多くの大人たちを虜にする腕時計。部品の精巧さや機能性の素晴らしさを理解すると、腕時計の世界がもっと楽しくなるだろう。
そこでこの連載では、腕時計の初心者から長年のコレクターまで、知っておきたい腕時計の豆知識をクイズ形式でお届けする。
ヴァシュロン・コンスタンタンの時計、文字盤が斜めになっているのはなぜ?

ヴァシュロン・コンスタンタンの「ヒストリーク・アメリカン」というモデルは文字盤の向きが斜めになっています。その理由は何でしょう。

――正解は次のページへ


正解はこちら

【答え】運転中でも時間を見やすくするため

1900年初頭のアメリカでは、大衆車が登場し始め、どんどん自動車が普及していきます。同時に腕時計も家庭に普及し始め、そのころ「自動車を運転中に、見やすい時計を作ってほしい」という依頼で「ドライバーズウォッチ」が誕生しました。

ドライバーズウォッチの使命は、具体的に表現すると「ハンドルを握りながら、一瞬の確認で時刻を読み取りできること」です。そこでヴァシュロン・コンスタンタンは、ハンドルを握ることで傾いてしまう腕時計の角度を補正するために、ハンドルを握った左腕の腕時計の文字盤がちょうど読みやすい角度になるような時計を作りました。それが「ヒストリーク・アメリカン」です。

アメリカの作家で牧師のサミュエル・パークス・キャッドマンが、初代モデル(ヒストリークアメリカン1921)を2本所有していたとされています。彼はラジオ放送を通じて何百万もの聴衆に説教を行った初の人物であり、説教中にさりげなく時間を読み取るためにこの時計を選んだと考えられています。彼が所有していたうちの1本は現在、ヴァシュロン・コンスタンタンのヘリテージ・コレクションに収蔵されており、2021年に発表された3本の新作の着想源となった極めて希少なモデルです。

『トケイ通信』編集主幹&主筆 須川誠 株式会社コメ兵 商品部のエキスパート。
レア物から王道まで、腕時計を見つめ続けて19年。KOMEHYOが運営しているブログマガジン「トケイ通信」の編集長。記事内容の決定から執筆まで一人でカバーし、マニアが楽しく読めるツボをしっかり押さえていると、本当の時計好きから支持されている。専門性としては、「製品の良し悪しの判断」、「ムーブメント」、「真贋」などを得意とする。トケイ通信:https://www.komehyo.co.jp/tokei-tsushin/ 株式会社コメ兵:https://komehyo.jp/ この著者の記事一覧はこちら
編集部おすすめ