サッカー界のトップまで昇りついたエージェントは手で数えられるほど少ない。その1人は53歳のミノ・ライオラ氏である。
ライオラはイタリアで生まれ、1歳のときに両親と一緒にオランダに引っ越した。若い頃は家族の飲食店を手伝ったが、その時からビジネスセンスが抜群だったという。
19歳の時にマクドナルドの店を引き継ぎ、売り上げを記録した数ヶ月後、その店を売却。その取引の利益でエージェント事務所を開設し、現在はポール・ポグバ、エルリング・ホランド、ズラタン ・イブラヒモビッチほどの選手の管理をしている。
ここでは、現在の市場価値に基づくライオラ事務所サッカー選手ベスト11を紹介しよう。(下記のデータは『Transfermarkt』によるものである)
ライオラ氏がマネジメントする選手たちの市場価値を合わせた金額は680億円を超える…。

GK:ドンナルンマ
市場価値:6000万ユーロ(約76億円)
2015年10月に16歳8ヶ月でセリエAデビューを果たしたミラン所属のイタリア代表GKジャンルイジ・ドンナルンマは、早い段階でライオラ氏に目をつけられ、2人の関係は7年ほど続いている。
2013年に同選手に初めて目をつけたのはインテルだったようだが、ライオラがミランのCEOだったアドリアーノ・ガッリアーニ氏に声をかけたことで、ミランはドンナルンマに対してインテルよりも良いオファーを提示し、同選手を獲得した。
現在ドンナルンマはミランの欠かせない存在となっている。しかしながら、同選手の契約は2021年までとなっており、契約更新の話はあまり進んでいないようだ。このことについてライオラ氏は「ドンナルンマの未来はきっと明るいものとなるだろう。しかし、彼の居場所はこれからもミランかどうかはわからない」とコメントした。

DF:ロマニョーリ
市場価値:3600万ユーロ(約45億円)
ミランのキャプテンを務めているイタリア代表DFアレッシオ・ロマニョーリは、ローマのユース時代(2003-2012)から注目されていた。当時はサイドバックで使われていることも多かったが、今はイタリア国内でセンターバックとして評価されている。
ロマニョーリのミランとの契約は2022年までとなっており、更新は簡単に行われるものだと思われていた。しかし、1年ほど前にロマニョーリはエージェントを変え、ライオラ氏と契約したのだ。そのため同選手はミランに残る可能性が未だに高いと言われているものの、ミランは年俸に関しての交渉が必要となったようだ。
現在のロマニョーリの年俸は350万ユーロ(4.4億円)であるが、ライオラ氏は500万ユーロ(6.3億円)への増加を求めている。同選手なしでミランのディフェンスラインは成り立たないものの、同クラブの財政を顧みれば厳しい条件となるようだ。

DF:デ・リフト
市場価値:7000万ユーロ(約88億円)
2018/19シーズンに19歳でアヤックス・アムステルダムのクラブ史上最年少キャプテンとなった現ユベントス所属のオランダ代表DFマタイス・デ・リフトは、ライオラ氏の働きで2019年7月にユベントスに移籍することとなった。
ユベントスはデ・リフトの獲得に7500万ユーロ(約91億円)の移籍金をかけた上、年俸の800万ユーロ(約9億8800万円)も同クラブで3番目に高いものである。しかしながら、ユベントスはデ・リフトの獲得ににとても満足しているだろう。
ライオラ氏にとってもデ・リフトは大事な宝物であり、彼について「まだ21歳だが、ユベントスで今からでもキャプテンを務めることができると思う。そしていつかは世界一のディフェンダーになれると信じている」とコメントした。

DF:マノラス
市場価値:3200万ユーロ(約40億円)
ハングリー精神、マンマークの高い技術、スピード、切り替えの速さなど、複数の特徴で輝きを見せるナポリ所属のギリシャ代表DFコスタス・マノラスは、同クラブに移籍した時のパフォーマンスは低下していた。しかし、最近はジェンナーロ・ガットゥーゾ監督の元でローマ時代(2014-2019)のような輝きを取り戻している。
マノラスが、ローマに移籍し注目を集め始めた頃のライオラ氏との関係は良好なものとは言えなかった。
しかし、2018年に全てが変わった。マノラスはプロになってからお世話になったギリシャの代理人を離れ、自らライオラと連絡をとり、彼の事務所に加わったという。そのようになった経緯は未だに明らかとなっていない…。

MF:ステングス
市場価値:1800万ユーロ(約23億円)
サッカー界の複数の新星の中で素晴らしい活躍を見せている1人であるAZアルクマール所属のオランダ代表FWケルビン・ステングス。同選手はまだ21歳だが、すでにヨーロッパの多くのビッグクラブに目をつけられている。
ポジションはウイングだが、攻撃的なサイドハーフとしてもプレーできるため、同記事ではMFとして紹介をしている。
アルクマールのサポーターが同選手のプレーを見れる喜びは残りわずかだろう。2019年にライオラ事務所と契約をした時点で、ステップアップを果たすことが決まったようなものだ。
同選手の次の行き先を検討しているライオラ氏はすでにユベントス、ナポリ、マンチェスター・ユナイテッドなど多くのクラブと交渉しているという。

