地球環境に配慮した持続的社会の構築に向け、官民両セクター連携による多様な取り組みが進んでいる。2026年3月に宮城県/ENEOS/三井住友銀行/吉川油脂の4者によって「家庭用廃食用油の回収・再資源化に向けた実証事業の実施に関する協定」が締結され、宮城県庁において締結式が開催された。
本記事ではその模様をレポートする。

○4者の役割分担で廃食用油からバイオ燃料を生み出す

締結式には宮城県の村井嘉浩知事、ENEOSからバイオ燃料部長の今朝丸研一郎氏、三井住友銀行から法人戦略部長の高橋伸明氏、吉川油脂から代表取締役の吉川千福氏が出席した。

締結式に先立ち、まずは県担当者から今回の協定の概要が紹介された。同協定は家庭で使われた使用済み食用油を回収し、航空燃料等として用いるバイオ燃料に再資源化することで、一般廃棄物の排出量削減に貢献するとともに、持続可能な社会づくりへの寄与を目的としたもの。4者が実施主体となり、それぞれの役割としては、宮城県が県民への周知や回収店舗等の立地に関する市町村との調整、ENEOSが回収された廃食用油の再資源化、三井住友銀行は全体コーディネートと協力事業者掘り起こし、そして吉川油脂は廃食用油の回収・運搬・リサイクルとENEOSへの引き渡しを担う。

実証事業の実施体制フローは、まず一般家庭で使われた食用油をスーパーやマンション、金融機関その他に設置される回収拠点までペットボトルで運んできてもらい、回収された廃食用油を吉川油脂をはじめとする回収事業者がENEOSの製造施設に運搬して、再資源化するという流れになる。ENEOSでは、将来的なSAF(Sustainable Aviation Fuel、持続可能な航空燃料)の製造を見据え、航空燃料としての活用を図る方針だ。回収は4月1日にスタートしている。

○県民・事業者を巻き込み持続可能社会実現への貢献を目指す

概要説明の後、協定書の署名に移り、4氏がそれぞれ署名を行った。署名に続き、各出席者が本協定について語った。最初に村井知事は次のように話した。

協定書への署名を行う、左から三井住友銀行の高橋氏、宮城県の村井知事、ENEOSの今朝丸氏、吉川油脂の吉川氏

「日本では毎年約10万トン以上の家庭から出る使用済みの油が廃棄され、その大部分は燃えるゴミとして捨てられています。
いまこの廃食用油が持続可能な航空燃料の原料として注目されています。これまでゴミとして捨てられていたものを大切な資源に生まれ変わらせる今回の取り組みは、地球環境を守り、廃棄物を減らしていく観点から、本県の環境施策を推進していくうえで重要な一歩になると考えています。
本実証事業は、事業者が市町村ごとに行っていた煩雑な調整を県がハブとなり一括で行うことで、事業者や市町村の負担を抑えながら、リサイクルの取り組みをスピーディーかつより多くの地域で展開できる画期的な仕組みで、本県の課題である一般廃棄物の排出量削減やリサイクル率向上につながる、官民双方にとってWIN-WINの取り組みです。今後さらに多くの企業や店舗に参画いただきながら、県民の皆様にもリサイクルの一翼を担っていただく取り組みとして、県全体に広がっていくことを期待しています」

続いてENEOSの今朝丸氏がこう語った。

「廃食用油は、航空分野の脱炭素化を進めるうえで極めて重要な選択肢となるSAFの有力な原料として国内外で大きな注目を集めています。航空機は、現時点では自動車のように電動化や水素化が非常に難しく、CO2削減には燃料そのものを低炭素化していくことが不可欠。SAFはこの課題に対応し得る現実的かつ即効性のある手段として、社会実装に向けた取り組みが強く求められています。
今回の実証事業は、廃食用油を地域に根差した資源と位置付けて回収し、官・民・金融機関が連携して循環させていくという先進的で意義深い取り組みで、宮城県が中心となって関係者を結び付けながら広域にわたり展開していく仕組みは、今後の資源循環やSAF原料確保のモデルケースになり得ると感じています。ENEOSとしては、将来的にSAFをはじめとするバイオ燃料に再資源化していくことを通じ、航空分野の脱炭素化、資源循環型社会の実現に貢献していきたいと考えています。本実証事業を機に『油は資源』という認識が県民・事業者に広く浸透し、廃食用油利活用の輪が宮城県から広がっていくことを期待しています」

このほか、高橋氏は「三井住友銀行は社会課題解決を経営戦略の中心に据えており、宮城県とサステナビリティの議論を進める中、SAFの話を紹介したところが本プロジェクトの端緒になりました」と今回の協定に至る経緯を説明。同行としても仙台支店に回収ボックスを設置していること、回収拠点拡大や参画プレイヤー拡大に向け取り組んでいくことなどを明かした。

また吉川油脂の吉川氏は「現在、事業用の廃食用油は年間40万トン、96%と非常に高いリサイクル率になっている一方、家庭の廃食用油はたった4%。
この原因として、回収・リサイクル業者の体力や規模感が小さいこと、家庭の廃食用油はリサイクルできると周知する発信が少ないことがあると考えています」と現状を指摘し、「食用油のリサイクルを知っていただき、貴重な資源としてワンチームで取り組んでいくことを期待しています」と結んだ。

○廃食用油が資源になるという理解と意識醸成がポイントに

続いて報道機関からの質疑応答が行われ、その中でSAF製造プラントについては和歌山県の同社製油所跡地への建設を計画しており、2028年度以降の稼働を目指していることが明かされた。

また、ENEOSの立場で現時点において課題に感じていることとしては「やはり、家庭で使用した油が資源であるという意識をどの程度向上できるかが課題。本実証事業を通じ、広報活動にも力を入れながら、家庭の廃食用油が航空燃料になり得るという理解を図っていきたいと考えています」と語った。

この4者の取り組みが今後一層拡大し、実を結んでいくことを強く期待したい。
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