12月1日、東伊豆の沖合に浮かぶ初島周りで夜釣りのイカブリ乗合が開幕し、日によっては船中100本を超えるすさまじい食いを見せている。
サイズは4~5kgのワラサが中心だが、昨シーズンは寒くなるにつれて7~8kgのブリが回ってきたからこれからが本番の釣り物だ。
ここ数年、ブリ資源は全国的に増加傾向にあり、日中の乗合船でも様ざまな釣法で狙うようになった。
泳がせ釣りのほか、極太のサビキでサバを掛けてそれにブリを食わせる落とし込み釣りなどが代表格だろう。
ただしブリ&ワラサを手にできる確率の高さはイカブリ船が飛び抜けていることは間違いなく、ここではその魅力と釣り方を紹介していく。
持参するヤリイカエサは釣りたい本数×2倍
イカブリの語源は「イカエサのブリ釣り」を省略したもの。
よって、真っ先に用意しなければならないのはイカエサだ。
本来は現地でヤリイカを釣って生きエサにするのだが、近年続く不漁によってここ数年は冷凍・冷蔵のヤリイカをエサにしている。
冷凍ヤリイカは船宿でも購入できるけれども、取材した東伊豆宇佐美港・秀正丸の森船長いわく「入荷が不安定なので数に限りがあります。足りなくなったら釣りにならないので、できれば持参してください」とのこと。
サイズは胴長20cm前後がベストだが、15~25cmの間ならOK。
当日乗船した皆さんも全員持参していて、1週間前からスーパーや鮮魚店を回って冷蔵・冷凍品をストックしていたようだ。
中には「スーパーの店員に、入荷したら連絡くださいと頼んでおくと確実だよ」と教えてくれたベテランもいたので参考にしてほしい。
持参するイカエサの数は、「目安としては、自分が釣りたいブリの本数の2倍。エサ取りやバラシもありますから多めに持ってきてください」と船長。
ブリ10本を目標とするならば、20杯のヤリイカを用意していけばほぼ万全ということだ。
スーパーをこまめに回って、胴長20cm前後のヤリイカを物色。鮮度のいい冷蔵モノが最良だ。
ハリス20~30号の太仕掛けで短時間で釣り込む
イカブリの仕掛けは丈夫な大型テンビンを介した当地ならではの極太仕様で、オモリは120号をセットする。
ハリスの太さは22~24号を基準に、入れ食い時や7kg以上のブリが回っているときは28~30号を使用。
ヤリイカエサを使う夜間の釣りでは、ハリスの太さに関係なく食ってくる。
ハリス長は3~4.5mとし、ヒラマサバリの15~16号を掛けバリ&先バリの2段で結ぶ。
さらに中通しナツメオモリ5号前後をハリスに通し、掛けバリのチモト近くに固定するのも特徴。
ナツメオモリはイカエサを狙ったタナにしっかり沈め、エサの姿勢を安定させる役割を持つようだ。
2段バリの結び方は、ヒラメ仕掛けのように2本ともハリスに直結する方法のほか、掛けバリのフトコロに先バリのハリスを結ぶ方法があり、いずれも購入したヤリイカのサイズに合わせてハリ間を決める。
なお、エサの大きさに合わせて掛けバリが移動できる遊動式バリは「オマツリして道糸に絡みつくと厄介でほどきにくい」とのことで、使用禁止を唱う船宿もあるから注意してほしい。

