第19回朝日杯将棋オープン戦(主催:朝日新聞社・日本将棋連盟)は、本戦トーナメント1・2回戦の計3局が愛知県名古屋市の「ポートメッセなごや」で行われました。このうち、藤井聡太名人・竜王―菅井竜也八段の一戦は140手で藤井名人・竜王が勝利。
九死に一生の逆転劇で自身5度目となる大会制覇に向け前進しました。
○ファンが見守る早指し戦

16名で争われるトーナメントの1回戦、公開対局場には多くのファンが詰めかけ、対局者の一挙手一投足を見守ります。振り駒が行われた本局は先手の菅井八段がゴキゲン中飛車と穴熊を組み合わせる意欲策を披露。対する後手の藤井名人・竜王はコンパクトな陣形から大胆な飛車交換を決行し、浮き駒となっている先手の角を狙う方針で主導権を握りました。

飛車を敵陣に下ろしあって盤上は早くも終盤戦へ。桂得の実利を挙げた居飛車がわずかにリードとはいえ、持ち時間各40分の早指しでは何が起こるかわかりません。実戦は4筋の制空権をめぐる小競り合いのなかで菅井八段渾身の勝負手が炸裂します。攻めの要と思われた竜を切り飛ばしたのがそれで、一足先に敵玉にしがみつくことに成功し形勢は一気に振り飛車有利に。

○ファン唖然の逆転劇

中継放送備え付けのソフトは先手に90%近い勝率を示します。穴熊の終盤戦は速度計算が容易なことを加味すると菅井八段の勝利は時間の問題と思われましたが、ここに早指し戦特有の落とし穴が待っていました。秒に追われるがままに自陣に迫ると金を払ったのがつまずきの始まりで、先手玉にも王手がかかる形となって一気に局面の難易度が上がり混戦模様に。

その後も先手有利の時間は続きますが、一度離れた流れを再度手にするのはさすがの菅井八段をもってしても至難の業でした。
反対に辛抱強い受けで攻め疲れを誘った藤井名人・竜王の指し手はここから冴えわたります。ようやく手にした貴重な手番でタダ捨ての金を放ったのが華麗な反撃の決め手。いつの間にか攻守が逆転しており後手の一手勝ちが明らかです。

終局時刻は12時18分(対局開始10時0分)、最後は再逆転の見込みなしと認めた菅井八段が投了。絶体絶命のピンチをしのいだ格好の藤井名人・竜王ですが、逆転に向けた粘り強い受けが光る一局となりました。藤井名人・竜王は午後に行われた斎藤慎太郎八段との一戦も制してベスト4進出を決めています。

水留啓(将棋情報局)
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