レビュー
わたしたちは資本主義社会を生きている。新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済は大幅な景気減退を余儀なくされ、資本主義の限界が声高に叫ばれるなかであっても、経済のことはどこか「他人事」のような気がしてはいないだろうか。
著者はギリシャで財務大臣を務めた人物であるが、「経済学の解説書とは正反対の経済の本」にしたいという意図通り、とっつきづらい専門用語や経済理論は一切出てこない。むしろ農耕のはじまりから仮想通貨の誕生にいたるまで、人類の歴史のダイジェスト版を見ているようで、経済の本を読んでいることなど忘れて夢中でページをめくってしまう。本書を読めば、経済のことは経済学者にしか語れないなどとは思わなくなるだろう。
格差はどこから生まれたのか。なぜおカネと政治は切り離せないのか。何が経済を動かし、経済を停滞させるものは何なのか。この世界で、結局、われわれはどうすればいいのか。読み終えれば、こんな話題も経済学で語れるのかという驚きとともに、経済について自分なりの考えを口にできるようになることだろう。
本書の要点
・経済の基本要素である「余剰」は農耕から生まれた。余剰は人類を大きく変える数々の制度を生み出している。
・かつて家庭内経済を営んでいた人類は、ここ数百年で「経験価値」ではなく「交換価値」ですべてが判断される市場社会へ移行した。
・市場社会において借金は経済の原動力となる必要不可欠なものだが、利益と富を生み出す一方、金融危機と破綻をも招く。
・市場社会の力関係ではより多くの富を持つ者に軍配が上がる。それならばひとり1票の投票権を持つ民主主義のほうがまだましだ。通貨とテクノロジー、さらには地球の管理も民主化すべきである。
フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に2,100タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。