(左上)グラス素材のワンピースロッドと、PE6~8号を巻いた中型電動リール。PE5号以下はオマツリ時に高切れしやすいので、巻き直したほうがいい。

景山 下オモリ (カン付) 150号 3本入り
もう一つ、今回の取材で興味深かったのは秀正丸オリジナルの1本バリ仕掛け。
ハリスは22号3m、ハリはアジバリ15号(ヒラマサ15号でもOK)、そのチモトに3号のナツメオモリを固定してある。
「とくに強制はしてませんが、エサが冷凍ヤリイカならそれで十分釣れます。エサ付けは胴の先端にチョン掛けするだけ。1本バリだからハリを外すときも安全だし、タモにも絡みにくいから手返しも早いですよ」
船長によると、冷凍・冷蔵のイカは動かないのでブリが丸飲みしやすく、1本バリでも問題なく掛かるようだ。
一方、生きたイカエサは泳いで逃げ回るので、2段バリにしてハリ掛かり率をアップさせるのだという。
それにしても、まるでキハダ仕掛けのような極太ハリスを使うのはなぜか?
理由はイカブリで狙うブリ&ワラサの群れの習性にある。
「腹をさばいてみてもオキアミなどは一切入っていないから、コマセで釣れる日中のワラサなんかとは別のグループ」と船長は言い、どうやら初島周りに集まるヤリイカや小魚などを捕食するために集まってくる群れらしい。
ベイトを追う群れはバタバタと釣れてあっという間に去ってしまうことも多く、通過するまでの短時間が勝負。
そのチャンスを逃さないため太ハリスにものをいわせてガンガン巻き上げ、手早く再投入して数をのばすスタイルが定着したようだ。
ドラグを締め、ロッドをひん曲げて豪快に巻き上げるその姿は、ブリと釣り人のパワー・ファイト。
それがまたイカブリというご当地釣法の大きな魅力になっている。
そのファイトを制し、イカエサの食い込みもよいロッドは素材がグラス系のワンピースタイプ。
ワラサ・ブリ・ヒラマサ対応の青物用や、遠征五目用などがおすすめだ。
リールはPE6~8号が200~300m巻ける中型電動が主流で、シマノ3000番、ダイワ500番あたりが目安。
また、予想以上にオマツリによる高切れが起きやすい釣りだから5号以下の道糸は避けること。
理想は8号、最低でも6号をリールに巻いて出かけてほしい。
2段バリのエサの付け方は、先バリを胴の裾からロウトに刺し抜き、掛けバリを胴の先端部に刺す。
なお、下の図で「掛けバリは軟甲をかわして刺す」と解説したのは生きたイカエサの場合。
背骨に相当する軟甲を傷めると弱りやすいといわれているからだ。
冷凍エサであればそこまで気を遣う必要はないものの、今後ヤリイカが釣れだしたときに備えて覚えておこう。


シマノ(SHIMANO) スピニングリール 16 ナスキー C3000 シーバス

(左)仕掛けのパーツ一式。左上からヒラマサ15号、中通しナツメオモリ(号数は船宿に確認)、爪楊枝、夜光パイプ、ハリス24号。(右上)掛けバリ&先バリを結んだ、スタンダードなイカブリ仕掛け。(右下)ナツメオモリ3号をセットした秀正丸の1本バリ仕掛け。冷凍・冷蔵のイカエサ専用。

