セイコーエプソンが11月5日に発表した、2025年度上期(2025年4月~9月)の連結業績。売上収益は前年同期比1.0%減の6673億円、事業利益は同26.7%減374億円、営業利益は同10.9%減の311億円、税引前利益は同6.3%減の307億円、当期利益は同19.8%減の186億円の増収減益の決算となった。


セイコーエプソンの田潤吉社長は、「プリンティングソリューションズの堅調な推移に加えて、マニュファクチャリング関連・ウエアラブルの販売が伸長した。だが、事業利益は、米国関税がコスト増になったのに加えて、ビジュアルコミュニケーションの減収、プリンティングソリューションズでの価格対応や在庫影響によって減益になった」とした。しかし、「社内計画に対しては、売上収益、事業利益ともに上回っており、順調な進捗となった」と総括した。

オフィス・ホームプリンティングなどの販売が好調であること、為替影響がプラスに寄与したことも報告した。

なお、米国関税への対応については、「上期の事業利益において、約50億円のマイナスとなった。だが、製造拠点の分散施策が完了し、下期は積極的な販売施策を打っていくことになる。プロモーション活動を展開するフェーズに入っている」と述べた。

○プリンティングは堅調だが、通期へ「市況を厳しく見ている」

セグメント別では、プリンティングソリューションズ事業の売上収益は前年同期比0.4%減の4783億円、セグメント利益は同14.4%減の544億円。そのうち、オフィス・ホームプリンティングの売上収益は前年同期比3.1%減の3184億円、セグメント利益は同8.5%減の263億円。商業・産業プリンティングの売上収益は前年同期比8.1%増の1599億円、セグメント利益は19.3%減の281億円となった。

オフィス・ホームプリンティングでは、SOHO・ホームIJP(インクジェットプリンタ)の売上収益は前年同期比4.0%減の2457億円、オフィス共有IJPの売上収益は前年同期比6.2%増の422億円となっている。

田社長は、「第2四半期(2025年7月~9月)は、SOJO・ホームIJP本体が、販売数量、価格ともに前年同期並。
オフィス共有IJPの売上収益は増収となった。また、オフィス・ホームIJPインクの売上収益は、インクカートリッジの減少を大容量インクボトルおよびオフィス共有IJPインクの増加で補って前年同期並となった」としたほか、「社内計画に対しては、IJP本体の販売数量は若干の未達となったが、価格対応およびインク販売が計画を上回り、売上収益、事業利益ともに計画を上回った」という。

また、「商業・産業IJPの完成品ビジネスは、サイネージやテキスタイルの新製品投入によって販売が増加。プリントヘッド外販は、中国で軟調に推移したものの、他地域での販売が増加して前年同期並になった」という。

なお、2024年12月に買収したFieryは、売上収益および事業利益ともにプラスに寄与したという。FieryとエプソンブランドのMFPを組み合わせた販売も徐々に増加しているという。

ビジュアルコミュニケーション事業は、売上収益は前年同期比16.7%減の900億円、セグメント利益は同48.1%減の83億円。欧米の教育向けや、中国での需要減少に伴い、プロジェクターの販売が減少。社内計画に対しては為替のプラス影響があり、予定通りだという。
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業では、売上収益は前年同期比12.9%減の1016億円、セグメント利益は前年同期の5億円の赤字から、53億円の黒字に転換した。社内計画に対しては、売上収益、セグメント利益ともに上回っているという。

同セグメントのうち、マニュファクチャリングソリューションズの売上収益は前年同期比0.5%増の113億円、ウエアラブル機器の売上収益は前年同期比6.2%増の215億円、マイクロデバイスほかの売上収益は前年同期比10.5%増の561億円、PCの売上収益は前年同期比43.4%増の143億円となった。


「PCは、Windows 10のEOSを前にした需要の高まりがみられた」(セイコーエプソンの田社長)という。

なお、第2四半期のトピックスとして、東北エプソンで約51億円を投資し、インクジェットプリンタ用ヘッド製造の新棟を竣工したこと、強溶剤に対応した新インクジェットプリントヘッド「S3200-S1」を市場投入したことをあげた。「S3200-S1」は、ペロブスカイト太陽電池などの先端分野におけるインクジェット技術の活用を加速させることになるという。

一方、2025年度通期(2025年4月~2026年3月)の業績見通しは、売上収益は前年比0.5%増の1兆3700億円、事業利益は同16.3%減750億円、営業利益は同16.1%減の630億円、税引前利益は同24.7%減の590億円、当期利益は同25.7%減の410億円とした。8月公表値に比べて、売上収益を300億円上方修正したほかは据え置いた。

「市況を厳しく見ている。商業・産業IJPでは需要回復の遅れがあり、プリントヘッドの外販や、完成品ビジネスのインクの需要を見直した一方で、マイクロデバイスなどの販売が好調であり、マニュファクチャリング関連・ウエアラブルは上方修正した」という。

オフィス・ホームプリンティングは、為替前提の見直しにより業績予想を上方修正。商業・産業プリンティングでは、商業・産業IJPの完成品の上期までの実績を踏まえて、インクの販売見通しを下方修正した。ビジュアルコミュニケーションは、中国などでの需要停滞を踏まえて、販売台数を引き下げるが、為替影響により売上収益とセグメント利益ともに据え置いた。マニュファクチャリング関連・ウエアラブルは、マイクロデバイスなどの販売が好調のため、売上収益とセグメント利益を上方修正した。

また、田社長は、「コロナ禍において、供給を優先したオペレーションにしていたことで、部品価格や変動費が上昇し、利益率が低下していた時期があった。
バリューチェーン全体の引き締めによって、改善を図っているところである。商品そのものの品質、性能は優れているが、シナジーを生み出す販売を、顧客接点をもとに、もっと増やしていく必要がある。商品を組み合わせたソリューション提案によって、利益向上を図りたい。それが、お客様の問題を解決することにもつながる」と語った。

2025年度のインクジェットプリンタ本体の販売台数は約1655万台を見込んでおり、そのうち、SOHO・ホーム向け大容量インクタンクモデルは約1330万台とし、構成比は、いよいよ80%を占めることになる。また、SOHO・ホーム向けインクカートリッジモデルは約285万台、オフィス共有IJPは約40万台の計画としている。

なお、2024年度のインクジェットプリンタ本体の販売台数は約1660万台。SOHO・ホーム向け大容量インクタンクモデルは約1310万台、SOHO・ホーム向けインクカートリッジモデルは約315万台、オフィス共有IJPは約35万台だった。

2025年度は、大容量インクタンクモデルやオフィス共有インクジェットプリンタの販売台数を増加させる一方、インクカートリッジモデルの販売台数を減少させる計画だ。

また、プロジェクターは、2025年度計画として約135万台を掲げている。2024年度実績は約155万台だった。
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