レビュー
イノベーション理論の基礎を作ったと目されている、シュンペーターという人物をご存知だろうか。彼の著作である『経済発展の理論』の初版は1912年に刊行され、それまでの経済理論を「静学」とみなして、新しく「動学」の理論を打ち立てようとした野心作である。
100年のときを経て、ここで描かれている社会情勢に現代との開きが出ていることは否定できない。しかしながら、経済活動が均衡を保つことを前提としていた経済理論が中心だった1910年代に、「発展」の経済学を打ち立てようとし、イノベーションを起こす役割を担う人として、資本家ではなく「企業者」を前面に押し出した論を展開したことには、今なお新しさが感じられる。
本要約では、シュンペーターの理論の中でも大きな役割を持つイノベーション、「新結合」について書かれた第2章と、第2版以降では削除された第7章を中心に「企業者」とは何かについて紹介する。シュンペーターの理論に初めて触れる方でも、彼の理論の中核を感じていただけると幸いである。
本書の要点
・これまでの経済理論は、消費と生産の関係性が一定の循環経済を前提としていたが、それは現実にはそぐわない。「新結合」によって変化する動態的な経済こそが資本主義の本質だ。
・イノベーションとも言い換えられる「新結合」を「企業者」が実践することによって経済はその内側から、非連続的に変化していく。
・その新奇さから、新しい考えは大衆から敬遠され、自然に普及することはない。最初は「精力的」な行動を行う指導者が変化を強制することが必要となる。
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