ヒューリック杯第97期棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)は藤井聡太棋聖への挑戦権を争う決勝トーナメントが進行中。3月31日(火)には1回戦の永瀬拓矢九段―高見泰地七段の一戦が東京・将棋会館で行われました。
対局の結果、相掛かりの終盤戦で逆転に成功した高見七段が167手で勝利。対永瀬戦13戦目にして待望の初勝利を挙げています。
○有終の美はどちらに

ともに今年度最後となる対局。勝数ランキングで伊藤匠二冠と並び今期46勝(藤井聡太六冠は42勝)で首位につける永瀬九段が勝って単独1位に躍り出るか注目が集まります。振り駒が行われた本局は高見七段の先手で相掛かりへ。駒組みのすえ盤上は相雁木の持久戦へと落ち着き、このあと自陣角を打った高見七段が積極的に仕掛けて局面が動き出しました。

先に形勢をリードしたのは後手の永瀬九段。相手の手に乗る形で淡々と受け続け、機を見て玉を四段目に逃げ出したのが自然な指し回しでした。派手な妙手こそないものの、着実に先手の攻め駒から逃れた図は中央の厚みが大きく、先手から手が出しづらい格好です。AIが示す期待勝率も80%を超え、このまま永瀬九段が勝ち切るのは時間の問題かと思われました。

○執念の逆転勝利

劣勢が続く先手の高見七段ですが、この日は駒損の状況においても決着を急がない不屈の指し回しが幸運を呼び込むことに。派手な反撃筋は我慢してすべてを相手にゆだねた銀引きが隠れた勝着です。
一方の永瀬九段としては先手玉を寄せる最短ルートの角捨てを読んでいたものの、優勢の時間が長かっただけにリスクを取りづらかったことが災いしました。

一瞬のスキを突いて中央の勢力奪回に成功した高見七段は鋭い攻めで後手玉を追い詰めます。終局時刻は20時12分、最後は自玉の詰みを認めた永瀬九段が投了。2014年の初手合い以来、永瀬九段と12戦して全敗と辛酸をなめた高見七段ですが、うれしい初勝利となりました。この結果にファンも「魂の大逆転」「棋譜見たら涙出てきた」と思いを語りました。

水留啓(将棋情報局)
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