ヨーロッパ諸国の中でもサッカー発祥の地とされる英国(イギリス)では、人々のサッカーに対する情愛が計り知れない。お気に入りのクラブを応援するのはもちろんのこと、そのスピリットが宿るホームスタジアムに対しても熱いものがある。
2023年12月末に英メディア『FourFourTwo(フォー・フォー・ツー)』が同国内のサッカースタジアムについて独自調査を行い、収容人数や建築デザイン、雰囲気に歴史深さなど様々な視点からベスト100を選出し、興味深い結果が公表された。
ここでは特に気になる上位5つの英国スタジアムについて紹介していく。

5位:オールド・トラッフォード(Old Trafford)
- 利用クラブ:マンチェスター・ユナイテッド
- 所属リーグ:プレミアリーグ(イングランド1部)
- 施設容量:約74,000人
- 創設年:1910年
- 所在地:イングランド北西部マンチェスター
普段サッカーとは無縁だという人でも、オールド・トラッフォードの名は一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。創設から現在に至るまで数々の試合が繰り広げられた場所であり、元イングランド代表ボビー・チャールトン(2023年没)が「夢の劇場(The Theatre of Dreams)」と名付けたことでも有名なスタジアムだ。
収容人数も7万人超えと英国内でもトップクラスの規模を誇る。また過去2012年から2014年までの期間には、赤ユニフォーム姿の香川真司(セレッソ大阪)がプレーしていた記念すべき場所でもある。

4位:クレイヴン・コテージ(Craven Cottage)
- 利用クラブ:フラム
- 所属リーグ:プレミアリーグ(イングランド1部)
- 施設容量:約25,000人
- 創設年:1896年
- 所在地:イングランド南東部ロンドン
ロンドン地域の中でも高級住宅街エリアに位置するクレイヴン・コテージ。近隣にはチェルシーのホームであるスタンフォード・ブリッジもあり、スタジアム巡りをする場合には嬉しい立地だ。
ロンドン地域で最も歴史ある施設であり、外観は赤煉瓦造りで趣のあるデザイン。また市内を流れるテムズ川に沿いに建てられているため、川とは逆側の一方向からしか入場できない点も良い味を出している。
収容人数は2万人代と小規模。それでもランキング上位に位置しているのには、歴史深さをリスペクトする英国ならではの文化が影響しているのかもしれない。

3位:アンフィールド(Anfield)
- 利用クラブ:リバプール
- 所属リーグ:プレミアリーグ(イングランド1部)
- 施設容量:約61,000人
- 創設年:1884年
- 所在地:イングランド北西部リバプール
マンチェスター・ユナイテッドの拠点オールド・トラッフォードから更に西側にある、リバプールのホームスタジアム、アンフィールド。当初はライバルでもあるエバートンのホームとして1984年に建設されたものだったのだが、資金問題のため最終的にリバプールのホームとなった背景がある。
現在リバプールには日本代表の遠藤航(2023年8月~)が所属し、2023/24シーズンは出場回数33(2024年3月20日時点)と活躍中だ。

2位:セルティック・パーク(Celtic Park)
- 利用クラブ:セルティック
- 所属リーグ:スコティッシュ・プレミアシップ(スコットランド1部)
- 施設容量:約60,000人
- 創設年:1892年
- 所在地:スコットランド南西部グラスゴー
セルティック・パークの雰囲気を素晴らしいと絶賛する選手は多い。その1人である元イングランド代表でリバプールの名選手スティーブン・ジェラード(2016年引退)も「これ以上の雰囲気は見たことがない」と語ったことがあるそうだ。周辺にはセルティックを象徴する伝説のジョン・ステイン監督(1965-1978、1985年没)の記念像が建てられている。
スコットランド代表監督(1978-1985)でもあったステイン監督は「ファンなくしてサッカーなし(Football without the fans is nothing)」という名言を生んだ人物。2019年末からコロナウイルスの影響で無観客試合を行うことがあったが、その際に同監督の名言が再度注目された。

1位:アイブロックス・スタジアム(Ibrox Stadium)
- 利用クラブ:レンジャーズ
- 所属リーグ:スコティッシュ・プレミアシップ(スコットランド1部)
- 施設容量:約50,000人
- 創設年:1899年
- 所在地:スコットランド南西部グラスゴー
セルティック・パークに続き1位に輝いたのは、同じくグラスゴー地域にあるアイブロックス・スタジアム。1位と2位のわずかな差は、構造の素晴らしさにある。1つはピッチを四方向から囲むスタイルの観客席であり(ピッチとの)距離が近いという点だ。そのため、どの席からも眺めがとても良いというのが最大のポイント。
2つ目は建築美。スコットランド出身のスタジアム建築で有名なアーチボルド・リーチ氏(1865-1939)が設計しており、近代的な部分を取り入れながらもメインスタンドは歴史を感じるデザインに仕上げられている。外観は重厚な赤煉瓦の壁が一面に広がり、一見サッカースタジアムというよりも大学のキャンパスまたは大きな図書館のような雰囲気。スコットランド地域の重要建築物としても登録されている。
星の数ほどのスタジアムが存在する英国では、ベスト100に選ばれるだけでも誇らしい。だがトップ5となると、やはり他とは比べ物にならない何かが存在するのだろう。なにより人々のサッカーを愛する情熱が、スタジアムをより輝かせているのは間違いなさそうだ。
英国のサッカー文化が染み込んでいるスタジアムを実際に巡り、自分なりのトップ5を見つけてみるのもおすすめだ。