レビュー

年功序列・終身雇用制度のもとで働き、家のローンを払いながら満員電車に揺られて出勤する――日本の働き方の特徴を聞かれれば、このように答える人が多いのではないだろうか。ここで想定されているのは「大企業で働く正社員」だ。

実はこのタイプの人は、全体の3割に満たないという。
一方、「欧米の働き方」というと、どのようなイメージを持つだろうか。成果主義、定時退社、長い休暇――実はこういったイメージも、欧米社会の中のある一定の層にしか当てはまらないそうだ。
本書では、他国との比較を交えながら、「日本」という国に積み重ねられてきた雇用慣行を明らかにし、そこから規定される教育、社会保障、政治、ライフスタイルといった「暗黙のルール」を解明する。そして、日本という国の実態と、それがどのように生まれたのかを、歴史や統計から紐解いていく。
「働き方改革」が叫ばれるようになって久しいが、こうした改革が成功しない理由も、本書で明らかにされる。
さらに日本において女性の社会進出が大きく遅れている理由も、「日本型雇用」の歴史のなかにあるという。本書を読めば、日本社会が抱える問題とその背景が見えてくるだろう。
「社会のしくみ」は長い時間をかけ、人々の合意を得て積み重ねられてきた。それは「慣習」となって、気づけば体中にからまる蔦のように、知らず知らずのうちに私たちの生き方やアイデンティティをも規定している。世界を相手に働くなら、まずは自分のことを知らねばなるまい。グローバルに働くビジネスパーソンには必ず読んでもらいたい一冊だ。

本書の要点

・日本社会の生き方は、大企業の正社員とその家族が所属する「大企業型」と、地元で農業や自営業などを営む「地元型」に分けられる。最近はそのどちらにも属さない「残余型」が増えている。
・日本の社会保障は「企業」か「地域」のどちらかに足場があることを前提につくられている。
・日本は労働運動の中で、職員の特権だった年功制と長期雇用を現場労働者にまで拡大し、社員全員に昇進の道を開いた。その代わりに他企業との断絶や経営者の裁量による異動を受け入れた。



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