2021年9月に開幕した日本女子プロサッカーリーグ、WEリーグ(ウーマン・エンパワーメント・リーグ)は、現在2022/23シーズン最終節を6月10日に控え後半戦に突入。全11クラブの順位争いに注目が集まっている。

ここでは、そんなWEリーグで昨2021/22シーズン5位(勝ち点31)、今シーズンも現時点(5月5日第16節終了時点)5位につけているマイナビ仙台レディースに着目。最終節までに首位へと登り詰められるかに期待がかかるところ、同クラブで活躍しているDF万屋美穂(まんや・みほ)、MF茨木美都葉(いばらき・みつば)2名の選手に独占インタビューを行った。

前編では、WEリーガーを目指す人たちとの触れ合いや、WEリーグがプレー以外で実践している取り組み『WE ACTION』の様子について、女性ならではの視点で語られたインタビューの様子を紹介した。この後編では「海外と日本の女子サッカーについて」「なでしこジャパン(日本女子代表)や尊敬する人物」「今後の目標」について紹介する。

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【WEリーグ】マイナビ仙台DF万屋、MF茨木、独占インタビュー(後編)

海外女子サッカーの存在

ーところでお二人は、海外と日本の女子サッカーについて、その位置づけや違いをどのように感じていますか?

万屋:そもそも国によって人口が違うので仕方ない部分もあるんですが、アメリカなどに比べると日本でサッカーをしている女性の数は少ないと感じています。やはり規模が全然違いますし、日本では女子サッカーがまだまだメジャーじゃない状況なのかなと。あとは、ミーティング(WE ACTION)でも話題に上がっていましたが、例えばアメリカはサッカー選手の賃金が男女一緒で、そういう部分からも差が出ているのかなと思いました。

茨木:日本では「サッカーより野球が人気」というイメージがありますけど、じゃあ「女子野球の人気は?」「プロ化されている?」というと、そうではなかったりしますよね(2021年12月30日に日本女子プロ野球機構は活動を休止)。なんというか、サッカーも野球も国技のような扱いではないというところが、ヨーロッパなどの海外と日本との大きな違いなんじゃないかなと思います。

ーそもそもの基盤から違いが大きいということですね。

茨木:そうですね。例えば日本で女子サッカーが盛り上がるプロセスを考えた場合、男子リーグの人気が高まるのが先で、それから女子サッカーが盛り上がるんじゃないかと思うんです。でも、現状ではサッカーという競技自体の存在がまだそれほど大きくなっていない。

文化的な問題もあるんでしょうが…。

万屋:そうですね。固定概念や文化的な違いというのは確かにあるのかもしれません。

茨木:もちろん日本でもっとサッカー人気が高まれば良いと思うけど、その場合もやはり、女子サッカーの前に男子サッカーなのかなと思います。

万屋:あとは、やっぱり結果じゃないですかね。代表の。

ー日本代表の影響は大きいと感じますか?

万屋:大きいと思います。以前、W杯(2011年FIFA女子ワールドカップドイツ大会)で日本女子代表が優勝した時は、サッカーをする女の子が増えたように思います。それを継続できれば良いんですが、実際には減少している状況です。でもそれはつまり、日本代表での結果が及ぼす影響は大きいということです。

ーちなみに、女子サッカーが盛り上がっていると感じる国はありますか?

茨木:最近だとイングランドとアメリカは人気が高まっていると感じます。スペインはビッグマッチの場合、スタジアムに50,000人規模の観客が入るんですけど、通常の試合ではおそらくWEリーグよりも少ない観客数だと思います。

どこの国もそれほど変わらない状況だと思うんですが、例えばマンチェスター・シティとアーセナルの試合だったら客数が入るとか、やはりビッグマッチは盛り上がっていますね。

【WEリーグ】マイナビ仙台DF万屋、MF茨木、独占インタビュー(後編)

日本の女子サッカーはどうなる?

ー今後、日本の女子サッカーに必要なことは何だと思いますか?

