レビュー
ミルトン・フリードマンといえば、「小さな政府のもと、自由経済市場で有効な金融政策が行われることで経済が向上する」ことを信条として、研究に留まらず政策提言まで行なった経済学者である。日本ではそれほど知られていないが、「負の所得税」や「教育バウチャー」といった概念を提案したのは彼であるし、「名目GDP」や「ヘリコプター・マネー」、「ナロウ・バンキング」など最近注目を集めているアイデアも、フリードマンに由来する。
戦後から晩年にかけて、フリードマンはしばしば日本経済を研究対象として分析や提言を行なってきたが、それらが顧みられることはほとんどなかった。そのなかには、現在から振り返ってみれば大きな有用性があったと思われるものも少なくない。にもかかわらず、フリードマンは冷血なマネタリストとして過小評価されているきらいがある。
本書はこうした考察を踏まえ、日本ではあまり高い評価を受けていないフリードマンの功績を正しく再評価しようとする意欲作だ。イデオロギーではなく実証的な研究により、経済学に多大なる貢献をしたフリードマン。彼の理論について理解を深めることは、日本の経済についての理解を深めるうえでも大きな助けとなるだろう。
本書の要点
・20世紀の経済学の発展に大きく貢献した人物でありながら、フリードマンは日本だと過小評価されている。彼の思想を正しく再評価することが必要だ。
・フリードマンは経済的自由と政治的自由に相関関係を見出し、旧共産諸国の民主化に大きな影響を与えた。
・戦後の経済危機の多くは、貨幣の重要さを無視し、金融政策を十分に行わなかったために起きたものが多い。フリードマンの金融政策に関する提案を聞き入れていれば、そうした事態を回避できたかもしれない。
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