女優の吉永小百合が主演を務める映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』(10月31日公開)の完成披露試写会が行われ、舞台挨拶に、吉永、佐藤浩市、天海祐希、のん、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずき、阪本順治監督が登壇した。
『てっぺんの向こうにあなたがいる』は、「女性だけで海外遠征を」を合言葉に結成されたエベレスト(ネパール名でサガルマータ、中国名でチョモランマ)日本女子登山隊の副隊長として知られる女性登山家・田部井淳子氏の実話を基にした作品。
主人公・多部純子(田部井淳子氏がモデル)を演じるのは今作で映画出演124本目となる、女優の吉永小百合。純子を支える夫・正明を演じるのは数々の映画賞を受賞している名優、佐藤浩市。純子の盟友であり、エベレスト登頂の相棒でもある北山悦子役には、吉永と映画『最高の人生 の見つけ方』以来、5年ぶりのタッグとなる天海祐希。青年期の純子役はアーティスト活動から俳優活動まで多方面で活躍しているのん。さらに、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずきらがキャスティングされており、険しい高峰へ向けて実力派の俳優たちが揃った「パーティー」となった。
9月24日、東京国際フォーラム ホールAにて、本作の完成披露試写会が行われ、舞台挨拶に、吉永、佐藤、天海、のん、木村、若葉、工藤、茅島と阪本順治監督が登壇した。世界最高峰8,849mにちなんだ8.849m×15mの"エベレスト"バナーに向かい、全員で揃って、吉永の映画出演124本目を記念した12.4mの白銀ランウェイを闊歩し、舞台挨拶はスタート。冒頭の挨拶では、吉永が観客やモデルとなった田部井家への感謝を述べ、今日という日を迎えられたことを「本当に嬉しい」とストレートに表現。天海も「(演じた役が)小百合さんを思う気持ちと一緒なので私としても感情移入して演じることができたし、映画が完成してとても幸せ」と映画が完成した喜びを語ったほか、「優しさを感じ取っていただける映画なので、気持ちを豊かにして帰ってほしい」(佐藤)、「私も勇気をもらえた作品なのでみなさんに届いたらいいなと思う」(のん)、「素敵な気持ちで帰っていただける映画なので楽しみにしていてください」(工藤)、「今後愛されていくであろう作品に参加できて、とても幸せ」(木村)、「過酷な撮影だったが怪我なくこの日を迎えられて安心している」(若葉)、「心が温かくなる素敵な映画だと思うので同じ気持ちで帰っていただけたら嬉しい」(茅島)とそれぞれ本作に対する自信のほどを伺わせるコメントを寄せ、阪本監督は「木下グループが初めてつくる吉永小百合さんの映画ということで私なりに力をこめて作った」と挨拶した。
本作は、女性登山家・田部井淳子の生涯とともに、その家族を描いた物語。娘役を演じた木村は「大先輩お二人と初共演の若葉さんとの演技だったが、実際にこの四人が家族なんだ、自分も多部家の一員なんだと思えた」というシーンがあったと明かす。実は、吉永小百合というネームバリューのおかげで想定の三倍以上もの人数のエキストラが集まったシーンがあり、「天国の田部井さんが素晴らしい方なのはもちろんだけど、私たちのお母さん=吉永小百合さんもやるでしょ、という気持ちになって(その時に)家族になれたなと思えた」と、そのシーンでは胸を張っていたと誇らしげ。
息子役を演じた若葉は、思春期には反発しながらも次第に母親をリスペクトするようになる役どころに対して、自身が大衆演劇出身で兄や父と比較されてきた経験から、「共鳴する部分が多く、痛いほどその気持ちが分かるシーンがあった」と経験と重ねて演じていたと語った。天海演じる悦子の青年期を演じた茅島は、盟友役を演じたのんが「多方面で活躍している方なので緊張が止まらなかったが、役作りに対する姿勢、現場での居方が素敵で、気づいたら目で追っていたし、演技で相対すると、台本だけでは汲み取れない感情が沢山でてきて、お芝居の部分でリードしていただいた」と良い経験になったと語り、撮影が充実していたことを覗かせた。
また、本作は、先日開催された第73回サン・セバスチャン国際映画祭オフィシャルセレクションに選出され、阪本監督と若葉、そして田部井淳子氏の実子・田部井進也氏が映画祭に参加。阪本監督は、「上映後360度囲むようにして、温かい拍手をもらった」観客の一人から「山登りを通じて描く人生の映画だと思った」という感想が嬉しかったと現地の様子を語り、さらに現地で鼎談したオーストリアの女性登山家ゲルリンデ・カルテンブルンナー氏から、「去年ヒマラヤに登頂した時に、一緒だったメンバーから誰か田部井淳子さんの映画を作ってくれないかしらという話が出た」という話が印象的だったと語り、世界の"田部井淳子"を感じさせるエピソードを披露。飛行機が大嫌いながらも現地入りした若葉も、劇場が一丸となって、スクリーンに釘付けになっている感覚に感動し、「(田部井)進也さんの上映前スピーチで、通訳を通さなくても観客が拍手をしていて、言葉という壁は、丁寧に生きていれば乗り越えられるものなんだなと感じた」と現地での思い出を語った。
サン・セバスチャン国際映画祭に続いて9月26日から開催される韓国の蔚山蔚州世界山岳映画祭、10月16日からのハワイ国際映画祭、そして10月27日には東京国際映画祭のオープニング作品への出品も決まっていることに対して、阪本監督は、「(普段は)映画を制作している時には、国際映画祭に出したいとかは一切思わない。まずは日本の観客に観て欲しいし、その延長線上に国際映画祭があると思っているものの、今回サン・セバスチャンに行って田部井淳子さんが世界中に知られている方ということを再確認し、登山家がいない国はないだろうし、田部井さんを認知している全ての国に広まってほしい」と 海外でも多くの観客に観てもらえるよう期待を込めた。その言葉を受けた吉永は、「実は、アメリカで田部井さんの映画をつくろうという話があった。ただその契約期限が切れたので日本でこの映画を作ることができて、ラッキーだった。天国から淳子さんが応援してくれたのかもと思っている」と最後にとっておきのエピソードを披露し、会場が大いに盛り上がったところで舞台挨拶は終了。上映を楽しみにする観客にとって、貴重な話を聞く機会となった。
(C)2025「てっぺんの向こうにあなたがいる」製作委員会
【編集部MEMO】
本作は、女性登山家である田部井淳子氏が執筆した『人生、山あり“時々”谷あり』をベースにしている。