工作機械大手の「オークマ」が強化する「Green-Smart Machine」とは、どんなマシーン?

工作機械大手のオークマ<6103>が「Green-Smart Machine」の拡販に力を入れている。

機械が自律的に高精度・高生産性と、脱炭素を両立する工作機械を「Green-Smart Machine」と位置付け、EV(電気自動車)や半導体製造装置、航空・宇宙、建機、農機、油圧機器などの生産向けに新機種を相次いで投入しているのだ。

並行して海外拠点の拡充や、サプライチェーン(製品の原材料の調達から販売までの流れ)の強化などを進めており、この目的を達成するためのM&Aにも前向きだ。

2025年3月期は4期ぶりの減収営業減益に陥る見込みだが、新機種の投入や海外拠点の強化などの取り組みで、2031年3月期に売上高3000億円(2024年3月期比31.5%増)を目指すという。

「Green-Smart Machine」やM&Aは業績にどのような効果をもたらすだろうか。

機械が自律的に稼働

近年、製造業では人手不足が深刻化し、省人化・自動化を追求したモノづくりへのニーズが高まっているほか、熟練技能者の引退や人材の流動化により、高いスキルや経験を持った人材の確保が難しい状況にある。

また、脱炭素の面から省エネに対するニーズも強まっており、オークマでは経験の浅い人でも長時間安定稼働が可能な性能が求められていると判断し、機械自らが高精度・高効率生産と、エネルギー消費量削減を自律的に両立し、脱炭素化に貢献する工作機械として「Green-Smart Machine」の開発を進めてきた。

現在、品ぞろえの強化に取り組んでおり、2024年9月にEVや半導体装置、航空・宇宙などの幅広いニーズに対応できる横形マシニングセンタ(切削や穴あけなど多種類の加工が可能な機械)を、同年10月にはEVやハイブリッド自動車などのニーズに対応できる小型の横形マシニングセンタを開発。

さらに2026年3月期の上期には、半導体製造装置の大物部品に対応できる大型精密マシニングセンタや、次世代の複合加工機などを投入する予定。

さらに航空機産業や自動車産業などの大物アルミニウム材料部品向けの門形マシニングセンタや、中小規模工場の自動化ニーズの開拓を目的にした次世代ロボットシステムや移動式の協働ロボットなどの拡販にも注力する。

海外拠点、サプライチェーンの強化にM&A

一方、海外拠点の整備については古くから取り組んでおり、1988年に欧州での販売強化のため、ドイツの現地法人2社を買収したのをはじめ、2002年にはオーストラリアでの販売・サービス拠点として、現地の代理店を買収。

さらに2019年にドイツで、翌2020年にはベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)で、2024年にはオーストリアで、同様に販売・サービス拠点として、現地販売代理店を買収した。

サプライチェーンの強化については、1999年に板金製造会社の株式を取得し、工作機械に使われる金属製のカバーやタンクなどを製造するオークマスチールテクノとして子会社化したあと、2023年にオークマスチールテクノが板金部品を製造する大川製作所を子会社化した事例がある。

海外拠点、サプライチェーンともに強化の方針を打ち出しており、今後も成長投資の一つとしてM&Aに踏み切る可能性は高い。

工作機械大手の「オークマ」が強化する「Green-Smart Machine」とは、どんなマシーン?
オークマの沿革と主なM&A

4期ぶりの減収営業減益に

オークマは1898年に名古屋市で大隈麺機商会を創業し、製麺機械の製造に乗り出したのが始まりで、1904年には工作機械の製造を開始した。

機械本体はもちろん、NC(数値制御)装置や、モーター、サーボドライブユニット(サーボモーターを駆動するために必要な部品をまとめた機器)、位置検出器などの工作機械に必要な制御部品をすべて自社開発しているのが強みで、これによって製品の高精度、高品質を実現している。

直近の売上高を見ると、マシニングセンタが全体の半分近くを占めており、複合加工機が30%ほど、NC旋盤(加工物を回転させ、固定した工具で切削する機械)が16%ほどの構成となっている。

2025年3月期は売上高2100億円(前年度比7.9%減)、営業利益175億円(同31.0%減)と大幅な減収営業減益を見込む。

工作機械の需要が大手企業向けは堅調なものの、中堅、中小企業で設備投資の様子見が続き、国内、海外ともに振るわないのに加え、部材コストなども高止まりしているのが要因で、減収営業減益は2021年3月期以来4期ぶりとなる。

「Green-Smart Machine」の品ぞろえの拡充や、M&Aによる海外拠点、サプライチェーンの強化などの対策が、業績回復に果たす役割は小さくはなさそうだ。

工作機械大手の「オークマ」が強化する「Green-Smart Machine」とは、どんなマシーン?
オークマの業績推移
2025/3は予想、2026/3、2031/3は計画

文:M&A Online記者 松本亮一

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