しかし、日本で見られるガナッシュを挟んだ色とりどりのマカロンは、パリのお菓子職人がアレンジを加えて生みだした「マカロン・パリジャン」と呼ばれる比較的新しいものであることをご存じでしょうか。
フランスの地方には、それぞれ独自のマカロンがあり、「元祖」と呼ばれるマカロンが生まれたのが、ロレーヌ地方の都市・ナンシー。アールヌーヴォー発祥の地としても知られ、街の象徴である豪奢な広場「スタニスラス広場」は世界遺産にも登録されています。
マカロンの原型は、8世紀に生まれたイタリアの修道僧のおへそをかたどった「マカローネ」というお菓子だといわれています。
お菓子と食事の区別のなかった当時、味に関係なく生地自体が「マカローネ」と呼ばれていましたが、のちに甘くないものは「マカロニ」、甘いものは「マカロン」と呼ばれるようになったのだとか。
それがフランスに伝わったのは16世紀、イタリア・フィレンツェのカトリーヌ・ド・メディシスがアンリ2世と結婚した際に、マカロンのレシピがフランスに持ち込まれました。
ナンシーでマカロンが広まったのは18世紀、フランス革命の火に追われた修道女が、かくまってくれたお礼にとマカロンを振る舞い、レシピを伝え、売り出すことを手伝ってからのこと。そのマカロンはたちまち評判となり、「マカロン・ド・ナンシー」は今も変わらないナンシーの名物であり続けています。
平べったく、表面がひび割れしているナンシーのマカロン。パリの華やかなマカロンとは似ても似つかない、アーモンドクッキーのような素朴な見た目をしています。
生地をシートの上に絞り、そのままオーブンで焼いた後、シートがついたまま販売されているのが特徴。
一口食べると、アーモンドの香ばしさが口の中いっぱいに広がります。パリのマカロンよりもずっと素朴でどこかなつかしい味わいですが、口のなかでほろりと崩れる食感は、やはりマカロン!見た目は似ていても、クッキーとは違います。
ナンシーのマカロンの基本材料は、卵白、砂糖、アーモンドといたってシンプルですが、配合と作り方がポイント。表面はカリッと、中はねっちりとした独特の食感にするのは決して簡単ではありません。
ナンシーでマカロンを売るお店は何軒かありますが、修道女から伝えられた秘伝のレシピを受け継いでいるのが、市庁舎の近くにある「メゾン・デ・スール・マカロン」。ナンシー駅近くにある「ルフェーヴル・ルモワーヌ」のものも人気です。
東京やパリでは出会えない「マカロン・ド・ナンシー」。今まで知らなかった、マカロンの奥深い世界を教えてくれますよ。
Post: GoTrip! http://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア
「メゾン・デ・スール・マカロン (Maison des soeurs macarons) 」
住所:21, rue Gambetta 54000 Nancy
「ルフェーヴル・ルモワーヌ(Lefevre Lemoine)」
住所:47, rue Henri Poincaré 54000 Nancy



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