「明朝体」を知っていますか?
日本で暮らしていれば、意識するしないに関わらず、おそらくだれもが目にしたことのあるフォントが明朝体です。私たちの暮らしや文化と密接に関わっている明朝体ですが、みなさんが抱くイメージはどのようなものでしょうか。
まじめ? ちょっと堅い? 上品? 読みやすい?
あるいは、読みづらいというイメージを持っている人もいるかもしれません。
いずれにしても、「オーソドックス」「スタンダード」という印象が強いのではないでしょうか。それはきっと、明治のはじめから、日本では明朝体が書籍の本文書体として多く用いられてきたからでしょう。
いま、そんな「明朝体」のみをテーマにした展示が注目を集めています。扱っているのは文字だけ、それも「明朝体」だけ。なのにどうして、そんなに盛り上がっているのでしょうか。その魅力を探りました。
なぜいま「明朝体」なのか?
東京都新宿区。市ヶ谷駅から徒歩15分ほどの場所に、大正時代の建物を竣工当時の姿に復元した「市谷の杜 本と活字館」があります。
レトロな建築が目を引くここは、もともとは書籍や雑誌を数多く製造してきた大日本印刷・市谷工場の一部でした。2021年2月に活版印刷をはじめとした印刷・製本・紙加工が体験できる本づくりの文化施設として生まれ変わり、以来、それにまつわるテーマで企画展を行なってきました。今回取材する「明朝体展」も、そのひとつです。
企画展担当者の佐々木愛さんに案内してもらいました。
企画展示室は、建物の2階にあります。階段をのぼると正面に、展示室入口のあいさつ文のパネルと、天井から吊り下げられた色とりどりの文字が目に飛び込んできます。「明朝体展」ですから、ビジュアルは文字だけ!
渋い雰囲気を想像していたら、予想外のポップな雰囲気に目を奪われます。展示グラフィックは、「文字を解体し、組み合わせ、再構築することによって、新しい文字の概念を探る実験的タイポグラフィ集団」大日本タイポ組合です。
それにしても、佐々木さんはなぜ今回、明朝体だけの展示を企画したのでしょうか?
「当館を運営している大日本印刷は、今年2026年で150周年を迎えます。当社には『秀英体』という明治生まれのオリジナル書体があり、『明朝体の二大潮流』のひとつといわれています。『明朝体』の歴史をたどることは、すなわち『秀英体』の歴史をたどることにもなるのではと思い、日本にたくさんある明朝体を集めた展示を企画しました」
企画展タイトルは、ずばり「明朝体」。サブタイトルもなにもついていません。
ちなみに前回の企画展は「あつまれキラキラ★百箔繚乱」。ほかにもこれまでの企画展タイトルを見ると、「FANTASTIC! プロセスインキ」「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」「杜の小さな印刷工房 ―刷ったり押したり失敗したり―」など、装飾的なタイトルが並んでいます。
しかし今回は「明朝体」、ただ一言。
「今回の企画展は慶應義塾大学の岡田一祐先生に監修に入っていただいているんですが、タイトルは岡田先生の『「明朝体」がよいのでは?』の一言で決まりました。最初は『明朝体フォーエバー』という仮タイトルを、ダサいよねえとか言いながらつけていたんですが、言われてみると『明朝体』が一番わかりやすいのかなと」(佐々木さん)
確かに、「明朝体」と言われてまったくイメージがわかない人は、あまりいないかもしれません。
入口のパネルには、タイトルやスタッフクレジットとともに、企画趣旨のあいさつ文が載っています。ふむふむ……と読むうちに、なにかがおかしい、と気がつきました。見ていてなんだかモゾモゾする。1行ごとに、ちょっとずつ文字の太さや形が違うような気がする……。
「そうなんです。1行ごとに、全部違う明朝体が使われているんです」
1行ごとに全部違う明朝体!
ここで「えっ?」と思った方もいるのではないでしょうか。
「明朝体って1種類じゃないの?」と。
違います。実は、展示に登場する明朝体だけで400種類以上あるのです。
明朝体展のあいさつ文は全19行。つまり、ここだけで19種類の明朝体が使われていることになります (ちなみに、スタッフクレジットはまた別の明朝体です) 。
この明朝体展で佐々木さんがみなさんに伝えたかったことは、ずばりこれです。
「明朝体は、いっぱいあるんだよ」
それを知って帰ってもらえたら、というのがこの企画の趣旨です。
あいさつ文のパネルだけで、本稿の文字数をこんなに使ってしまいました。筆者もびっくりです。しかし、あいさつ文からすでに、そのデザインを通して「明朝体は1種類じゃない」ことを雄弁に語っているのですから、スルーするわけにはいきません。
意外と難しい「明朝体パズル」で、細部のデザインのこだわりを知る
さて、やっと展示室に足を踏み入れました。
あらためて、「明朝体」とはなんでしょうか。
入ってすぐのパネルが、そのことを教えてくれます。
〈手書きよりも線が水平・垂直で、横画の右端に三角 (ウロコ) がついていて、ハネやハライの先端が、筆で書いたように細くなっています〉
「明朝体」というのは、あくまでもスタイルの名前です。他にも「ゴシック体」「丸ゴシック体」「教科書体」「楷書体」などがありますが、それらはすべてスタイル名です。
それを体験できる「明朝体パズル」が、最初の展示台にあります。
「永」の字がずらりと並んでいます。文字部分がくり抜かれ、書体名が書かれた白いパーツにぴったりはまるものを、下の黒バックのパーツから探してはめ込むパズルです。「全部同じ『永』じゃないか!」と思うかもしれませんが、よく観察してみてください。パーツ (文字のパーツのことを「エレメント」と呼びます) のひとつひとつに特徴があります。
たとえば「丶 (テン)」は、特徴が出やすいエレメントのひとつです。ぽってりと丸いのか、薄いのか、すこし三角っぽいのか。長いのか、短いのか、角度は? そうやって見ていくと、ひとつひとつ形が違うことがわかってきます。
よし、わかった。これとこれがペアでしょう! そう確信してはめてみると……。
あれっ、はまらない! テンの形はよく似ていても、他のエレメントの形が違うようです。
ぴったりはまりました!
つまり明朝体は、どれも同じように見えても、実は細部が異なり、そうした細部の積み重ねによってそれぞれの書体のデザインが形作られているのだということがわかります。奥が深い……!
ふと気がつくと、我々はまだ展示室に一歩足を踏み入れただけなのに、ずいぶんと時間が経っていました。入口のあいさつ文と明朝体パズルだけで、ここまで楽しめる明朝体展、恐るべし。
次回はいよいよ、展示の中身を見ていきましょう!
(第2回に続く)
写真:杉浦志保(編集部)・雪 朱里
○【市谷の杜 本と活字館 企画展「明朝体」】
会期:2026年2月21日(土)~2026年5月31日(日)
監修:岡田一祐 (慶應義塾大学)
編集協力:雪 朱里
協力:翁秀梅、Hong Kong Open Printshop Limited、Monotype株式会社、株式会社SCREENグラフィックソリューションズ、アドビ株式会社、一般財団法人印刷図書館、株式会社イワタ、株式会社写研、株式会社モリサワ
展示デザイン:中沢仁美、大重頼士 (シービーケー)
グラフィック:大日本タイポ組合
主催:市谷の杜 本と活字館
●市谷の杜 本と活字館
東京都新宿区市谷加賀町1-1-1(大日本印刷)
開館時間:10:00~18:00休館:月曜・火曜 (祝日の場合は開館)
入場無料
https://ichigaya-letterpress.jp/
Instagram :@ichigaya_letterpress











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