レビュー

「IT業界のサグラダファミリア」……そう揶揄されていた、みずほフィナンシャルグループ(以下、FG)のプロジェクト。銀行業務に直結する勘定系システムの全面再構築は、みずほFGにとって19年にも及んだ悲願だった。

本書は、ビッグプロジェクトが完了した現在から過去へ遡る形式を採りながら、銀行の上層部から現場メンバー、ITベンダーまで幅広い関係者への取材をもとに、巨大プロジェクトの全貌に迫っている。
第1部では新システムMINORIの全貌、みずほFGの新しいデジタル経営戦略を紹介。第2部では2011年に起きた大規模システム障害について、経営陣と情報システム部門が重ねた30の不手際とその原因に迫る。続く第3部ではさらに時計の針を戻し、2002年の1回目の大規模システム障害を振り返る。そうして、なぜこんなにも長期、巨額のプロジェクトになったのかが明らかになる。
最後のページを読んだ後に、ぜひ最初に戻ってきてほしい。巨大組織の「成長」ぶりをより感じることができるだろう。それは決して他人事ではない。システム開発プロジェクトに何度も失敗し、2度の大規模システム障害を引き起こしたみずほFGが、どのように社内を立て直して成功に至ることができたのか。そのエッセンスには、あらゆる企業、ビジネスパーソンにとっての学びがあるだろう。

本書の要点

・みずほFGは、2019年7月に世界最大級の勘定系システム構築を完了した。2度のシステム障害を乗り越えたみずほFGの悲願達成の瞬間でもあった。


・2度のシステム障害は、情報システム部門やシステム開発会社だけに落ち度があったわけではない。ITシステムを軽視して投資判断を先延ばしにした、経営トップのリーダーシップの欠如が根本原因である。
・みずほFGには、システム刷新プロジェクトを通して、多くのIT人材が育った。すでに本格化している金融業界のデジタル化において、みずほFGは主導権を握りうる立場にある。



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