「フォームファクター」とは、コンピュータやマザーボードのサイズ、デザインなどを示す用語をいう。古くは、IBM PC-ATのマザーボードをベースとして、そのバリエーションをフォームファクターと呼んだ。
マザーボードのフォームファクターは、電源やケースの形状に条件があり、マザーボードの大きさでケースのサイズ(主に底面積)が決まった。
時代が進み、液晶技術や低消費電力のCPUなどの技術開発で、バッテリ駆動可能なコンピュータの製造が可能になると、さまざまな形状のコンピュータが登場した。これを分類するために「後付け」で生まれた定義が、フォームファクターである。

いまでは、フォームファクターは、PC以外も含むコンピュータ全般のサイズやデザインを表す言葉になった(表01)。1982年のHC-20(エプソン)やその後継機種、1983年のTRS-80 model 100(Tandy)、PC-8201(NEC)、FP-200(カシオ)、X-07(キヤノン)などだ。これらは、比較的大きな液晶(ただし、解像度は低くテキスト20桁×4行程度)とフルサイズに近いキートップを持っていて、底面積がA4サイズ程度の大きさだった。

このほかには、キーを小さくし、奥行きを短くしたB5サイズのJR-800(松下電器産業。現パナソニック)や、構造としてはクラムシェルとなるAtari Portfolio(米国Atari社)、Poqet PC(Poqet Computer Corporation。のちに富士通に買収される)、HP 95LX(Hewlett Packard)とその後継機、などが登場する。構造としてクラムシェルとなることで、液晶の大型化とコンパクト性を両立させた。ただし、キーボードに関しては、小さなキートップのものを採用している。この分野に属するものに、欧米など1バイトコード圏で販売されたElectronic organizerがある。
国内では、同様の製品は、漢字入力を可能にした電子手帳が開発されるまでは、あまり普及しなかった。

ハンドヘルドというと、1行液晶と小さいなキートップを組み合わせたものも登場するが、電卓系から発展し、同様の構造を持つ「ポケット」サイズのグループに統合されていく。この分野、日本のシャープ、カシオが2大巨頭であり、両者から多数のプログラミング可能なマシンが登場した。国内では、特に「ポケコン」(ポケット・コンピュータ)と呼ぶことが多い。

米国でIBM PC互換機が標準的になると、これをラップトップ化したものが登場する。最初のIBM PC互換クラムシェルラップトップは、1984年に発表されたDG-1(Data General社)だったが、当時のIBM PC互換機が採用していなかった3.5インチフロッピーを採用したことで、売上がさほど伸びなかったと言われている。翌1985年には、東芝が同じく3.5インチフロッピーを採用したT1100を導入する。T-1100は、液晶な標準I/Oなど、DG/1の問題点を克服しており、主に欧州で販売が行われた。

現在では、クラムシェルというとバッテリ駆動が可能なモバイルコンピュータというイメージが定着しているが、初期のクラムシェルは、必ずしもバッテリ駆動ができたわけではなかった。特に、IBM PC、IBM PC AT互換機では、CPUやチップセット、メモリ、周辺チップ、表示装置などが低消費電力化するまでは、デスクトップマシンと比較して性能が劣り、出先でACに接続して使うという使い方が一般的だった。

コンピュータの大きさやデザイン、構造などに一定の関係があることから、フォームファクターには、これらの定義が混在した表記が取り込まれた。たとえば、クラムシェルは一般的には液晶部を閉じられる構造をさすが、たいていの場合、ノートPC(ラップトップ)と同義語となる。
また、フォームファクターの定義や範囲は時代とともに変化する。たとえば、かつては、PC本体とキーボードが一体になったもの(PC-8001など)が普通だった。しかし、配置が固定されてしまうことから、PC本体とキーボードを分離した「セパレート型」が普及した。また、8 bit CPUマシンの時代、ディスプレイ、キーボードと本体を組み合わせた構造は珍しくなかったが、これをAll In Oneという表現することはなく、近年、液晶モニタと本体の組み合わせ(キーボードはセパレート)をAll In Oneと呼ぶようになった。

タブレットには、キーボードが分離できる2 in 1(デタッチャブル)、キーボード部が360度回転する「コンバーチブル」、キーボード部のないピュアタブレットなどがあるが、フォームファクターという点では、一括してタブレットと呼ばれることが多い。また、6インチあたりの小型のタブレットは、いまでは、ほとんどがスマートフォンになってしまっている。

今回のタイトルネタは、グレアム・グリーンの小説「ヒューマン・ファクター」(Henry Graham Greene OM CH,The Human Factor,1978)である。同じ2重スパイを扱いながら、ル・カレの「カーラ三部作」(ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ。スクールボーイ閣下。スマイリーと仲間たち)に比べて内省的で対称的な位置づけにある。
編集部おすすめ