2023シーズンの明治安田生命Jリーグも各カテゴリーで中盤戦に突入。優勝争いや昇降格争いが激化する終盤戦に向け、経験豊富なベテラン選手たちの活躍が重要になる一方、今季も多くの若手選手が躍動している。
ここでは、リーグ終盤戦に向けて活躍が期待できる注目の10代選手を5名紹介していく。

高井幸大(川崎フロンターレ)18歳
2023シーズン、王座奪還を目指す川崎フロンターレ。しかし、開幕前には攻撃陣に怪我人が続出する緊急事態が発生。さらに開幕直後、DF車屋紳太郎やDFジェジエウといった主力守備陣も相次いで負傷し、思うように勝ち星を挙げられないという負の連鎖が続いていた。
そんな窮地に陥った川崎にあって、急成長を遂げているDF高井幸大に希望を見出すファンも多かったことだろう。高井は4月15日のJ1第8節から出場機会を得ると、第10節~第12節の連勝にも大きく貢献。チームの立て直しに一役買った。
192cmという恵まれた高さはもちろん強さと速さも兼ね備え、J1の強力な外国籍FWたちを相手にしても一切引けを取らない。また、足元の技術も持ち合わせており、後方からつなぐ場面も多い川崎で十分に役割を果たしている。
ここから先、上位勢を追い続けねばらならないチーム状態の中で、怪我人復帰時に定位置を守り切れるかどうかが問題だ。ハイレベルな要求と序列争いが予想される川崎だからこそ、高井には更なる成長が期待でき、それこそが王座奪還に必要不可欠な要素とも言えるのではないだろうか。

越道草太(サンフレッチェ広島)19歳
サンフレッチェ広島の下部組織からトップチームへの昇格を果たしたMF越道草太。まだ19歳ながら、2023シーズンここまで11試合に出場。
180cmの恵まれた体格とスピードを生かしたドリブルが大きな魅力。積極的に縦に仕掛ける姿勢で敵陣深くを脅かす姿が数多く見られる。また、アシスト数は2つとそこまで伸びていないものの、前線へ供給するラストパスやクロスの精度も高い。
スピードに乗った状態であっても丁寧かつ正確なボールが供給でき、多くの決定機を演出しているが、今季序盤には越道が務める右サイドに現在負傷離脱中のMF満田誠が入る試合もあった。満田が戻って来た時、本当の意味で越道の真価が問われることになるだろう。
一方、越道の存在価値が大きくなればなるほど、満田をトップ下など別のポジションで固定できるといったメリットも出てくる。直近はJ1で5戦勝ち無しと、上位陣との勝ち点差が開いてしまった広島。巻き返しを図るためにも、地元である広島出身の越道にかかる期待は一層高くなるだろう。

俵積田晃太(FC東京)19歳
2023シーズン注目ルーキーの1人であるMF俵積田晃太。FC東京の下部組織からトップチームへの昇格を果たしてJ1第2節の柏レイソル戦でJリーグデビューを飾ると、ここまで16試合に出場。前任のアルベル・プッチ・オルトネダ監督のもとでは途中出場が多かったものの、現在チームを率いるピーター・クラモフスキー監督のもとでは全試合で先発出場を果たしている。
19歳ながら新旧監督に重用されていることからも、能力の高さがうかがい知れると言えよう。
今後も活躍が十分に期待できる俵積田だが、懸念事項を挙げるとすれば、今夏FC東京は積極的な補強の動きを見せており、そのうちの1人にアル・ナスル(アラブ首長国連邦)から獲得したMFジャジャ・シルバがいることだ。ウイングを主戦場とする同選手の獲得により、再びベンチスタートが増える可能性もある。
しかし、まだまだ伸び盛りな年齢。チーム内でのポジション争いという試練を乗り越えれば、さらなる成長が見込めるだけに、今季後半戦で最も注目すべき10代選手の1人と言えよう。

山根陸(横浜F・マリノス)19歳
昨2022シーズン王者となった横浜F・マリノスで、ルーキーイヤーながら11試合の出場機会を得たMF山根陸。本職は中盤中央だが、2023シーズンはサイドバックでも出場機会を得てここまで9試合に出場。持っている能力の高さからすれば少ないようにも思えるが、出場すればやはりその高いポテンシャルが随所に見られる。
冷静なボールタッチと素早い判断から繰り出される精度の高いパスが持ち味。J1第7節の横浜FC戦では、MF水沼宏太のオフサイドで得点が取り消されたため幻となってしまったが、内側のスプリントから見事なシュートでネットを揺らすなど、攻撃でも見せ場を作っている。
連覇を狙う横浜FMは現在2位。
また、サイドバックで怪我人が出ていることからも、山根のさらなる活躍が期待されることは間違いない。まだまだ出場試合数は少ないが、攻守両面で能力の高さを証明できている。連覇に向けて、シーズン後半戦のキーマンと言っても過言ではないだろう。

後藤啓介(ジュビロ磐田)
2023シーズンのJ2で最もインパクトのある活躍をしている10代選手と言えば、ジュビロ磐田のFW後藤啓介ではないだろうか。18歳ながら圧倒的な身体能力の高さと決定力を見せつけており、今後ますます出番が増えることも予想される。
最も衝撃的だったのが、デビュー戦となった開幕戦ファジアーノ岡山との試合。0-3と不利な試合展開で投入されると、あっという間に2ゴールを挙げて見せた。チームは敗れたものの、圧巻の働きをしたと言えよう。その後も第5節の静岡ダービー(清水エスパルス戦2-2)や第20節のベガルタ仙台戦(3-2)での3点目など、重要な試合で得点を挙げここまでで計5ゴール。
チーム内においてはFWジャーメイン良が6ゴールでトップスコアラーになっているものの、出場時間で比較すれば後藤の高い決定力と存在感を見て取ることができる。J2からJ1への個人昇格や、J2からの海外移籍を果たす選手も多い昨今。後藤にもすでに海外から熱視線が注がれており、具体的なクラブ名も上がっている。今夏すぐに動きが出るかは不明だが、ここまでの活躍を見ていれば欧州クラブで躍動する未来はそう遠くないように思える。
磐田はJ2第28節を終えた現在、2位の自動昇格圏。とはいえ、昇格を狙う各クラブとの勝ち点差はまだまだ小さい。確実なJ1昇格、そして首位を走る町田ゼルビアを捉えるためにも、18歳のストライカーにかかる期待は日増しに大きくなっていくことだろう。