CP+ 2026のシグマブースでは、発表したばかりの新レンズである「Sigma 15mm F1.4 DC | Contemporary」、「Sigma 35mm F1.4 DG II | Art」を展示。さらに、開発発表した「Sigma 85mm F1.2 DG | Art」も披露されていた。


そんなシグマブースで、今年も山木和人社長にインタビューを行い、新レンズや今後の製品展開、フルフレームFoveon開発の進捗状況、そしてカメラファンを驚かせた“米作り”について話を聞いた。

小型レンズの開発を明言、パンケーキレンズ?

今年のCP+にあわせて発表された新レンズは、F1.4とF1.2という大口径レンズが3本。もともと同社にはF1.4の単焦点レンズのラインナップがあり、新技術によってより高画質になるなどの特徴が出せるようになった段階でリニューアルする方針をとってきた。そして、これまでの35mm、50mmというF1.2レンズに加わるレンズとして85mm F1.2が開発発表され、F1.2レンズのラインナップが拡充された。

山木社長は、交換レンズのトレンドとして「明るいだけでなく、今までになかったような特徴がないと売れない」と指摘。最近は、ソーシャルメディアの影響もあってか、話題になったレンズは一定の売上になるが、一方で話題にならないレンズは売れないという「極端な動き」があるという。

そうした状況下において、シグマとしてはさまざまな切り口で新鮮さを提案して、ユーザーの用途やニーズなどを想定してラインナップを拡充している。

個人的なニーズとして聞いてみたのがパンケーキレンズ。コンパクトでフラットなSIGMA fpやSigma BFにとって、明るくて高画質だが大きいレンズだけでなく、よりコンパクトなレンズには一定のニーズがあるはず。山木社長も、SIGMA fpにはAPS-C用でコンパクトな「18-50mm F2.8 DC DN」を装着しているという。

この点について、山木社長は「小型レンズは開発している」とコメント。「パンケーキレンズ」という言葉は定義次第ということで、そこまで言い切れるレンズになるかは不明だが、小型化のために画質や明るさを犠牲にするのではなく、「現代のレンズとしてちゃんと使えるものにする」というのが山木社長の考え。
最近のソフトウェア面での技術の発展も踏まえ、シグマらしい高画質を保ちつつ、SIGMA fpにも最適なコンパクトなレンズの登場を期待したい。

コンパクトなレンズと言えば、最近は中国のスマートフォンメーカーを中心にカメラメーカーとの協業が多い。Xiaomiがライカブランドのスマートフォンを発表したばかりだが、他にもOPPOとHasselblad、realmeとRICOH GRといった具合だ。ソニーは、自社のXperiaとαで連携しているが、日本にはカメラ・レンズメーカーが多く、レンズメーカーとしてシグマもスマートフォンレンズの開発はありえるのだろうか?

山木社長は、モバイル向けレンズユニットそのものは市場としては大きいとしつつも、シグマとしてその分野に明確な強みがあるわけではないとして、参入は難しいとの見解を示した。ブランドライセンスによるビジネスに関しても、今はシグマブランドの構築途上であり、ライカのようになるには「まだまだ早い」というのが山木社長の認識だ。ちなみに、モバイル向けに関する問い合わせレベルでは、シグマにも話が来たことがあったそうだ。
フルフレームFoveonの開発は「次の段階」に?

毎年恒例となっている「フルフレームFoveon」についても話を聞いた。エンジニアを配置してプロジェクトとしては継続しており、確実な進捗はあるようだ。

とはいえ、いまだ技術開発中のままで「(間もなく)製品化とか、勇ましい、いい報告はできない」と山木社長。協力会社の製造ラインを使っているため、ウエハーの製造を頻繁に行えるわけではなく、解析して問題に対応し改めてウエハーを作るといった開発を繰り返すにはどうしても時間が必要になるという。

それでも「昨年から比べると進歩はしていて、問題点は狭まってきている」(山木社長)。その結果、「もしかしたら今年中に次の段階に進めるかもしれない」と山木社長は期待をにじませる。
現在は、ピクセル構造に関する技術開発の段階だが、「次の段階」とは実際にフルサイズのセンサーを製造するフェーズを指す。そのうえでさらに開発が続くため、製品化が間近というわけではないのだが、実現すれば大きな前進であることは間違いなさそうだ。