MF:ポグバ
市場価値:8000万ユーロ(約101億円)
ユナイテッド所属のフランス代表MFポール・ポグバは、30代に近づいているにもかかわらず、現在ライオラ氏がマネジメントしているプレイヤーの中で2番目に市場価値の高い選手である。
2009年から2012年にかけてユナイテッドのユースで活躍し同クラブでプロデビューを果たしたが、わずか3試合に出場してからフリートランスファーでユベントスへと移籍した。
そして現在、ポグバは再びユナイテッドを離ることが有力視されており、移籍の噂は世界中のサッカーサイトの見出しを飾っている。この件に関してライオラ氏は「1月にはスター選手はほとんど動かないが、夏に何が起こるか見てみよう。この選手には間違いなく素晴らしい未来が待っている」とコメントを残した。

MF:ベッラッティ
市場価値:6000万ユーロ(約76億円)
2017年にバルセロナのレジェンドである現ヴィッセル神戸の元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタから「後継者」と言われたパリ・サンジェルマン(PSG)のイタリア代表MFマルコ・ベッラッティ。昨年は移籍が噂されていたが、2024年まで同クラブと契約更新をすることとなった。
ベッラッティがライオラ事務所に入ったのは2017年のこと。当時、同選手は以前の代理人だったイタリア人のディ・カンプリ氏に感謝の言葉を述べたものの、同エージェントは納得しておらず未だにライオラ氏のことを恨んでいるという。
この件についてディ・カンプリ氏は「ベッラッティは私の選手だったにもかかわらず、ライオラからしつこく電話受けていて、その結果彼は私から離れることとなった。この世界にはよくあるパターンだが、私に対しても電話をしてほしかった。彼にとって気持ちは大事じゃない。お金のことのみを考えている人間だ」とライオラ氏に怒りの言葉をぶつけた。
ライオラ氏に対して恨みを抱いている同業者も多いと言われている。

MF:ペッレグリーニ
市場価値:1350万ユーロ(約17億円)
ローマでプロデビューを果たし、カリアリで話題となったイタリア代表MFルカ・ペッレグリーニは、20歳だった2019年にユベントスへと移籍を果たし、現在はジェノアで経験を積んでいる。
ペッレグリーニの本来のポジションはサイドバックだが、攻撃的な選手であるため、サイドハーフやウイングとして使われることも多い。
彼がレンタルに出されるのは2020/21シーズンが最後だという。ライオラはユベントスのフロントとすでに話し合っており、来シーズンはユベントスの選手として戦う可能性が高いという。
それが実現できない場合、同代理人は別のクラブへの完全移籍を提案する予定のようだ。

FW:ロサノ
市場価値:3300万ユーロ(約42億円)
PSVアイントホーフェン時代(2017-2019)からライオラ事務所に所属している現ナポリのメキシコ代表FWイルビング・ロサノ。昨シーズンは出場機会が少なかったにもかかわらず2020/21シーズンでは同クラブの欠かせない存在となった。
ライオラ氏が最も大事としていることは管理している選手に出場機会が十分に与えられることだという。そのため同氏は昨シーズンのロサノの起用に不満を持ち、ナポリに他のクラブへのレンタルを提案したようだ。
ナポリとライオラ氏の関係は昔から複雑であり、2020年まで同氏の元にいたロレンツォ・インシーニェの契約関係の話の時も意見が合わないことが多かった。しかし、インシーニェが代理人を変更してから話が一気に落ち着いたようだ。

FW:テュラム
市場価値:4000万ユーロ(約50億円)
2019/2020シーズン、ボルシア・メンヒェングラートバッハをブンデスリーガ4位に導き、そして今シーズンチャンピオンズリーグ(CL)決勝ラウンドまで同クラブを連れて行った立役者の1人であるフランス代表FWマルクス・テュラム。
テュラムは2023年までボルシアMGとの契約が残っているものの、ミラン、バルセロナ、マンチェスター・シティなど、多くのチームが獲得に興味を示しており、ライオラ氏はあわただしい日常を送っているようだ。
そのため、テュラムが来シーズンもボルシアMGに残ることは考えにくいだろう。ライオラ氏は彼にふさわしいトップクラブを用意するに違いない。

FW:ホランド
市場価値:1億ユーロ(約126億円)
最後にライオラ氏の選手の中で市場価値が最も高い選手を紹介しよう。それは昨日2020年のゴールデンボーイを受賞したボルシア・ドルトムント所属のノルウェー代表FWエルリング・ホランドである。
194センチの身長で、もちろん空中戦を得意としているが、足元のテクニック、フィジカル、オフザボールの動きの良さなど、全ての面での完璧なマシーンである。ホランドほどの選手が未だ20歳なんて、信じがたい話だ。
ゴールデンボーイを受賞後、ホランドはライオラ氏の働きを高く評価し、「世界最強の代理人だ。これからもずっと彼のもとで成長したいと思っている」と同氏に賞賛の言葉を送った。
ホランドがいる限り、ライオラはこれからも代理人のトップから外れることは無いだろう。