レビュー

いまMMT(Modern Money Theory、現代貨幣理論)が注目を集めている。MMTは基本的に「自国通貨を発行できる政府は、財政赤字や債務比率を気にすることなく、躊躇なく財政出動するべきだ」という考えに立脚しており、異端の経済学として扱われている。

本書を一読すれば、すぐにその「異端」の考え方に驚かされるはずだ。「人々が貨幣を需要する理由は租税にある」という考え方からして、主流派経済学になじみのある人にとっては、にわかに受け入れがたいかもしれない。
しかし巨額の金融緩和やマイナス金利といったマクロ的な金融政策が、効果を上げているとは言いがたいのも確かだ。また家計と同様、政府に健全財政を強いる緊縮財政は、世界中にポピュリズムを広げる危うさをはらんでいるようにも感じる。世界は新しい経済学をベースとした、従来とは異なる経済政策を求めているのではないか。日本でもMMTを経済政策に掲げる政党が現れている。MMTは間違いなく今後の経済政策の在り方に一石を投じることになるだろう。
本書はMMTの基本的な考え方を、第一人者であるL・ランダム・レイ教授がわかりやすく解説したものだ。MMTを理解することで、経済そのものへの見方が変わるかもしれない。本書にはそれだけの破壊力がある。

本書の要点

・人びとが貨幣に価値を見出したのは、それで税金が払えるからだ。物々交換に代わる交換手段として用いられ始めたわけではない。


・自国通貨を発行できる政府の場合、キーボードを叩くだけで支出が可能だ。財源という意味での租税収入は実のところ必要ないし、それで支払い不能になることもない。
・政府が課税する理由として、まず貨幣に対する需要の創造がある。また租税によって公共目的の達成を促したり、「悪行」に制限をかけたりすることもできる。
・MMTが目指すのは、過度なインフレを引き起こすことなく、完全雇用を実現することだ。



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