四季を通して様々な顔を見せるのが、へらぶな釣り。
管理池のへらぶな釣りは、あらゆる釣りの中でも、手軽な反面、いろいろな釣りを経験した人でもハマってしまう奥の深さがある。
数多くのへらぶな釣り競技会を制し、今やへらぶな界のトップアングラーとして注目を集める杉本智也さんが、久しぶりに関西圏の管理釣り場へ降臨。
兵庫県猪名川町の天神釣り池で、厳寒期の定番釣法である「段差の床釣り」を徹底解説。
杉本流のへらぶな釣りの一面を披露した。
その中で、杉本さんが最もこだわる部分として「釣果の6~7割を決定するのは、釣りを始めるまでの準備段階にある」と挙げてくれた。
特に微細なアタリをしっかりとウキに表現させて掛けていく必要がある低水温期の釣りでは、ウキやタナの微妙なセッティングが重要なファクターとなる。
今回は、そんな杉本流のセッティングの肝を中心に紹介していきたい。
天神釣り池での1尾目は大型へら
冬の定番・段差の底釣り! 杉本流タックル&ダンゴのセッティング
「へらぶなの釣り方は、本当に多いですね。チョーチンや浅ダナ・メーターの釣り、段差の底釣り…それにグルテンやうどんといったエサの違いも合わせると数多い。ただ、それぞれに最適なシーズンがあって、冬場の定番といえば段差の底釣りですね」と杉本さんは話す。
杉本さん自身、秋に行われたG杯へらぶな全国大会を制したのがチョーチン釣りであったため、「杉本智也=チョーチン釣り」というイメージを持っている人も多いはず。
ただ、本人曰く「チョーチンも確かに得意の釣りですが、冬の定番である段差の底釣りも得意釣法の1つです」とも。
「この釣りは厳寒期の定番ですが、冬場の寒い中でもこの釣りをしたくて釣り場へ向かってしまうので、私自身もかなり好きなんでしょうね(笑)」と話す。

寒い時期でもやめられない楽しさと魅力がある
そんな杉本さんが今回訪れたのは、兵庫・猪名川町の閑静な住宅街にたたずむ天神釣り池。
杉本さん自身、初めての釣り場であるという。
そのため、事前にオーナーさんと話をすると、池の奥のほう、水深5m前後の場所で喰いがよいとの情報が得られた。
そこで、竿を「がまへら 幻将天」の18尺と決定。
段差の底釣りでは、基本的に入る釣り場の水深に合わせて竿の長さを選ぶ。
竿が長すぎると、ウキから穂先までの道糸が長すぎて操作がしづらい。
逆の場合は底まで仕掛けが届かない…ということになる。
ちなみに幻将天シリーズは、16~23尺のいわゆる長尺タイプのシリーズで、軽量化を図りながら大べらと対峙できるパワーも兼ね備えたへらぶな竿だ。

当日使用した「がまへら 幻将天」18尺
この日の基本的なタックルセッティングとしては、道糸0.8号、上鈎にギガリフト9号(ハリス0.4号で12㎝)、下鈎に角マルチ4号(ハリス0.3号55㎝)、ウキはPCトップでボディー13㎝を使用した。
さて、杉本さんが初めての天神釣り池で用意したバラケエサは、粒戦(100cc)、とろスイミー(50cc)、SET・GUN(100cc)、やぐら(150cc)、セット専用バラケ(150cc)に水200cc。
これをすべて一緒に混ぜ込む。
くわせエサは力玉ハードで、さなぎ粉をまぶしたものと、そのままを使い分ける。

バラケエサを作る杉本さん

がまかつ ギガリフト 白 68720 9号

がまかつ(Gamakatsu) シングルフック A1 角 マルチ 4号 27本 白 67834
釣果の6割が決まる! ウキの浮力&底取りセッティングの順番とは
実際、杉本さんの緻密なウキの浮力、ウキ下のセッティングの順番は以下の通り。
1.上鈎(ギガリフト9号)のみを付けて、ウキの浮力を調整する
2.上鈎にバラケエサを付けて、エサ落ち目盛りの調整
3.上鈎に小さなオモリを付けて、水深を測る
4.下鈎を接続して釣り開始
という感じ。
それぞれに細かな調整をするのだが、もっともNGなのが「まあ、これくらいでいいか…という考え方です」と杉本さん。
ここで妥協なくしっかりと調整しておくことで、厳寒期のアタリの小さいへらぶなに対応させる。
順に紹介していこう。
まずはウキの浮力調整から。
段差の底釣りの場合、下鈎はボトムに着いている状態なので、調整時には必要がない。
浮力調整の決め手となるのは、オモリと上鈎の負荷だ。
そこで、上鈎を付けたまま、使用する板オモリをカットしながらウキの浮力を調整していく。
この時に重要なのは、板オモリをカットしすぎず、ほんの少し(約1mm幅以下)カットしながらウキの浮力を調整していく。
杉本さんは基本的にトップの下から3節目が水面にくるように調整する。
これがエサ落ち目盛り(エサが落ちた時のウキの位置)となる。

