藤井聡太名人に糸谷哲郎八段が挑戦する第84期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は第1局が4月8日(水)・9日(木)に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われました。対局の結果、横歩取り模様の力戦から抜け出した藤井名人が136手で勝利。
糸谷流の勝負術をかいくぐって4連覇に向け好スタートを切っています。
○盤上に花を

タイトル戦の舞台では初対戦となる両者。前夜祭で「盤上に花を咲かせ続けたい」と意気込んだ糸谷八段は対局開始早々からオリジナリティを披露します。初手から連続で1筋の端歩を突いて位を取ったのは「南禅寺の決戦」を戦った阪田三吉を彷彿させる序盤術で、これを見たファンも大いに盛り上がります。盤上は力戦調の横歩取り模様に落ち着きました。

前例のない中盤戦を前に両者手探りのまま2日目に突入。玉の囲いもままならないうちから飛車を大きく活用したのが糸谷八段らしい元気いっぱいの指し回しでした。とはいえ後手の藤井名人も歩得をはじめとして着実にポイントを挙げており、局面は玉の安定度で優る後手がいかに手を作るかが焦点になっています。両者残り1時間を切って盤上は終盤戦へ。

○終わってみればの快勝譜

形勢は後手有利とはいえ決め手がないまま長期戦へ。中段に飛び出した飛車を捕獲された局面はわずかに変調かとも思われましたが、ここで藤井名人は読み切りの決め手を用意していました。歩頭に桂をねじ込んで飛車の救出を図ったのがそれで、左辺に打った先手の銀を空振りさせることに成功。
糸谷八段は局後、この桂捨てをうっかりしたと語りました。

長い神経戦を抜け出した藤井名人は着実な寄せで先手玉を仕留めにかかります。終局時刻は21時5分、最後は自玉の受けなしを認めた糸谷八段の投了で藤井名人の開幕勝利が決まりました。糸谷流の序盤術に巻き込まれながらも終わってみればいわゆる評価値の「藤井曲線」を完成させた藤井名人は「飛車が生還して指しやすくなった」と一局を振り返りました。

藤井名人の先手番で迎える第2局は4月25日(土)・26日(日)に青森県青森市の「ホテル青森」で行われます。

水留啓(将棋情報局)
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