レビュー
働き盛りの多くのビジネスパーソンにとって、社長はあまり身近な存在ではないだろう。会社のトップに立ち、桁違いの報酬額を手にする社長。
著者は、伊藤忠商事の社長として莫大な不良資産を一括処理し、同時に過去最大の投資を進めた経験をもつ人物だ。著者が下したこの「攻めと守り」を同時に行うような決断は、当時は内外から激しく批判されたという。それでも、どちらもやりきった著者の判断は、結果的に会社を守り、存続させることにつながった。
人から信頼を勝ち取り、部下を育て、会社を守り、新しいプロジェクトを成功させてきた。そんな著者が自分の社長時代の働きざまを「社長とは何か」という視点から振り返る。他の人が切り込みにくいところにも目を背けない。そして、一般社員の感覚を忘れないようにと、通勤時には満員電車を使う。このように、会社と社員に責任を持つ覚悟を持ち続けた著者の仕事観、リーダー論が、本書に凝縮されている。
社長の働きざまについて知ることは、ビジネスパーソンにとって自分の仕事が何につながっているのかを理解することでもある。そのリーダー論は、部・課長はもちろんチームを率いる人にとって参考になる視点が満載だ。
本書の要点
・経営において重要なのは「攻め」と「守り」のタイミングだ。社長は「どこを攻めるかを決めてから守る」ようにし、絶対的な確信を持ってプロジェクトを完遂させることが必要となる。
・社長はすべての人材が力を発揮できるよう、社員に深い理解を示さなければならないが、ときには、会社のために冷酷な判断をすべきときもある。
・社長は、会社の経営を一時的に任されているにすぎない。社長の重要な仕事の1つは、後継者を見つけることである。そして「自分が未熟者である」と感じている人間を後継者に選ぶとよい。
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