レビュー
我々は「賢い」だろうか。急にこう言われると、謙虚なあなたは「そうではない」と言うかもしれない。
今目の前に健康食品のCMが流れているとする。次から次へと網膜になだれ込んでくる情報に、あなたは心のどこかで「この商品いいかも」と思うかもしれない。そんな時、人は画面の隅に記載された「十分な食事管理と運動を行った上での結果です」という注意書きに気付かないだろう。
情報番組が紹介する健康食品の効能に感動する人は、その情報のエビデンスに気を配れないかもしれないし、特効があればとっくに医薬品として開発されているという事実を忘れているかもしれない。我々の判断には常に誤りやバイアスが入り込む余地がある。
本書は行動経済学の入門書だ。人間はミスをするとの前提に立ち、どうすれば人は適切な選択をできるのか、心理学の見地を交えて提案してくれる。そうしたよりよい選択へのちょっとした働きかけが「ナッジ」だ。
2008年刊行の初版を、パンデミックで一変した世界のありようを踏まえて大幅に改訂した行動経済学の入門書にして「完全版」だ。著者のノーベル経済学賞受賞の事実が示す通り、ナッジは世界的に評価されている。
我々がよりよく生きるには、どう「ナッジ」すればいいのか。その説明が、豊富な研究結果とユーモアたっぷりの文章で綴られている。紹介されているコンセプトやアプローチは、「民間部門(企業部門)にそのまま応用できる」といった強気な言いぶりも、決して読者を裏切らないだろう。
本書の要点
・ナッジは、強制や禁止をせずに本人の「よりよい選択」を後押しする。「ナッジする人」とは「他人に注意喚起をしたり、控えめに警告したりする人」だ。
・人の脳は極めて優れているが、完全ではなく多くのエラーを起こす。問題はエラーを起こす人ではなく、複雑すぎる世界にある。そのため、よりよい選択のための「ナッジ」が必要だ。
・我々の判断はバイアスに満ち溢れている。「アンカリング」「代表性」「利用可能性」といったさまざまなバイアスが判断に介在している。
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