みなさんはキーボードにこだわっていますか? ノートPCならともかく、デスクトップPCでは最初から付属してきたものをずっと使っているという人が多いかもしれません。しかし、キーボードを延々と叩く仕事をしているフリーライターや編集者がよく選ぶ機種があるんです(それ以外のプログラマーさんとかもいらっしゃるとは思いますが、そういう方が周囲にいないので断言は避けます)。
それが東プレが販売する日本製最高級ブランドREALFORCEシリーズ。静電容量無接点という方式が最高の打鍵感を与えてくれるキーボードであり、一度タイプしたら虜になる人が続出しているのです。

REALFORCEに取り憑かれた者たち

かくいう私もその一人で、20年ほど前にサンプルで届いた「REALFORCE 108UH-S」に触れたところ、静電容量無接点方式によるあまりにも気持ちいい打鍵感に一瞬で魅了され、帰りにヨドバシへ行って買ったという思い出があります。そしてそのまま20年使い続けているのです。静電容量無接点方式というのは、キーを押し込むだけ、つまり奥のスイッチを押すといった物理的接触なしでタイピングができる構造になっています。これが独特の超がつくほど滑らかな打鍵感を生むうえ、長時間の使用でも疲れにくいのです。さらに物理的な接点がないためスイッチ寿命が1億回以上という高い耐久性と長寿命を誇っています。

さすがに乗り替えたいがR2のスペースキーはダメだっ!

とはいえ使い始めて10年ほど経った頃でしょうか、それだけの期間使っていればどうしても劣化が起きます。汚れを取るためキートップを外して洗うと滑らかさがわずかながら失われますし、静電容量無接点方式といえどキーの戻りを支えるゴム製のラバードームは長期間の酷使によって少しずつ弾力が失われ、新品時の「スコスコ」とした軽快な反発は、徐々に影を潜めていきました。

そろそろ買い替え時か……。そう考え、次世代モデルである「REALFORCE R2」のラインナップを見た時、キー配置に大きな衝撃を受けました。それがREALFORCE初代ユーザーの間では未だに問題視されているスペースキーの長さです。


R2では多くのモデルでスペースキーが大型化されました。しかし、長年108配列の「短いスペースキー」に指が慣れきっていた私には受け入れがたいものでした。具体的には手をホームポジションに置いたときに、自然と左手の親指がスペースキーに、右手の親指が「変換」キーにスッと乗せられる位置から、右手の親指をかなり内側に折り込まないとタイプできない位置に変わっていたのです。

しかしさらに数年が経ち、さすがに初代REALFORCEのタイプ感がスコスコからカクカクという感じになったいま思ったのです。このまま初代と心中するのか? 壊れたときにどうする? いまのうちに乗り換えて体を慣らしたほうがいいのではないのか? と。そんなときR3Sにてスペースキーが初代ほどではないが短くなったというニュースが入りました。初代ユーザー達の不満に応えてくれたのでしょう。東プレが妥協してくれたのなら俺も妥協せねば。そんな気持ちもあり、R3Sの購入をしてもいいという気持ちになりました。とはいえそこから数年は我慢していましたけど。
購入したREALFORCE R3Sのスペックは?

今回購入したのは、フルキーのブラックモデルで、静音タイプ。キーは変荷重。
以前使っていたモデルはオール45gだったので合わせてもよかったのですけれど、変荷重という未知の領域への好奇心なんてかっこ良くも言えますが、実際に心に浮かんでいたのは「変荷重ってなんかかっこいいよね」という子供じみた理由でした。最新のR4という選択肢もありましたが、マウスはともかくキーボードはワイヤードであることの信頼性を求めたためR3Sということに。

実際に使ってみた感覚は?

まず、使い始めて最初にチェックしたのは、スペースバーの長さです。初代は「V」の真ん中あたりから「N」の真ん中あたりまでというキー2個分強の長さだったのが、R3Sでは「C」の右端から「M」の左端までとキー3個分強という感じです。これでホームポジションに手を置くと右手の親指が5mmほど内側に入る必要があります。わずか5mm、されど5mm。数回タイプする程度なら問題はなかったのですが、長時間になると少し違和感を覚えるように。とはいえ慣れねばなりません。もう初代はないのですから。実際の指位置としては、いままで変換キーの上に乗せていた指が5mm内側に入り込み変換キーの左下の角に当たるような感じです。これならば十分慣れていけるでしょう。

そうなればあとは書くだけです。
静電容量無接点方式の軽いタッチと新品ということでへたっていないラバードームの心地よい反発が帰ってきました。心なしかミスタイプも減った気がします。

さて、キーの変荷重についても語りましょう。まず先に変荷重とはなにか。一般的なキーボードは、どのキーを押しても同じ重さ(荷重)に設定されています。しかし、REALFORCEの変荷重モデルは、人差し指で押す中心部のキーは「45g」、小指で押す外周部のキーは「30g」といった具合に、指の力に合わせてキーの重さが段階的に変えられています。

これが、「一日中キーボードを叩く人種」には劇的な差となって現れます。タイピングにおいて、一番非力な小指に、人差し指と同じ負担を強いるのは実は過酷なこと。それをキーボード側の配慮で「小指のキーだけ軽く」してくれているわけです。

一番実感したのが「CTRL+C」「CTRL+V」といったショートカット操作でした。以前は何回か行っていると小指がちょっと辛いなという感覚があったのですが、R3Sではまったくありません。30gという軽さはここまでラクなのかと思わされました。
今後長時間タイプしていく間には、左の「A」付近や右の「:」付近をタイプする小指を守ってくれることでしょう。
APCについて

ちなみに、R3Sには「APC(アクチュエーションポイントチェンジャー)」という、キーがどこまで押し込まれたときに反応するのかを変更できる機能が搭載されています。これは0.8/1.5/2.3/3.0mmに設定できます。一括でキー全体を変更できるのは当然として、専用ソフトを使用すれば個別にも設定可能です。

ひとまず右上のAPC変更ボタンで一括変更してみます。結果は……正直なところ違いがわかりませんでした。どうも、PCを使い続けて数十年の自分はキーを奥まで叩く癖が抜けないようです。長く使っていけばわかるかもしれないので、今後一定期間ごとに変更してみることとしましょう。

スペースキーの長さに悩み、東プレの歩み寄りに自らの妥協も加えて手に入れたR3S。
搭載されている機能すべてを使いこなせているわけではありませんが、それでもホームポジションに指を置いたときの安心感と、変荷重がもたらす小指への優しさは、間違いなく「次の20年」を託すに値するものでした。

初代REALFORCEが教えてくれた「タイプする喜び」を、これからはこのR3Sでさらに高めていきます。カクカクになった初代をようやく休ませてあげられる。
そんな安堵感と共に、今日も私は「スコスコ」と軽快な音を響かせています。
編集部おすすめ