ここがエサ落ち目盛り…と杉本さん
これができたら、下鈎を取り付けて、下鈎にゴムオモリを付けて、底とんとんの状態でタナを測る。
この時も急速に沈むほどの大きなオモリを付けず、ゆっくりと仕掛けがなじむ程度の小さなオモリで、ダンゴが沈んでいくかのような、なじませ方で底を測る。
理由としては、重いゴムオモリだと、泥底の場合や池の底や落ち葉などが堆積している際に埋まってしまい、正確なタナ取りができなくなるためだ。
この時、狙う投入点だけではなく、周囲にも仕掛けを入れてみて、ボトムの変化を見ておくと、かけ上がりなのかフラットなのか…といった情報を得ることができる。
底が取れれば、次はハワセ幅の調整。
「私の場合、スタート時に7cmのハワセ幅を基本としています」と杉本さん。
調整の方法としては、底とんとんの状態でウキ止めの上に付けたゴム管を利用する。
道糸に付けたゴム管をエサ落ち目盛りの位置に合わせて、そこから約7cmずり上げて、その位置をウキのトップの節位置で確認する。
その状態で水深を確認してOKなら、道糸のウキ止めの位置までウキをずり上げれば、7㎝のハワセができあがる。

見えにくいが、トップの付け根に目印のゴムが付いている
この作業をしっかりと丁寧に行うことで、浮力やタナの調整ができ、小さなアタリを反映できるようになる。
状況に合わせた調整の方法と基本的な釣り方
この釣りでの理想的な展開としては、仕掛けを投入した後、ウキがなじんだ状態で落ち着き、徐々にバラケが落ちていく途中で、小さな反応(触り)が出て、さらにエサ落ち目盛りまでウキが浮き上がる手前で、チクッとした小さなアタリでアワせていく。
この小さくも明確なチクッとした反応で、ばっちりアワせて掛けることができた時の爽快感は、何ものにも代えられない…という。

アワセがドンピシャ合った時の爽快感はすごいぞ
その理想的な展開へ持って行くために、まずは手返しをよくして魚を集め、バラケで寄せてくわせエサを食わせるように持っていく。
基本ラインから状況に合わせて少しずつ変更、調整を加えていくことも、へらぶな釣りでは重要な作業だ。
もちろん、ここでもきちんとした調整をやっているからこその調整となるのだが…。
まず、7cmのハワセ幅を取っている時に、カラツンやスレが多発する際には、ハワセ幅を疑う。
ハワセ幅が短く、へらぶなの動きによって起こる水流でくわせエサが舞い上がっていることが考えられる。
そんな際にはハワセ幅をもう少し長く取ることで、くわせエサを安定させる。

ウキ下の微妙な調整も最初のセッティングがあればこそ
また、くわせエサを安定させる意味では、当日のように角マルチ3号から、ワンランク大きい4号へと変更する。
たかが「鈎の1号数」だが、それだけでも食いが大きく変わってくることもお忘れなく。
へらぶなが寄ってきて反応が出始めれば、きちんと口に掛かっているか、カラツンやスレ掛かりなどのズレがないか…で判断しつつ、ハワセ幅を変えたり、鈎を変更するなどの対処を試してみる。
「基本は思いついたらやってみる…ですよ(笑)」と話す。

綺麗な弧を描く「がまへら 幻将天」
杉本さんの実践している組み立ては一例に過ぎず、自分の基本を作りそこからの組み立てをしていくのもへらぶな釣りの楽しみ方だ。
ただ、その際も妥協はせずに、徹底的に正確な作業を心掛けたい。
ちなみに、うどんエサでは、そのままの状態とさなぎ粉をまぶしたものでも、集魚とは違う部分で違う点が出てくる。
「さなぎ粉をまぶすとくわせエサから水分が抜けて凝縮するんです。そこで、しっかりと沈めるならさなぎ粉をまぶしたもの、自然な沈下を演出するならそのままのうどんを使うなど、動きも変わってくるので利用してみるとよいでしょうね」と杉本さん。

力玉ハードそのまま(右)とさなぎ粉をまぶしたもの
●交通:阪神高速池田線の木部第二出口で降り、国道173号を北上。多田桜木1丁目信号を左折し、多田橋を渡ってすぐを右折。西多田信号を左折して、その先の西多田2丁目信号を右折して道なりに進み、清和台西1丁目に入ると天神釣り池の案内板がある。
●問い合わせ:天神釣り池(TEL:072・799・5449)
(文・写真/松村計吾)
「段底&浅ダナで攻略 早春のへらぶなを釣る」
※当日の様子は、YouTubeフィッシングDAYS「段底&浅ダナで攻略 早春のへらぶなを釣る」https://youtu.be/JPnPxv1d-ks で視聴できる。