レビュー
「イノベーション」という言葉はビジネスのさまざまな場面で耳にすることだろう。企業の経営方針でふれられ、さらなる成長の起爆剤としての期待がこめられていることも多い。
このイノベーションという言葉の生みの親こそ、本書の主役であるシュンペーターだ。彼はイノベーションの他にも「アントレプレナー」「創造的破壊」といったビジネスで重要な用語を生み出してきた。シュンペーターの理論は常に前を向き、停滞した現状を打破するような魅力を持つ。だからこそ、経済の停滞した現代において注目を浴びているのだろう。
著者の名和高司氏はシュンペーターの主著三冊をもとに、その理論の本質と魅力を語りつくす。第1部では、シュンペーターの生涯を振り返り、彼の思想の神髄に迫る。第2部では、シュンペーターの思想のコアとなる「イノベーション」を掘り下げていく。要約では「新結合」「アントレプレナー」「銀行家」というキーワードをピックアップした。そして第3部では、黄昏に向かう資本主義とその後の社会について、シュンペーターの考えを明らかにしていく。
本書を読めば、シュンペーターの人物像、イノベーションの本質、そして資本主義の行く末について、大局的に学べるうえに、関連知識とのつながりも見えてくる。まさに「新結合」の源泉に満ちた一冊といってもいい。未来を拓くためのヒントをつかんでいただきたい。
本書の要点
・シュンペーターの理論は、かつてケインズ経済学の影に隠れてしまっていた。だが、停滞した経済を破壊していく力を想起させる彼の思想を、いまこそ見直すべきである。
・イノベーションのカギは「新結合」だ。内発的な営みによって行動し続けるアントレプレナーと、彼らの信頼を保証する銀行家が重要なキーパーソンとなる。
・シュンペーターは、資本主義は必然的に社会主義へと移行すると考えた。そして、これまでの資本主義でもなく社会主義でもない「新たな社会主義」を提唱した。
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