レビュー
日本のエンタメ業界の現状と生存戦略について書かれた本書は、意外にも占星術の話題から始まる。占星術の領域では2020年12月、200年に一度の節目を迎え、金銭・物質・権威が重視される「土の時代」から知性・コミュニケーション・個人が重視される「風の時代」になったのだという。
エンタメ界にも200年に一度の変化が起きている――著者はそう主張する。良質なコンテンツをつくるのは、もはやテレビ局やゲーム会社だけの仕事ではない。いまや個人もコンテンツを供給する側になり、米国や中国など、巨大資本を持つ国の参入も著しい。著者によると、そんな変化の渦中にある日本のエンタメ業界が目指すべき終着点は「推しエコノミー」だ。
『鬼滅の刃』のテレビアニメが、全国21チャンネルで同時配信されるだけでなく、配信サイトでも公開されたのはなぜか。『半沢直樹』の続編において、ツイッターで毎回「祭り」が起きていた理由とは。「萌え」はなぜ「推し」に変わったのか――本書では、こうしたトピックの分析を通して、日本のエンタメ業界の生存戦略を考えていく。
コンテンツ供給側に立っているビジネスパーソンにとっては、時代性や世界情勢、国内企業の強みが明らかになる、お得な一冊である。『鬼滅の刃』や『半沢直樹』といった身近な話題が多く、またマーケティングなどに生きる示唆も多いため、業界に身を置いていない方も興味深く読めるだろう。コンテンツを愛するすべての方に一読をおすすめしたい。
本書の要点
・テレビドラマ『半沢直樹』の続編は、多くの回でツイート数が20万回を超えた。日曜日の夜にこの番組をネタに「祭り」を楽しむことが認知され、習慣化したのだ。
・2005年以降、ユーザーは「萌え」のように対象に対して内的な感情を抱くことではなく、「推し」、つまりキャラやタレントに何かを与える活動を重視するようになった。
・コロナ禍を経て、東京都心の一等地を押さえるようなマーケティングは時代遅れになった。人が集まる場所はデジタルにシフトし、ネット上に「仮想一等地」が生まれている。
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