金龍 Hライン ヒラマサ金 15号

ナツメオモリ(全国ナツメ) 5号(約18g)20個入

VARIVAS(バリバス) ハリス 大物ハリス ナイロン 50m 24号 90lb ミストグレー


(左)先バリは胴のすそからロウトに向かって、すくい上げるようにハリ先を抜く。(右)掛けバリは胴の先端に刺す。生きたイカを使うときは軟甲(硬い背筋)をかわして付ける。
病みつきになるパワーバトルで船中100本超えのスタート!
東伊豆のイカブリは秀正丸がある宇佐美港をはじめ、網代港や伊東港の乗合船や仕立船で楽しむことができ、おおむね出船16時、沖揚がり22時というタイムスケジュール。
良日に遭遇すると「釣れ過ぎて早揚がり」というケースがあるのもイカブリの特長で、開幕日となった12月1日はまさにそんな夜だった。
釣り場は海岸から7km沖に浮かぶ初島周り。
初日ということで1時間ほどブリ反応を探索すると、初島の北東、水深80m付近で真っ赤な魚群反応を発見。
すぐ近くで開始していた網代港のつちそう丸では、すでに釣り人たちの竿が引き絞られている。
タナは左ページの図のように底から取ることが多く「底から仕掛け分プラス3mだよ」などと指示される。
仕掛けの全長が3mであれば、オモリが着底したら糸フケを取って6m巻き上げればいい。
タナ取り後はこれといった誘いも不要で、アタリがくるのをジッと待つのみ。
ただし海底は起伏もあるので、定期的に底ダチを取り直すところが当日は「上から70m」という海面からの指示ダナでスタート。
魚探を覗くと底付近から10m上までビッシリと反応で埋め尽くされていて、底まで仕掛けを落とす必要はないようだ。
どんな魚でも底ベッタリの反応より、高さのある立ち上がる反応のほうが食いがいいはず・・・と期待してカメラを構えていると「きたよ!」「こっちも!」「よっし!」と数名のロッドが引き込まれ、怒とうの入れ食いが始まった。
最初にくるアタリはカタカタッと竿先が揺さぶられる程度で、ここで合わせるとスッポ抜けてしまう。
ヤリイカエサをしっかり飲み込むまで慌てず焦らず待ち、竿が大きく引き込まれたところで竿を立てるように合わせてやればガッチリとハリ掛かりする。
ドラグは最初から締め込んでおき、あとはフルスピードで巻き上げ開始。
ハリスは太いので、結びさえしっかりしていれば切れる心配はない。
魚をねじ伏せるようなこのパワーバトルがイカブリの真骨頂、鳥肌が立つ興奮を味わえる。
頭を上へ向かせて豪快かつスピーディーに巻き上げることで隣人とのオマツリも減り、船中一丸となって数をのばしていけるのだ。
サイズは4~5kgが多いものの、開始1時間で3名が10本に到達。
辛抱たまらず私も竿を出し、気になっていた秀正丸オリジナルの1本バリ仕掛けを試してみると2本のワラサをあっさりゲット。
そのうち1本は喉奥にハリが掛かっていたからまさに丸飲み、2段バリと遜色ない釣れ方に目を丸くした。
自作するのも簡単だから真似してみる価値ありだ。
「はい、皆さん十分釣れたようですから、そろそろ揚がりましょう」
船長から早揚がりのアナウンスがあったのは19時30分。
私を除く7名の釣果は10~19本、実釣2時間で総数101本という華々しい幕開けだった。
サイズは4~5.5kgにとどまったものの「模様もいいから、もっと寒くなれば7~10kg級の群れも回ってくるでしょう」とは船長の読み。
10億円の年末ジャンボは無理としても、10kgのブリならアタるかもしれない。

(左)ゆったりとした大型船で16時ごろ出船。(右)タモ取りは互いに協力。チームワークも大事な釣りだ。

日没直後から次つぎに竿先が突っ込み、激熱バトルがスタート!

船橋から来た久保さんも「年末に欠かせないブリ祭りです!」とニッコリ。
タナ取り

アタリから巻き上げ


トップ19本。バラした数も含めると30発はアタリがあった。
生きエサ用のヤリイカ釣りについて
出船後2時間くらいをヤリイカ釣りにあて、生きエサとして確保する。
それがイカブリ乗合の本来の姿なのだが、初島周りは不漁が続き、今のところは大半の船宿がイカ釣りをパスして冷凍・冷蔵のイカエサでブリを釣っている。
しかし釣況が好転すれば「ヤリイカ用のプラヅノ仕掛けも持参」となるので事前確認をお忘れなく。
夜釣りなので釣り場は水深70~90mと浅く、オモリも80号でOK。
ゲームロッドなどの小型電動タックルで対応できる。

プラヅノ11cmのヤリイカ用ブランコ仕掛けと、オモリ80号を用意。
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