いよいよ、TOKYO2020の幕が開ける。メモリアルな自国開催のオリンピック、その大きな見所のひとつが、今回から加わった幾つかの正式種目。
先ごろ、オーシャンズがヴァンズとともに開催したBMXの親子体験イベントにインストラクターのひとりとして参加してくれたのが、代表の最有力選手として日本を背負って立つ中村輪夢さん。2020の話題をさらうであろう気鋭のトップアスリートに、話を聞いた。中村輪夢(なかむらりむ)●2002年生まれ、京都出身。BMXライダーで、ショップも経営する父のもと、2歳からBMXに乗り始める。その後5歳で大会に初出場し、主要な大会のキッズクラスを小学生でほぼ制覇し、中学校に進学後にプロとなる。国内外の大会で優勝をさらい、2019年にはミネアポリスにて開催されたX Gamesにて日本人で初めて表彰台へ。国内BMXシーンの若きスーパースター。
日本のオリンピックに出られる機会を絶対モノにしたい
–BMXの親子体験イベントを終えたばかりですが、中村さんもかなり小さい頃からBMXを始められたと伺っていますが?
中村輪夢(以下中村):そうですね、僕がBMXを始めたのは2歳からで、正直自分でもほとんど覚えていません(笑)。今日も、少し経験のある子からBMXに乗るのが初めてという子までいろいろいましたけど、まずはみんな楽しそうだったのがいちばん良かったなと思っています。
–午後と午前、それぞれ2時間ずつでしたが、みなさん時間以上に充実していたみたいですね。
中村:最初は乗るだけでもフラフラだったのに、最後には坂を下れてる、みたいな。たった2時間くらいでもそうやって変わるのを見て、子供の成長ってすごいなと思いました。
–先ほど、BMXを始めた頃はよく覚えてないとおっしゃってましたが、名前の由来を知ったときのことは覚えていますか?
中村:何となくは、ですね。でも自転車の部品の「リム」から来てるというのを知ったときにも、「へぇ、そうなんや」くらいの感じでした(笑)。東京でのオリンピック開催とかが決まって、BMXが正式種目になったあたりから、そういうことを聞かれるようになっただけで、それまでは聞かれることもそんなになかったので、自分の名前を意識したのはここ2、3年くらいなんです。
–お父さんの期待が込められているのが伝わってきますが、そこに反発やプレッシャーはなかったんですか?
中村:自分がこの名前だから頑張らなきゃ、とかは全然なかったです。ただ好きだから(BMXを)ずっとやってたってだけでしたね。
–選手としてもすごく良い時期に自国開催のオリンピックが開催されますが。
中村:はい。4年に1回っていうのもそうですし、日本で開催されるオリンピックに現役で出られる機会は死ぬまでないんじゃないかと思うので。そういうチャンスをモノにしたいですね。
–これまで国内外の大会に出場されてきた中村さんでも、やはり五輪は特別なんですね。
中村:そうですね。
–とは言え、BMXは近年でかなりの人気スポーツになりましたよね。
中村:特にここ2、3年で変わってきてますよね。やっぱり、オリンピック前で盛り上がっているんだと思います。オリンピックで、そして、そのあとはもっともっと盛り上がっていったら嬉しいですね。BMXって言えば誰でも知っている、というくらいにしたいんです。
中1でクラッシュしたときのトラウマは今も残ってます
–BMXを辞めようと思ったことはないんですか?
中村:コケて痛いとか、しんどいとかはありますけど、辞めたいと思ったことはないですね。
–トリックの練習でいちばん辛かったのはどんなものでしたか?
中村:う~ん。「フレア」っていう技があるんですけど、僕は小学校6年生くらいのときに初めてできたんです。でも、中1のときにその技をやってクラッシュしてから怖くなってしまって。今はもちろんできるんですけど、今でもコケたときのトラウマは残ってますね。忘れようと思っても忘れられないんです。
–格好良さ、面白さにばかり目が行きがちですけど、やっぱりリスクも伴う競技ですもんね。
中村:怪我をしてしまうこともあるし、危険な部分もありますよね。でも基本は子供でも大人でもできるし、親子で楽しめる競技だと思っています。
–観戦する側の視点で、BMXの面白さはどんなところだと思いますか?
中村:自転車っていう道具がデカいので、ダイナミックに見えるところかなぁ。あとはライダーそれぞれ、技が全然違うのでそこにも個性を感じられると思います。自分のスタイルを出せるんです。今日のイベントにも参加してくれた高木君だったらフロントフリップだったり、勅使河原君(※高木聖雄、勅使河原大地。両名とも、VANSにスポンサードされるプロBMXライダー)だったらスーパーマンみたいにシートを掴む技だったり。誰も技がかぶったりしないので、個性が出るところが良いところかなと思います。
–サーファーやスケーターでも、スタイルを重んじる人だったり競技性の強い人だったり、いろいろな方がいますよね。
中村:分かれますね。
盛り上がりは映像だと伝わりきらない。現場が命だなと思っています
–2020年、中村さんが競技で盛り込もうとしているトリックや、注目すべき部分を教えて下さい。
中村:実際にやるトリックは、会場が特設だとそこに行って見るまでわからないんですよ。だから、いつも何をやるかが決まるのはギリギリなんです。ただ、僕はジャンプの高さにはずっとこだわってきたので、そこはやっぱり注目してほしいところのひとつですね。
–そういう意味でも競技自体のライブ性はすごく強いですね。画面越しに観るBMXと、生で観るBMXの違いはどんなところですか?
中村:やっぱりいちばんは迫力ですね。
–そういうお客さんの盛り上がりは、競技の最中でもわかるものですか?
中村:ハッキリわかりますよ。だから、観てくれてるお客さんの声はすごく大事なんです。60秒間走って1発目の大技を狙って、それがキマって歓声が上がると、そこからどんどん調子が上がっていったり。
–そういう意味では、観ている人たちも競技に参加しているような部分があるのかもしれないですね。
中村:そうですね。乗っているほうも観ているほうも最高に楽しめると思います。海外の大会なんかに出ると、僕たちはすぐにテンションが上がっちゃって無茶をしちゃうことも多いんですが(笑)、そういう意味では今回のオリンピックは日本での開催だからすごくいいコンディションで行けると思うし、何よりパワーをもらえるので。僕は練習を頑張るので、皆さんには是非盛り上がってほしいなって、そう思っています。
“車輪”と“五輪”、そこに夢を見る。17年前に生まれ落ちたとき、彼の名には、BMXを愛し続けた父のそんな想いが込められた。
彼の2020年は、きっと日本の2020年を、もっと楽しくしてくれるに違いない。
photo by 山本 大
text by 今野 塁



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