レビュー

世の中には数多くの学問分野があるが、最もつかみどころがなく得体のしれない学問は、ひょっとすると経済学ではないだろうか。普段の生活に直結しているため、身近な学問だとも言えるが、理解しようとすると途端に牙をむく。

「とても簡単なことを、わざわざ難しく言い換えているのではないか?」と勘繰りたくなることもある。経済学の本の前書きには、「簡単」「やさしい」などという言葉が並んでいるものだが、それでもなお難しいのが実態である。
だが本書は、難解な経済学を「要するにこういうことだ」と見事にまとめ、その本質を論述することに成功している。いままで経済学をいまいち理解できなかった方は、文字通り目から鱗が落ちるはずだ。また、経済学を学んだことがあるという方でも、本書を読めば「なぜインフレやデフレが起こるのか」「ビットコインとは本質的にどういうものか」といった身の回りの経済現象について、自然と腹落ちできるようになるだろう。
さらに本書の試みは、それだけにとどまらない。きわめて野心的なことに、これからの経済学が歩むべき道筋をも提示している。自分の将来に漠然と不安を覚えている人は多いし、経済的に満たされていても幸せを感じられない人は少なくない。だが本書によると、じつはそれも資本主義と無関係ではないのだという。
資本主義に対する理解を深めるとともに、その将来に警鐘を鳴らす名著だ。ぜひ何度も読み返してみてほしい。資本主義とはそもそもどういった性質を持つものなのか(そしてなぜ他のシステムよりも「強い」のか)、本書から学べることは多い。

本書の要点

・資本主義は、成長し続けなければシステムを維持することができない。それは金利が存在するからである。
・経済が縮小均衡すると、「神の手」で回復させることは難しい。このためケインズは「公共投資により、政府が適切に介入する必要がある」と主張した。
・いまの資本主義は量的な拡大よりも、質的な「縮退」で富を絞り出すようになっている。縮退が起きると、一部の巨大企業に富が集中してしまう。



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