山木社長は「なんとか(フルフレームFoveon搭載カメラを)世の中に出していきたい」と強調する。あくまで研究開発であり、市場性やニーズなど、製品が受け入れられるかも判断することになるからだ。市場投入においては「現代において、価値のあるものとして出していけるかも重要なポイントになる」と山木社長は話す。
Sigma BFの成功はこの1年が勝負、SIGMA fpシリーズは継続する

昨年のCP+の話題をさらった「Sigma BF」。アルミインゴットからの削り出しによるボディは製造に時間がかかり、キャパシティが限られていることから、現時点でもバックオーダーを抱えているという。

これまでのところ「反応はよく、カメラ好きでいろいろなカメラを使っている人だけでなく、スマートフォンしか使っていなくて初めてカメラを買ったという人もいて、シグマのユーザー層が広がった」と山木社長は語る。

現代のデジタルカメラとして、イチから構成を検討したUIは、「最初は戸惑ったけど慣れたら楽だし分かりやすい、ロジカルなUI」といった評価で、キビキビと動作してストリートスナップで撮影体験が楽しいといった声が寄せられているという。

とはいえ、生産が追いついていないため、本当に成功と見なせるかどうかはまだ分からないというのが山木社長の考え。「Sigma BFのUIが評価されて、カメラ業界の1つのあり方として定着するかは、むしろこの1年が勝負」。山木社長はそう強調し、継続して関心を持ってもらえるかどうかが鍵になると分析している。


ところで、現在のところ同社のカメラはSigma BFのみだが、生産終了したSIGMA fpシリーズもブースに展示されており、根強い人気をうかがわせた。

山木社長自身はfpの生産を継続したかったそうだが、一部の部品の在庫がなくなってしまったことから生産終了を余儀なくされた。部品メーカーが製造を終了したためで、多めに見積もって注文していたものの足りなくなったのだという。SIGMA fpは、一度落ち込んだ需要が途中で盛り返し、想定以上の販売となった時期があったため、結果として早期にそのキーコンポーネントの在庫がなくなり、製造継続が困難になったようだ。

しかし、こうした経緯から生産終了となったものの、SIGMA fpシリーズにはユーザーコミュニティがあり、SIGMA fpでの写真を楽しんでいるという強みもある。山木社長は、こうしたコミュニティを大切に育てていきたいと話し、今後もSIGMA fpシリーズを継続して開発していきたい考えを示している。
“シグマの米”が食べられる日が来るか

SIGMA fpだけでなく「米」も育てていくという驚きの発表が先日あったので、こちらも尋ねてみた。シグマが農業法人を設立して米づくりをしていくというものだが、「新規事業にするわけではない」と山木社長は話す。

目的は、耕作放棄地の増加を防ぐことなのだという。シグマが工場を構える福島県会津地方は、少子高齢化で農業の担い手が減っていて、耕作放棄地が増えているそうだ。同社の会津工場は、磐梯山と会津盆地の合間にある磐梯町に位置しており、大規模農地化が難しい土地なのだという。

それでも水田が失われると、土砂災害の発生や、害虫やクマ、イノシシの出没など、さまざまな問題が発生しうる。
そのため、里山の風景を守り、荒れ地の増加を防ぐ目的があった。

山木社長が「3年ぐらい前に思いついて青写真を描いていた」という取り組みで、大赤字にならなければ継続し、収穫した米は同社の社員食堂で提供することにした。

こうした背景から、規模拡大や事業化によって黒字化を目指す方向性ではないという。しかし、試算してみると社員食堂で消費される以上の米が収穫できる見込みで、その場合は何らか形での販売なども検討するという。そのうち“シグマ米”を食べられる日がやってきそうだ。

山木社長は「自分たちができる範囲の、今風に言えばサステナブル経営の一環」と話し、CSR活動として他社にも同様の取り組みが広がることにも期待を寄せていた。

小山安博 こやまやすひろ マイナビニュースの編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。最近は決済に関する取材に力を入れる。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、PC、スマートフォン……たいてい何か新しいものを欲しがっている。 この著者の記事一覧はこちら
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