茨木:女子サッカーの関係者だけで話し合っても、結局変わらないんじゃないかなって思っています。例えば「どうすれば成功できるか」の話し合いにプロ野球の人たちを呼んで経験談や意見を聞いたりとか。Jリーグはもちろんですが、ハンドボール、バスケットボールなど他の競技団体や企業の人たちと意見交換することがポイントになってくると思います。サッカー業界の中だけで話し合っても、アイデアが限られてしまうと思うんですよね。

万屋:確かに他の競技とのコラボっていうのは、今までなかったですよね。

茨木:競技もそうだし、本当になんでも良いと思うんです。例えば電気屋さんとのコラボとか、何でも。そうすることで、色々なアイデアをもらえると思うんです。

ー確かに「WE ACTION MEETING」に参加する人の枠をもっと広くして、様々な角度で話し合えれば、さらに変化しそうですね。

茨木:会社員の人に「女子サッカーは観に行かないんですか?」と聞いてみたり、そういうことが動員数を増やすヒントに繋がると思うんです。

万屋:そうですね。それはベストアンサーだと思います。

【WEリーグ】マイナビ仙台DF万屋、MF茨木、独占インタビュー(後編)

尊敬するなでしこメンバーは?

ーWEリーグの創設は「なでしこジャパン」のレベルに影響があると思いますか?

茨木:影響とは違うかもしれませんが、WEリーグができたことで選手1人1人がサッカーと向き合う時間が増えました。他の仕事をしながらサッカーをしていた時より、筋トレや自主練に使える時間も長くなっています。その分、代表のレベルが上がっているのではと思いますが、これはやはり実際に(代表に)なってみないと分らない部分ではありますね。海外も同じようにレベルが上がっていると思うので。

万屋:今まで、なでしこリーグでは「1部」「2部」「チャレンジ」だったんですが、その上に「WE」という存在が出来たので、目指す場所が一段階上がりました。そのことは、代表のレベルに影響があるんじゃないかと思います。

ー今年、女子W杯が開催(7月20日~)されますが、過去に選出されたなでしこメンバーの中で、尊敬している選手はいますか?

茨木:ゆうりさん(MF川村優理)とめぐさん(MF上尾野辺めぐみ)ですかね。二人ともアルビ(アルビレックス新潟レディース)の2人です。私が一番最初に大卒で新潟に入った時、一緒にサッカーをしたんですが、その時「うわ、上手いな」ってシンプルにそう思ったんです。とても優しい人柄で、サッカーのことや取り組み方を教えていただきました。例えば練習前の過ごし方などは、 WEリーグで一番最初にその二人に見せてもらいましたね。

ー当時の光景は今でも覚えていますか?

茨木:はい。覚えてます!

ー茨木選手のその笑顔から、当時の幸せが伝わってきます。

茨木:はい(笑)

万屋:(笑)

ーでは、万屋選手はどうですか?

万屋:なでしこが優勝した時の事でいうと、私とはポジションが逆なんですが、 近賀さん(サンフレッチェ広島レジーナMF近賀ゆかり)の駆け上がる感じのプレーが好きです。あとは阪口夢穂さん(元大宮アルディージャVENTUS、2023年4月9日引退発表)の縁の下の力持ち的なプレーがすごい好きです。それほど目立つ訳じゃないんですが、チームを支えている存在感がすごくて。

【WEリーグ】マイナビ仙台DF万屋、MF茨木、独占インタビュー(後編)

自分にしか歩めない人生を楽しみたい

ーでは最後に、WEリーガーとしての目標と、人としての目標を教えてください。

万屋:WEリーガーとしては、自分自身が楽しんでいないと伝わるものも伝わらないのかなと思いますし、レベルが上げれば上がるほど、もがき苦しむ事も多いですけど、その中でも楽しい瞬間を感じられるようにしたいなと思っています。人としては、うーん…なんだろう?誰かのためになることが好きというか…、誰かの1つ下にいたいですね。例えば、社長の下で補佐したいタイプです。

ー誰かを支えたいタイプですか?

万屋:そうですね、支えたいタイプです。だからもし自分が誰かのために何かをした時、自分が満足する気持ちより、相手に満足してもらえるような人になりたいです。そういうところに幸せを感じるというか、ふとした私の行動を「ありがたかった」って思ってもらえた経験があって、それを後から聞いた時にすごく嬉しくて幸せだったんです。自分が言った何気ない一言が、誰かの救いになったことが凄い嬉しかったので、そういう人になりたいです!

ーすでになっているのでは?

万屋:いやいや、まだ未熟です(笑)

ーでは、茨木選手はいかがですか?

茨木:WEリーガーとしては、チームに必要とされる「試合に絡んでいける選手」になりたいです。人としては…なんだろう…、自分の人生なので、自分がやりたいと思ったことにチャレンジしていきたいし、自分にしか歩めない人生を楽しみたいと思います!

万屋:すごくいいと思います(笑)

ー万屋選手、茨木選手ありがとうございました

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