電車や飛行機内など、ここ最近モバイルバッテリーの発火事故が相次いで報道され、大きな話題となりました。手軽に購入でき、どこでもスマートフォンなどの充電ができることから人気のモバイルバッテリーですが、実は扱いが非常に難しい存在で、さらに処分も非常に難しいのが実情です。
電車や飛行機など、相次ぐモバイルバッテリーの事故
例年以上の暑さを記録した2025年の夏。スマートフォン関連で大きな話題となったのは、モバイルバッテリーの発火事故ではないでしょうか。
とりわけ多くの注目を集めたのは、2025年7月20日に東京のJR山手線内で発生した発火事故です。乗客が利用していたモバイルバッテリーが突然発熱・発火し、乗客にけが人が出ただけでなく、山手線が1時間以上運転を見合わせたことで、大きな影響が出たことは記憶に新しいかと思います。
ですが、2025年10月9日にも再びモバイルバッテリーの事故が話題になりました。それは、全日本空輸(ANA)の飛行機内で、離陸直後にモバイルバッテリーから煙が出たこと。幸いすぐ水をかけて煙は収まり、発火には至らなかったようですが、飛行機内で発火に至ったとなれば大きな事故にもつながりかねないだけに、高い関心を呼んだことは間違いありません。
飛行機での発煙事故の原因は分かっていませんが、先の山手線での発火事故に関しては、乗客が利用していたモバイルバッテリーがリコール対象となっていたことが判明しており、モバイルバッテリー自体の不具合で発火が生じた可能性が考えられます。ですが、モバイルバッテリーの発火原因は、他にもいくつか存在しています。
なかでも2025年に問題視されたのが、冒頭に触れた“暑さ”です。モバイルバッテリーをはじめとしたリチウムイオン電池を搭載した製品は、内部の不具合だけでなく、強い衝撃を与えたり、高温下の状態に長時間置いておいたりすると発火してしまうことから、夏場は発火事故が増えやすい傾向にあるのです。
それゆえ、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)が、夏に合わせてモバイルバッテリーの発火に関する注意喚起を打ち出すなど、熱によるモバイルバッテリーの発火を警戒する動きが進んでいました。
容易に購入できるが捨てるハードルが非常に高い
なぜモバイルバッテリーの発火事故がそれだけ多く、警戒されているのかといえば、そもそも利用する人が多いことが挙げられます。モバイルバッテリーは外出先であっても、USB端子経由でスマートフォンなどさまざまなデバイスを手軽に充電できることから人気が高く、家電量販店やコンビニエンスストアなどで手軽に購入できることもあって、非常に身近な存在となっています。
その一方で、製品の品質がまちまちであることも、発火が警戒されている要因といえるでしょう。モバイルバッテリーはスマートフォンより参入障壁が低く、低価格で販売される商品も多いことから、製品によって品質にかなりの差があるとも言われています。
さらに言うならば、モバイルバッテリーを構成するバッテリーセルの品質も、ここ最近の競争激化などによって品質低下が指摘されていました。実際、モバイルバッテリーやそのバッテリーセルを多く製造している中国では、品質に関する問題が多発したことで大規模なリコールが相次ぎ、社会問題にもなっていたようです。
ですが、モバイルバッテリーはリコールされた製品でなくても、熱や衝撃など何らかのトラブルによって発火する可能性がありますし、経年劣化によるバッテリーの膨張も、発火を招く大きな要因とされています。それだけに、問題のあるモバイルバッテリーを処分する、あるいは問題が起きる前に処分することが非常に重要なのですが、実は処分のハードルが非常に高いことは、あまり知られていません。
モバイルバッテリーの処分は、一般的に販売したメーカー、一般社団法人JBRCに加盟しているメーカーの製品であれば、その回収協力店に持ち込むことが望ましいとされています。ですが、最近では海外の企業が、ECサイト経由でモバイルバッテリーを販売するケースも増えており、そうした製品は回収に応じてくれないことが多いようです。
JBRCに加盟しているメーカーの製品であっても、バッテリーが膨張した製品などは回収してくれませんし、回収協力店によっては「リサイクルマーク」が付いていない製品は回収を断られるという経験を、筆者自らしています。
これらの方法でも処分できないモバイルバッテリーは、市区町村が回収するよう環境省が方針を打ち出しており、最終的には自治体が責任を持つとされています。ですが、その環境省が2025年4月15日に通知した「市町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策について」を確認しますと、2023年度時点でリチウム蓄電池等の分別回収を行っている市町村は75%に留まっているとのこと。2025年現在では、より増えていることが考えられますが、それでもすべての自治体で回収しているわけではないようです。
それゆえ、モバイルバッテリーは現状、購入が非常に容易である一方、処分のハードルがこの上なく高く、発火事故のリスクと責任が実質的に消費者に押し付けられているのが現状なのです。この状況が決して健全とは思えないだけに、発火事故を減らすにはメーカーと行政がより積極的に回収に取り組み、モバイルバッテリーを処分しやすい環境を早急に整えるべきでしょう。
佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら











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