11月9日、東京の将棋会館で「第14回 J:COM杯 3月のライオン 子ども将棋大会」の全国大会が行われた。その熱戦の模様をご紹介しよう。


○前年3位の白井くんがリーグ戦敗退。だれが勝ち上がるかわからない熱戦

出場者は全国の小・中学生。7月21日の北海道大会を皮切りに、東北/関東/東海/関西/中国/九州の各地区で地区大会が開催され、そこでの成績優秀者16人が将棋会館に集結し、全国優勝を争う。全国大会に進出した16人のうち、小学生は2人で、4年生が1人、6年生が1人。14人は中学生で、1年生が2人、2年生が5人、3年生が7人である。

全国大会は、まず1ブロック4名のリーグ戦をA~Dの4ブロックで行い、各ブロックの優勝者による4人トーナメントで優勝を決めるシステムだ。リーグ戦では複数の選手が勝ち数で並ぶ可能性もあるが、それが2人の場合は直接対決の勝者、3人の場合は改めて抽選を行ってからのパラマストーナメント方式で準決勝への進出者を決めることになる。

各ブロックのリーグ戦は将棋会館の大広間で、8つの将棋盤が並んで行われた。その奥にはお子さんの戦いぶりを見守る保護者の方々の席が用意されている。将棋会館は2025年1月に新会館へ移転しており、この大会が新会館で行われるのは今回が初めて。「すごくきれいになりましたね」という声があちこちから聞こえてきた。

ブロックリーグの戦いを見ると、どのブロックも誰が勝ち上がってもおかしくない熱戦が続いていた。
2024年の本大会で3位入賞しており、また中学生王将戦では2024年・2025年と2年続けて準優勝の実績がある白井遥都くん(中国大会代表)が、Bブロック突破の松岡輝真くん(関西大会代表)に唯一の黒星をつけるなど健闘したものの、今回はまさかのブロック敗退となった。

今大会の最年少参加者は、唯一の小学4年生である森晴陽くん(関西大会代表)。最年少とはいえ、今年のテーブルマーク子ども大会の中国大会で準優勝、倉敷王将戦高学年の部で準優勝の実績がある。1勝1敗で迎えたAブロック3回戦では、ここまで2連勝の細井俊輔くん(東北大会代表)に好勝負を見せていたが、惜しくも逆転負け。「いい将棋を勝ち切れないのは反省です」と振り返っていた。

森くんは現在、関西研修会のB1クラスに在籍しており、将来はプロ棋士を目指す。「注目される棋士になりたいです」と語り、藤井聡太竜王・名人を目標とする。森くんのお父さんに話を聞いたら「テレビの将棋講座を録画していたものを見ていたら、強くなりました。大会などの戦いを見守っていると、最近は(子どもの)仕草だけで優劣がわかるようになりました。親としてはドキドキして見守ることで、楽しませてもらっています」ということである。
○準決勝は特別対局室で。いずれ劣らぬ実力者が決勝へ

準決勝は特別対局室に場所を移して行われた。
対戦カードは松岡くん―細井くんと、山本遼介くん(関西大会代表)―和田耕真くん(東海大会代表)という組み合わせで、それぞれ松岡くんと和田くんが勝利した。松岡くんは今年の文部科学大臣杯 小・中学生団体戦で優勝した東大寺学園チームのメンバーであり、和田くんは小学3年時の2021年にテーブルマーク子ども大会を制した実績がある。

○決勝はテレビの収録・解説もつき、さながらプロの公式戦のよう

決勝は将棋会館の銀河スタジオにて行われた。ここからはテレビの収録もつき、プロ公式戦の銀河戦さながらの戦いとなった。別室では解説の佐藤康光九段と聞き手の室谷由紀女流三段によるテレビ用の解説も行われていた。

決勝は持ち時間15分、使い切ったら1手30秒の秒読みと、こちらも早指しの公式戦並だ。振り駒の結果、和田くんの先手番となり、相掛かりとなった。実は相掛かりは和田くんの得意戦法で、対する松岡くんは角換わりが得意。「ここまでの対局を見て、強敵を相手に角換わりで勝っていたので、避けようと思った」と和田くんは振り返っていた。

中盤では松岡くんが先手の桂頭を目指して仕掛けるも、それに対してうまい切り返しを見せた和田くんが優位に立ち、そのまま押し切って優勝を決めた。「勝ちになってからは心を落ち着かせようとしていました。今日はどの相手も強かったですが、粘って勝つことができ、持ち味の終盤力を発揮できたのはよかったです」というのが局後のコメント。


○優勝した和田くんは関東研修会在籍、将来はプロを目指す

和田くんは現在、関東研修会のC1に在籍しており、将来のプロ棋士を目指している。普段は道場などで強敵を相手に戦い、感想戦を聞くのが勉強という実戦派だ。今大会は早指しで勝っていたが、課題として「研修会の持ち時間である30分・60秒に慣れていかないといけない」ことを挙げた。目標は週1回で教室に通い、教わっている北島忠雄七段とのことで、北島門下の内山あや女流二段とも指しているそうだ。

和田くんのお父さんにも話を聞いた。「いつも局面が悪そうで、胃が痛くなります」とのこと。和田くんは将棋の心構えと共通することとして、学校の勉強もわからずとも投げ出さないように粘り強く取り組むようになったという。

室谷女流三段は大会の総評として「さすが地区大会を勝ち抜いた皆さんで、どの将棋もハイレベルでした。最後まで集中力を保って、素晴らしかったです」と語った。そして佐藤九段も大会を振り返り、「新しい会館で新鮮さもあり、開始前から緊張感がありました。将棋は序盤の最新形も現れており、皆さんが洗練された将棋を指していました。小中学生が一緒になることで、さまざまな世代と戦えるのがこの大会の魅力の一つです」と語った。


本大会はこれまで数多くのプロ棋士を輩出した大会でもある。今回の参加者から未来のプロ棋士が現れるか、楽しみである。
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