1. 事業内容
Jトラスト<8508>は、国内外の金融事業などの事業会社を統括するホールディングカンパニーである。日本で培ったノウハウを海外展開し、アジアの総合金融グループとして成長を遂げてきた。
同社は、銀行・保証・サービサー(債権回収)の3つを「コア事業」として金融事業を展開している。藤澤氏による2008年のTOB以降、数々のM&Aによりグループの業容は急速に拡大し、資産合計は2008年3月期の12,189百万円から2024年12月期第4四半期には1,270,467百万円に拡大した。韓国・シンガポール・インドネシア・モンゴルの4ヶ国にわたる事業展開に加え、2019年8月には新たにカンボジアの優良銀行を傘下に収めた。コロナ禍による世界的な経済環境の悪化を受け、2020年8月以降は事業ポートフォリオを見直し、不動産事業ではキーノート(株)、日本金融事業ではJトラストカード(株)、韓国及びモンゴル金融事業ではJT親愛貯蓄銀行(株)及びJTキャピタル(株)を売却した。その後は利益拡大に向け、成長性が高いJT親愛貯蓄銀行及びNexus Card(株)(旧 Jトラストカード)を再グループ化し、新たにJトラストグローバル証券(株)(旧 エイチ・エス証券)の子会社化及び不動産業の(株)ミライノベートの吸収合併を実現した。
2024年12月期の事業セグメント別営業収益の内訳は、東南アジア金融事業37.1%、韓国及びモンゴル金融事業36.0%、日本金融事業12.9%で、金融3事業で86.0%を占めている。また、不動産事業13.5%、投資事業0.0%、その他(主にシステム事業)0.5%である。営業利益は日本金融事業が大幅増益となり、再建に向けて注力してきた東南アジア金融事業及び韓国及びモンゴル金融事業も黒字化して大幅増益となった。また不動産事業は前期に計上した負ののれん発生益がなくなったため大幅な減益となった。投資事業は訴訟費用の増加から損失計上となったが、債権回収により損失額は減少した。
2. 沿革
同社の旧商号は「株式会社イッコー」で、中小企業及び個人事業主向け商業手形割引や手形貸付などの貸付業務を行っていた。1998年9月には大阪証券取引所市場第2部に上場した。2005年に全国保証<7164>が同社の親会社になったのち、2008年3月に藤澤氏がTOBにより筆頭株主となり、2009年には商号を現在の「Jトラスト株式会社」に変更した。藤澤氏の下で債権回収会社やファイナンス会社などに対して機動的かつ効果的なM&Aを実施した。一方、リスク管理を基本とした事業運営を軸に外部環境の変化に的確に対応するとともに、迅速な意思決定ができる経営体制を目指し、2010年には様々な金融事業のノウハウを有する持株会社制に移行した。
2011年6月に大阪から東京都港区に本社を移転し、国内において蓄積したファイナンスノウハウを生かして海外に進出した。2012年に韓国で貯蓄銀行業を開始し、2013年に東南アジアの投資拠点をシンガポールに設立した。2014年3月期から2015年3月期にはライツ・オファリングで調達した976億円を活用し、韓国におけるファイナンス会社や貯蓄銀行、インドネシアの商業銀行などを取得した。2019年8月には、カンボジアの優良銀行であるANZ Royal Bank (Cambodia)の株式55%を取得し、商号をJ Trust Royal Bank Plc.(以下、Jトラストロイヤル銀行)に変更した。なお、2019年3月期に東南アジア金融事業及び投資事業において不良債権の抜本的処理を断行して大幅な営業損失を計上し、業績回復への道筋をつけた。
2020年に入り世界的なコロナ禍による経済環境の激変に遭遇し、これまで安定的な利益貢献を続けていた韓国貯蓄銀行2行の売却など、抜本的な事業ポートフォリオの見直しに着手した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)