3月8日からスタートした2025シーズンの日本フットボールリーグ(JFL)。今年は、昨季の関東リーグ1部で優勝した飛鳥FCのほか、J3リーグから降格となったいわてグルージャ盛岡とY.S.C.C.横浜が新たに加わり、全16チームで激しい戦いが行われている。
なかでも注目したいのが現在2位のヴェルスパ大分(以下V大分)だ。

大分県にはすでに大分トリニータ(J2)があるが、2つ目のJクラブを目指すV大分の躍進には目を見張るものがある。ここではV大分の歴史とJリーグ参入に向けた挑戦について伝えていく。

ヴェルスパ大分が金崎夢生と挑む“おんせん県”第2のJクラブ【JFL2025】

ヴェルスパ大分の歴史

V大分の歴史は、2003年に大分県を拠点とする豊洋精工株式会社とソイテックスジャパン株式会社の社員が作ったサッカーチームから始まる。前年の2002年にFIFAワールドカップ日韓大会の試合が大分で開催されたこともあり、県全体がサッカーで盛り上がっている時にスタートしたチームだ。

当初のチーム名は豊洋精工の頭文字を取り『HOYO FC』。2004年より大分県社会人サッカーリーグに加盟した。その後、何度かチーム名を変更しながら2012年にJFLへ参入。翌2013年12月に現在の『ヴェルスパ大分』へと名称変更し、2020年にはJFLで初優勝を果たしている。

ホームタウンは全国的にも有名な温泉地である由布市や別府市を中心としており「Verspah」(ヴェルスパ)はチームカラーである赤を意味するポルトガル語「vermelho」(ヴェルメーリョ)と温泉を意味する英語の「spa」、旧チーム名の「HOYO」の頭文字の「h」を組み合わせた造語である。

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ベテランFW金崎夢生の加入

2024年8月、V大分に元日本代表FW金崎夢生が加入した。大分トリニータや名古屋グランパス、鹿島アントラーズなどのJクラブでプレーしてきた金崎の加入は、チームにとって大きな影響をもたらしている。シーズン途中からの加入だった2024シーズンは11試合出場で1得点だったものの、2025シーズンは開幕からここまで全8試合に出場し、リーグトップタイの5得点を記録している。スピードとフィニッシュ能力を兼ね備えたアタッカーでありながら、前線での献身的なプレスやポストプレーのほか、闘志あふれる感情豊かなパフォーマンスも特徴で、チームに勢いをもたらす存在感を発揮している。


また、ベテラン選手ならではの冷静な判断力と経験に基づくプレーは、JFLの激しい戦いの中で一際目を引く。2025年5月3日に行われた第8節ヴィアティン三重戦では、得点こそなかったものの随所で的確な判断により攻撃の起点となるプレーも見せていた。さらに金崎の加入は、若手選手を中心にチームにプラスの影響を与えている。特に彼のトレーニングや試合への向き合い方などプロ意識は多くの選手の模範となり、選手個々の成長にも繋がる。J1や日本代表として実績を積んだ選手の加入はチームに大きな士気と信頼をもたらしたと言えるだろう。

金崎は滝川第二高校(兵庫県)を経て、2007年に大分トリニータでプロキャリアをスタート。同じ大分県クラブへの加入について金崎は「これまで様々なチームでプレーしてきましたが、僕の原点でもある大分に対する気持ちは、いつもどこにいても忘れることはありませんでした。チームは異なりますが、また大分に戻ってこれたことを本当に嬉しく思います。ヴェルスパ大分と共にJ3昇格を成し遂げ、また大分を盛り上げていきたいなと思います。」とクラブを通じて語っており、大分でのプレーに対して特別な思いがあるようだ。36歳を迎えキャリアの終盤とも言える金崎が、V大分Jリーグ参入の立役者として名を刻むことになるのか。今後の活躍に期待したい。

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悲願のJリーグ参入へ、V大分の挑戦

V大分は2020年にJFLで優勝したものの、J3クラブライセンスを有していなかったためJリーグへの参入は叶わなかった。
その後クラブは2022年にJ3ライセンスを申請し承認されている。JFLからJ3への参入には、リーグ戦の最終順位2位以内(2位の場合はJ3クラブとの入れ替え戦に勝利)という条件のほか、入場料収入1,000万円以上、平均入場者数2,000人以上という条件が課されている(2024年時点)。

つまりチームが強くて成績が良いだけではなく、一定数の観客を集めて入場料収入を確保する必要があるという訳だ。V大分がホームタウンとする別府市や由布市は全国的にも有名な観光地で、大分県全体としても『おんせん県大分』として知られている。これらの地域的な知名度を活用し、いかにクラブを広く認知してもらえるかが今後の課題といえるだろう。2024年、6位に終わったV大分の平均観客数は1,800人で2,000人という数字は決して手の届かないものではない。大分から2つ目のJクラブ誕生へ、V大分の挑戦は続く。
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