景気減速懸念が深まるなか、2月21日に南ア政府が発表した2024年度の政府予算は、インフラ整備を中心とした経済のテコ入れが柱。ラマポーザ氏はその2週間前に演説し、公共サービスの低下や電力不足に対する国民の不満に理解を示しました。ただ、腐敗した前政権の影響が今も続いているとしただけでした。今回の政府予算は法人税による財政改革を前面に押し出したものの、効果は未知数です。
そうしたなか、ラマポーザ政権は任期満了に伴う総選挙を5月29日に実施すると明言。
南アの昨年7-9月期国内総生産(GDP)は前年比で10四半期ぶりにマイナスに落ち込みました。国営電力会社エスコムの計画停電による電力不足が経済活動を弱めていることが背景にあります。インフレは沈静化に向かっているものの、前年比で5%台と高止まり、消費は低迷。新興国のなかで同国はコロナ禍からの回復が最も遅れ、そうした不満も支持の低下につながっているようです。
通貨も対ドルで弱含み、1ドル=19ランド付近と最安値圏で推移。交易関係の強い中国の経済は回復度合いを弱めており、ランドへの買いは入りづらい状況です。米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利下げ観測の後退で、ドル高がランドの下押し圧力を強めています。総選挙で与党ANCが過半数を下回れば他党との連立が想定され、政治情勢の不安定化への警戒感から節目の20ランドを下抜ける可能性もあります。
アフリカ大陸では今年、20カ国以上で選挙が予定され、これまでコンゴやコモロで現職大統領が再選を決めています。ただ、直近ではガーナやエチオピアが債務不履行(デフォルト)に陥るなど経済の混乱は鮮明で、選挙をきっかけに社会不安につながりかねません。
(吉池 威)
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