキュート。大好きです」。

○ファンだからこそ貫く「キャラクターを守る」という信念

原作の大ファンであるからこそ、実写化にあたってのプレッシャーは計り知れないものがあったはず。しかしイニャキは、その重圧を誠実な役作りへのエネルギーに変えていた。彼が最もこだわったのは、俳優として「キャラクターを守る」という一点だった。

「実写化にあたっては、自分にできることだけに集中しようと努めました。俳優として僕にできることは、自分のキャラクターを守ることです。僕のやり方は、まず漫画を読みます。そのシーズンで描かれるエピソードに応じて、自分の好きな瞬間をピックアップするんです。
ルフィの様々なポーズや、心に残ったセリフを確認します。そして撮影が始まる前に、ショーランナーたちとミーティングをして、ルフィ役の俳優として僕が本当に大事だと思うことについて話し合います」。

すべての行動は、ルフィというキャラクターの魂を損なわないために集約される。イニャキはルフィの「あり方」を守るために戦っていた。

「もちろん、やりたいこと全てができるわけではありませんが、ルフィのキャラクターにとって重要だと思うことを守るために最善を尽くしています。彼のセリフ、動き、そのあり方。幸運なことに、尾田先生や『ONE PIECE』を愛する多くの人々と話す機会に恵まれました。だから、ルフィのキャラクターにとって大切なものを守れるという自信があります」。

今や世界中のファンから「ルフィそのもの」と称賛されるイニャキ。彼自身も、ルフィという存在から多くのインスピレーションを受け、人生の指針にしているという。

「みんな僕のことをルフィにすごく似ていると言ってくれますが、僕にとってそれは最高の褒め言葉です。なぜなら、ルフィは夢を追い、思ったことを口にし、やりたいことをやり、そして周りの愛する人々をいつも大切にする男だからです。
彼は僕の人生に多くのインスピレーションを与えてくれましたし、毎日もっと彼に近づこうと努力しています。それが、彼が僕や世界中の多くの人々に対して持っている力であり、僕たちが『ONE PIECE』を愛する理由なんです」。

そう熱弁しながらも、「残念ながら、いつもルフィほど自信があるわけではないですし、彼ほどたくさんは食べられません」と笑う。しかし、イニャキが語る『ONE PIECE』から教わった信条は、まさに麦わらの一味の航海そのものだ。

「『仲間との絆の力』。それから、『自分自身と、自分が大切に思う人々を信じること』。そして、『欲しいもののために戦うこと』、『好きなだけお肉を食べていい』ということ(笑)。少しわがままでいてもいいんです。それが海賊のやり方ですから」。

●尾田栄一郎は“最高の友達”「彼が創り出したものを守りたい」
このプロジェクトにおいて、彼の羅針盤であり、最大の理解者となった人物。それは、原作者である尾田栄一郎氏に他ならない。イニャキは、尾田氏への思いを尋ねられると、満面の笑みで、最大級の親愛を込めてこう答えた。


「彼は素晴らしいです。素晴らしい友人です。(日本語で)『最高の友達です』。彼のことを友人だと思っています。彼が創り出したものが大好きですし、それを守りたい。そして、『ONE PIECE』を世界一のものにしたいと思っています。彼は本当に素晴らしくて、人間としても大好きです」。

「守りたい」――その一言に、イニャキの覚悟と愛情のすべてが凝縮されている。シーズン3の制作も決定し、物語はさらに壮大な海へと進んでいく。原作ファンとして、演じてみたい「編」を尋ねると、瞳を輝かせた。

「『ONE PIECE』が本当に大好きなので、チャンスがあるならできるだけ多くの『編』をやりたいです。特に、エニエス・ロビー編と、インペルダウン編も楽しいので演じたいです。
それから、ルフィとしてもっとたくさんの食べ物を食べたいです。毎シーズンね」。

インタビューの最後に、シーズン2の見どころを尋ねると、イニャキはルフィのようにニヤリと笑い「それは、観てのお楽しみです。ルフィがたくさん食べるシーンがいっぱい出てきます。楽しみにしていてください」と語る。イニャキの言葉一つひとつが、作品への純粋な愛で満ち溢れている。イニャキ・ゴドイという最高の船長を得た麦わらの一味の航海は、どこまで続くのだろうか――期待に胸が高鳴る。
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